【今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す 感想】偶然の関係に名前を付けて

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日之影ソラ『今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す』は名前を付けづらい関係から徐々に進展していく恋愛ライトノベルです。再就職に絶望して毒草を食べようとする主人公。ヒロインはこっちの方が美味しいからと食用雑草を薦め、天ぷらを路上で振舞います。

タイトル通りの特徴的なスタートに対し、恋愛模様は王道の青春模様です。本作に立場の違いによる逃避行や年の差による背徳感の要素はほとんどありません。続巻があるのか不安になるくらい着実にハードルを越えていく模様は、立場差・年齢差という障壁も清々しく感じさせました。

1冊で初々しい年の差青春模様を楽しみたい人、タイトルの特異性に惹かれた人におすすめしたいと結論付けました。

目次

『今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す』小説情報

あらすじ

昔からなんでも平均以上にこなし、
慕われるリーダーとして生きてきた櫻野秀一郎。

しかし、社会人2年目のある日大きなミスを犯し
会社を退職することになる。

貯金もそこをつきかけ自暴自棄になった秀一郎が、
道端の雑草を食べようとすると––––

「お兄さんだめ!食べるならこっちの草がいいよ!」

可愛らしい女子高生が雑草食のアドバイスをしてきた!?

“雑草を食べる”という奇妙な縁から始まる、
失意の社会人と孤独に悩む女子高生の歳の差純愛ラブコメ開幕!

今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す1|PASH!ブックス&文庫

主要登場人物

櫻野秀一郎

一ヶ月前職場で大きなミスをして無職になった元サラリーマン(社会人2年目)。学生時代は優秀で、接客や動画編集のバイト経験も積んでいた。

高葉向日葵

太陽のように笑顔が眩しい17歳。一人暮らしで進学校に通っている。学費が免除されるほど成績は優秀

自身のチャンネル『サンフラワーチャンネル』は登録者数50万人以上となっており、動画収益は生活費に使っている。

じゅえりー

向日葵のコラボ相手2人目。釣った魚を料理するチャンネル『じゅえりーチャンネル』を運営している事務所勢。

お金を求めた向日葵に動画配信の技術を教えた師匠。

作者がコラボ協力をしており、チャンネルは実在します

『今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す』ストーリーPickup

以下、ネタバレ注意です。

夜の野原で天ぷらパーティー

「はい! 毒の無い大体の雑草は天ぷらで食べられます! と、私は思っています!」

「思ってるだけなのか……」

「大丈夫です! 自分で食べて確かめていますから!」

『プロローグ 雑草女子高生』より

本作のタイトルに偽りはありません。再就活が上手くいかない主人公秀一郎へ、ヒロイン向日葵が進めた手段が雑草の天ぷらでした。植物図鑑で調べた知識を武器に、路上の食べられる草を採取していきます。

そこら辺の枝(無毒)を箸代わりにして、代わりの鍋を皿代わりにする。調味料もないワイルドな食事光景が栗比遂げられました。

ネット小説だとしても珍しいスタートを切った小説です。路上で天ぷらを食した仲を、どう表現すれば良いのでしょうか。何と言えない関係性が本作の鍵となりました。

名前のない関係からつながりを

会って2度目で女子高校生の家にお邪魔する。捕まえたナマズを素揚げするためとはいえ、ロケットスタートを切っています。

ここで問題が生じます。周りから見てスーツ姿のサラリーマンと制服を着た女子高生の組み合わせはどう映るでしょうか。恋愛感情がなかったとしても言語化する方法が思いつきません。嫉妬でいじめられていた向日葵は、グループに盗撮されパパ活・援助交際といったうわさを流されてしまいました。

スーツ姿の大人がいたとしても違和感のない方法。幸いにも秀一郎は動画編集の経験者でした。向日葵は周囲に隠していた、動画配信者の側面を見せると決意します。

2人の関係は『マネージャーと配信者』という名前が付けられました

社会人のしがらみ

社会人だからとか、高校生だからとか、そういう建て前は一先ず置いておこう。自分の胸に手を当てて、ただまっすぐに、この感情と向き合う。

「俺は……彼女に惹かれているんだな」

出会った時からずっと、彼女の言葉に励まされ、笑顔にときめいて、生き方に勇気を貰っていた。

この感情は好意だ。

『四.この柵に意味を』

社会人で7歳差の恋愛は珍しくありません。しかし、相手が未成年となると話は変わります。プラトニックな関係である限り法律上は問題ありませんが、倫理的に不味いと考える人が大半でしょう。

青少年健全育成条例:地域の児童が安全かつ健全に成長できるように、各地方自治体が定めている条例。主に18歳未満の異性とみだらな行為を禁止する。同意がない場合は強制わいせつ・強制性交等罪などに進化する。

秀一郎にとって向日葵は大の恩人です。優等生であり続け、再就活で初めて挫折を経験した。絶望したタイミングに向日葵は世界の広さと冒険の楽しさを教えてくれました

向日葵にとって秀一郎は最も信頼できる人です。両親に捨てられて独りで成長するしかなかった。孤独なタイミングに秀一郎は隣に立って背中を押して、世界を広げるきっかけをくれました

秀一郎の就職問題も解決し、向日葵の初コラボも成功しています。『マネージャーと配信者』として順調に仲を深めていく2人ですが、関係性の名前に限界が近づいていました。相手への好意を認識してしまったのです。

思いを心に秘めておくのか、それとも関係性を変えるのか。選択を迫られるタイミングは突如訪れました。

ライトノベル屈指のクズな父親

互いに自身の弱音をさらけ出し、つながりを知った。顔出しのきっかけによって、新たな関係と機会をつかむ。王道のヒューマンドラマを展開する本作において、起承転結の転はどうなるでしょうか。

作者の回答は『育児放棄していた向日葵の父親が襲来する』でした。

  • 中学2年生のときから約4年間会いに来ていない
  • 豪華な1LDKのマンションを契約しておいて、向日葵に支払いをさせる
  • 食費や学費なども含め、全く仕送りをしていない
  • 何も告げずに再婚して勝手に子供を作る(3歳くらいなことから離婚直後にやっている
  • 娘に何もしていないのに転校と動画活動の廃止だけは強制する
  • 娘に対する愛情はなく、連れていく理由は妻へのアピール

はっきり言って、父親は相当なクズです。活動に反対する親が戻って来て対面する描写は『優雅な歌声が最高の復讐である』などでも見られましたが、こいつは帰ってきた動機が自分よがりです。

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現役高校生と7歳差の恋愛。賛否両論分かれる関係を認めさせるためか、ライトノベルでもまれな擁護できないキャラクターとなっていました。

『今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す』まとめ:関係を塗り替えて

立場や柵を越えて、関係の名前が変わっても、俺たちがやることは変わらない。

今宵も俺たちは雑草を探す。

『エピローグ 今宵も俺たちは雑草を探す』より

毒親からどうやって向日葵を引きはがすか。秀一郎の答えは今までから想像できない泥臭い手段でした。向日葵との出会いが、挑戦し視野を広げたのでしょう。

退職日がフラグになっていたとは驚きました。幸せな一枚絵は今後の未来の光を照らすとともに、続巻予定のはずなのに物語として完結してしまっているという懸念が生まれました。

日之影ソラ『今宵も俺は女子高生と雑草(晩餐)を探す』は名前を付けづらい関係から徐々に進展していく恋愛ライトノベルです。

物語が進むにつれて関係性の名前が変わっていく作りが見事だと感じました。年齢や立場といったギャップも物語の展開に役立っていました。

一方で障壁のわりに敵が小さく、ハードルを簡単に乗り越えてしまっている印象がぬぐえません。1巻完結ものであれば美徳なのですが、作者があとがきで続巻を狙っている以上不安要素になっています。

1冊で初々しい年の差青春模様を楽しみたい人、タイトルの特異性に惹かれた人におすすめしたいと結論付けました。

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