倍速視聴は記憶に残るのか? メリット・デメリットと学習への弊害まとめ

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昔から人々はより便利に、より短くできるように発展してきました。服を洗うための手段が手荒いから洗濯機に代わったように、温める手段が火種を燃やすことからガスの引火に代わったように。情報を得るためにかける時間を短くするため、人々は倍速視聴を思いつき実現しました

しかし倍速視聴は検証が不十分で、次世代に受け継がれるか分からない発展途上の分野です。

印象や記憶が倍速によって失われてしまうかもしれません

本記事では『倍速視聴は等速視聴と同じように記憶に残るのか』を主軸として、メリット・デメリットや弊害を再確認していきます

  • 時間効率を考えた場合、学習教材であれば1.5倍速程度が望ましい
  • 2倍速以上で明らかに負荷がかかり、コンテンツの魅力も阻害し得る
  • ただし、等速が標準だからこその倍速機能であり、倍速に対応できるようナレーターへ促すのは間違っている
  • 1.5倍速以下によってコンテンツの魅力が下がるかは不明。認識面では有意差はないが、味わい方の違いという感情面にズレが生じていると推察

目次

倍速視聴についての概要

メディア側が倍速視聴を前提にコンテンツを作っていることはありません。

しかし、メディア・メーカー側は価値があると考えて、各メディアが倍速機能を備え付けているのも事実です。

特にニコニコ動画では1.5倍速以上をプレミアム会員の特典にしていました。

倍速視聴のメリット・デメリット

メリットはより短い時間でコンテンツを楽しめる点です。情報量が過剰になっている現代、トレンドについていくためには幅広く見て回らなければなりません。1時間の動画を40分(1.5倍速)で同じように理解できるならば、余った20分を他のコンテンツに充てられます

デメリットは脳へかかる負荷が大きい点です。速度を上げると1秒ごとに受け取る情報量が多くなります。他の作業や考察に負担をかけかねません。

未知の情報を得るときは、脳に留めるのに多くの時間が必要です。理解が追いつかず、印象を抱く合間もなくなって時間の浪費になる可能性があります

個人的な意見

先日下のような記事を投稿したように、筆者は倍速視聴に比較的肯定的です。朗読スピードが遅いと感じるならば、1.5倍速程度にまで速めても影響ないと考えています

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【0.5~3.5倍速】Audibleのおすすめ再生速度と拡張方法 Amazonが提供する朗読サービスAudibleでは、0.5~3.5倍速まで31段階もの調整ができるようになっています。 これはYoutubeやニコニコ動画(0.25~2.0倍速を0.25倍速単位)な...

一方で何度も見たいと思うコンテンツ、特にアニメ・ドラマと学習動画の倍速へは否定的です。

前者は等速を想定して背景描写を作り出しています。伏線の貼り方や情報提示のシーンにしても、細かくみれば分かるように調節されています。倍速視聴はコンテンツの細かな面白さを損ないかねません

後者は脳への負担の多さです。時代の変化によってオンライン授業、動画型のコンテンツが莫大になりました。しかし知らない情報を速く消化して、後々まで覚えてられるでしょうか。もし復習で何度も見返すのでなければ、肝心なところが抜けている可能性が高くなってしまいます

X(旧Twitter)のトレンド”倍速視聴”

2023/11/29、偶然”倍速視聴”がX(旧Twitter)のトレンドに上がりました。タイムラインによると『Audibleの朗読速度が安定せず、倍速視聴のことを考えていない』という意見が元になっているようです。

炎上騒動を取り扱ったニュース:オーディオブックの“倍速視聴”が話題 “等倍で聴く人いない”は本当か? 声優からは「衝撃」の声

不可解な非難から始まった議題なため、倍速視聴に否定的な意見に偏っていました。その中でもできる限り中立になるように、投稿を拾いあげていきます。

追記:Twitterを見たくない人向けに、次の項目へ跳べるリンクを貼っておきました。

(一部)肯定意見

否定意見

元々印象が薄れる点、脳効率が落ちる点から否定している意見が多いと思っていました。タイムラインの中には『倍速視聴する人とは一生分かり合えない』といった人格否定が流れています。匿名故の過激さに驚かされました。

その他

賛否両論の意見を確認している中で、特に作品による影響が大きいということを教えてくれるツイートを引用しています。

補足ですが、音ゲーの動画を2倍速以上で聞いてもドリル感覚が味わえます。

論文からみる倍速視聴

倍速視聴に効果があるのか、それとも悪影響を及ぼすのか。Google Scholarを通して、一般公開されている論文からいくつか抽出していきます。

長濱澄による変則再生の影響調査(博士論文)

先行研究では英語の口語で275文字(FOULKE 1968)、日本語の単音節では2倍(長渕 1973)を超えると理解度が低下することが示されていた。

2017の研究では、359モーラ(1分間に話す平仮名の数)で9分の映像コンテンツを用いた。都内私立大学生75名(平均年齢21.32, SD=1.95)を対象に事前テストを実施し、1倍速群、1.5倍速群、2倍速群に分けて視聴してもらった。等質性のある3グループで理解度テストの合計得点に有意差はみられなかった。一方で、2倍速群とその他では学習内容への主観が異なっており、有意に1倍速群、1.5倍速群が学習しやすかったと述べていた。最も分かりやすかった・集中できる速度については、1.5倍>1倍>2倍の順に解凍された。

結論として、1.5倍速の提示速度は肯定的に評価され、2倍速は否定的ながらも理解度への影響はみられなかった。2018では脳電位による裏付けが取られ、2倍速は注意配分量が大きくなり負荷がかかっている様子が確認された

高比良英朗による注視が与える影響(博士論文)

長濱ら(2018)の研究より2.0倍速まで理解度が下がらないと報告された。一方で、スポーツや映画などでは臨場感や見やすさを考慮する必要がある。高比良は視行動に違いがあるのではないかと仮説を立て、0.75~3.0倍速で実験を行った。

20代から60代まで24名を抽出し、眼球運動を観察した。水平方向の視点のばらつき(標準偏差σ)が再生速度によって減少する傾向が有意にみられた。目標を追う動きから、俯瞰的な動きに変化すると筆者は考察している。また、ラリーを追いがちテニスや動きの少ない自然の映像より、アクション・ミュージカルなど躍動的なシーンの方が大きな変化となっている。

再生速度の影響は特に3.0倍速で大きくなり、3.0倍速は映像視聴の再生速度として有効ではないと示唆された。

大柴雅基らの再生方法の違いによる学習効果の違い(学会発表)

20代の大学生45名に対し、1倍速、1.5倍速、一時停止の有無による動画への理解度(正答率)を調査した。なお実験で使用された動画教材は、専門知識を必要としないビジネスマナーに関する15分の動画×4とした。

単なる宣言的知識を問う教材では、1倍速より有意に1.5倍速の方に軍配が上がった。一方で手続き的知識(来客対応や電話応対など)は再生速度と学習効果に関係性がないとされた。以上より1.5倍速の方がより高い時間効率で学習できると結論付けられた。

まとめ:倍速視聴という発展途上の分野で

倍速視聴の実現は『もっと短く情報を得たい、コンテンツを消化したい』という想いから生まれました。概容にてメリットはより短い時間でコンテンツを楽しめる点デメリットは脳へかかる負荷が大きい点としています。

X(旧Twitter)では、朗読やゆっくり解説といった特定の分野でのみ使用する人から、コンテンツの価値を落とすと全否定する人がいました。

論文の結果は1.5倍速が学習動画視聴に適している可能性を示すとともに、脳波や眼球の動きの変化から2倍速以上で有意に負荷がかかっていると示唆されました。面白いことにオンデマンド授業では、1.5倍速にして集中した生徒の方が繰り返し視聴した生徒よりも高い成績を有していた[5]ともされています。一方で2倍速までで学習結果は変化しないとされ、田村[6]の結果も支持していました。

総合的な結果を下にまとめました。

  • 時間効率を考えた場合、学習教材であれば1.5倍速程度が望ましい
  • 2倍速以上で明らかに負荷がかかり、コンテンツの魅力も阻害し得る
  • ただし、等速が標準だからこその倍速機能であり、倍速に対応できるようナレーターへ促すのは間違っている
  • 1.5倍速以下によってコンテンツの魅力が下がるかは不明。認識面では有意差はないが、味わい方の違いという感情面にズレが生じていると推察

    参考文献

    [1]長濱澄, and 森田裕介. “映像コンテンツの高速提示による学習効果の分析.” 日本教育工学会論文誌 40.4 (2017): 291-300.
    [2]長濱澄, et al. “映像コンテンツの高速視聴における事象関連電位 P300 振幅を指標とした注意配分量の分析.” 日本教育工学会論文誌 42.Suppl. (2018): 041-044.
    [3]高比良英朗. “映像視聴方法の違いが注視に与える影響の分析.” (No Title) (2023).
    [4]大柴雅基, and 武藤剛. “動画教材の再生方法の違いによる学習効果の検討.” 第 84 回全国大会講演論文集 2022.1 (2022): 615-616.
    [5]阿部和也, and 宮川裕之. “オンライン授業の問題点の解明.” 情報システム学会 全国大会論文集 情報システム学会. 一般社団法人 情報システム学会, 2020.
    [6]田村美恵. “学生はどのようにしてオンデマンド型 オンライン授業を受講しているのか―受講者の学修行動と学習効果の評価について―.” 神戸外大論叢 75 (2022).

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