オリ主はオリジナル主人公の略称で、作者が手掛けたキャラクターを二次創作内に加えた際に付けられる二次創作特有の警告タグです。なぜオリジナルのキャラクターを二次創作に混ぜるのか、利点および欠点についてまとめました。
「オリ主 いらない」と検索されるのにどうして投稿され続けるのか、両者の視点からみていきます。
親記事:警告タグとは

オリ主とは
一次創作の場合
一次創作にオリ主のタグは必要ありません。一次創作の時点でオリジナルなのは明白だからです。
オマージュやパロディのように他者の創作物が乱入する作品もありますが、主体はオリジナルであるため使われません。この点は著作権のケースと違ってきます。
二次創作では
対して二次創作では幅広く使われます。Google検索においても「(作品名)オリ主」で検索されており、区別を付けるために警告タグに指定されています。
オリ主の混ぜ方
原作(小麦粉)へオリジナル要素(卵)を混入するときのイメージ図です。理由もなく混ぜようとしない限り、卵は雨期続きます。この状態からオリ主を原作に混ぜる方法は住民、転生・転移、憑依に区別されます。
住民
住民型のオリ主は、元々原作世界で生まれているタイプを指しています。原作キャラクターに違和感を持たれない点が特徴です。異世界転生と異なり、前世の経験や知識を持っていなくても含まれます。
強みは幼馴染や親友、兄妹といった人間関係を盛り込むことができること。弱みは必ず原作に準拠した設定にしなければならないことです。
転生・転移
転生・転移型のオリ主は、原作の外の世界から来たタイプを表しています。いわゆる異世界転移・異世界転生が大半を占めます。他にはタイムリープやRTA小説における走者、旅人、漂流者なども入ってきます。
強みは原作から外れた経歴を設定できること、思想の違いから物語に幅を利かせやすいこと。弱みは原作のキャラクターと交流を持たせることに一工夫いることです。
憑依
憑依型のオリ主は、原作キャラクターへ転生したタイプです。中の人の知識や経験、外の人の能力を掛け合わせることで、物語を展開していきます。
強みは憑依先の人物を救いやすいこと、名前や容姿をイメージしやすいこと。弱みは元ネタが原作なので風評被害になり得ることです。
オリ主を混ぜる利点と欠点
利点1:展開の幅が広がる
人数や思想の増加によって展開の幅は広がり、原作から外すことも容易になります。
メインキャラクターへ憑依した場合、〇〇死亡などキャラクターの排除をしない限り、必ず人数は増えます。増えることで原作でできなかったチーム分けやカップリングなどを作りやすいところが強みとなります。
思想や常識の違いも広がりに役立ちます。最たる例はファンタジーやSFです。他に政策や教育の違いといった些細なものも話のタネになります。
利点2:安心して動かせる
原作キャラクターを最も理解しているのは、間違いなく原作者です。二次創作者は「こういうときにこう行動した」と初期の人工知能と同じような手段で動かしていきます。
オリ主を最も理解しているのは、二次創作の作者です。頭の中で勝手に動いてもそのまま投影することができます。また行動方針が破綻していない限り、「なんでその行動をしたのか」と咎められることはありません。
利点3:自らの願いを叶える
原作でバッドエンドとなったキャラクターを救いたい。理想のキャラクターと結ばれたい。不遇なキャラクターを前面に出したい。それらは全て二次創作で解決することができます。
オリ主はこの性質を強めてくれます。自分を模したオリ主に全てを任せて解決することで理想の人間関係も小説を通して叶えられます。ただしこの目的で書く場合、読者側にとってどう映るのか、二次創作の定義に反していないのか、努々忘れないようにしてください。
欠点1:バランス崩壊
オリ主が警告タグとなっている所以であり、利点すべてに関わる非常に大きな問題です。
オリ主は違いを加えていくことで、積極的に反応を連鎖させていきます。原子力発電に近い劇薬です。用量を間違えれば過熱し崩壊しかねません。
対処法はオリ主を原作人物の規格に合わせることです。変えたい部分と守りたい部分をはっきりさせることで、崩壊を減らすことができます。
欠点2:特定の関係の掛け合いの減少
人数が増えることは利点だけではありません。相対的な掛け合いの減少という問題もはらんでいます。作者の処理限界の都合による、軍事モノや大衆劇といった人数が極端に多い物語に起こりがちな問題です。
対処法の1つは人気投票やローテーションなどによって1回に扱う人数を減らすことで、アイドル関連やソーシャルゲームでよく取られています。
欠点3:主人公の存在意義は
あろうことか原作主人公を仕分け対象にする作品も見られました。理想の人間関係を作るのに唯一性に秀でる主人公は邪魔なのです。
こうなってしまった原因は2つに分けられます。
1つはオリ主の頑張りによるもの。異世界の知識などを動員して、オリ主は原作世界の想定以上に頑張りました。そうしたら主人公の役目がなくなってしまい、崩壊寸前です。このケースの場合は主人公一行に配慮してオリ主の限度を決めておくべきです。
2つ目はオリ主が原作主人公と別の派閥に付いていた場合。代表的なのは勇者と魔王です。描写の濃さや活躍度が明確に違うと話が盛り上がらず、オリ主の弱体化も招きます。
2つ目はオリ主が原作主人公と別の派閥だった場合。RPGの勇者軍と魔王軍が代表例です。こちらは描写よりも活躍の違いが問題になります。余りに弱いと話が盛り上がりませんし、強過ぎると後述のオリ主弱体化につながります。
オリ主側の存在感が薄くなることもあります。傍観者視点に居続けた、主人公サイドのサポートしかしていないといったストーリーでみられました。この場合、どうして加えたかをはっきりとさせ存在感を出してあげてください。
欠点4:アンチヘイトとの親和性
アンチ(anti-)、ヘイト(hate)は2つとも原作中の特定人物への差別に対する、警告タグになります。特にオリ主は特定人物が犠牲になる可能性が高く、このタグと強い関係を持ちます。
原作で報われなかったキャラクターを救済するとき、敵対者や恋のライバルが苦い思いをすることに。オリ主を無双させた結果、主人公の存在感が消えた。描きやすいキャラクターに尽力した結果、主要人数がむしろ減っていた。
原作崩壊への保険要素として警告タグが併設されている作品が多い現状です。
まとめ
オリ主を使った際のメリットとデメリットを図にしています。大きくまとめると、強みは「物語の作りやすさや自由度を高める作用」を、弱みでは「不遇キャラクターの出現やバランス」崩壊を挙げました。
オリ主は二次創作の敷居を下げると同時に、設定からの準拠が求められるようになりました。
私は功績も大きいことからオリ主を認める側です。作者・読者の双方から共感しやすく、自由に作者の個性を入れられる点が素晴らしいを思っています。しかし、共感しやすいのは逆もしかりで、主人公に同調して原作を貶していては元も子もありません。適切量が求められます。華美なセッティングをして理想のプレゼントを贈っても、相手が喜んでもらえるとは限らない。恋愛模様と同様に適切な量を探して取り入れていかなければなりません。
以上を踏まえてオリ主を使用する際の流れをまとめています。
- 「原作作品を読み切る」特に伏線となる掛け合いがどこにあったかをメモしておくこと
- 「どんなところを変えたいのか、混ぜることでいい影響となり得るのか」ノートを書き貫くことで決めておく
- 「混ぜ方を考える」オリ主にどれくらいの劇薬を求め得散るのか考え、外来人か住民かを決めていく。
- 掛け合いをさせてみる。最初は1000文字程度の短いものを沢山のテーマに則って。
- 実際に作品の序章を書いてみる。ここまで来て矛盾が生まれているようであれば、背景設定なので細かく修復していく (以下省略)
追記:オリ主タグが含まれる、オススメ二次創作作品5選
本サイトのページおよび、私のブックマークに残っているサイトから一部紹介してページを締めさせていただきます。
アイドルは労働者(仮)

警告タグ:R-15, オリ主 , 神様転生, 性転換
夢や希望を伝えるのではなく、扇動者として偶像であろうと務めたアイドルとプロデューサーのヒューマンドラマ。就職先で突然アイドル事業部に配属された主人公。求めるものを演じるのか、ありのままを届かせるのか。社会人として方向性が定まっているからこそ映えた、シンデレラガールズとの対比が注目点です。
感情より論理を優先する現実的なアイドルや、目標に一直線なキャラクターを見るのが好きな人にオススメです。
ヘルマプロディートスの恋

警告タグ:R-15, オリ主, 性転換
仮想世界で異なる性別として生活することになってしまった、2人の恋愛模様を描いたラブコメです。アスナの容姿に憧れる少年とキリトに救われる少女。どうして茅場は元の姿に固定化したのか、別世界で複雑化していく人間模様を通して実感させられました。
2人は元の姿に戻れたのか。どうやって仲を繋ぎ直したのか。仮想世界のTSFに興味のある方、甘酸っぱい恋愛が好きな人へオススメです。
東方帽子屋

警告タグ:R-15, ガールズラブ, オリ主, 残酷な描写, 転生, 性転換
吸血鬼姉妹の真ん中として「答えをなくす程度の能力」とともに転生するファンタジー。傍観者として数々の異変と日常を見守る日々。それでも原作を知っていたのに両親を守れなかったことを悔いていました。
周囲を不幸にしたくない想いから生じた、最終章までの伏線と最後の異変が素晴らしい作品でした。89万文字もあるので時間には注意です。
マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート
警告タグ:R-15, ガールズラブ, オリ主, 残酷な描写
みみずくやしき 様作の、メロン大好き少女がひた走る小説。小説としての完成度の高さに加えて、実況者特有の不思議な動きを体現してしまった少女の不可思議さが味を出しています。
少女の活動が生み出していった数多の波紋……想いの変化と粘り強さに魅せられる作品でした。
南賀ノ神社の白巫女
警告タグ:オリ主
研究者気質の問題児少女が、忍者らしくない忍者として活躍するコメディ作品です。忍世界を代表するエリート一族に生まれ、他のエリートの血を引き継いでいながら全く強くありません。はた迷惑な特性は「敵以上に味方に回したくない」という発言から読み取れるでしょう。
他のオリジナルキャラクターもいい味を出しています。誰も不幸にならないように心がける作者の心情もあり、全面的にオススメできます。
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