アニメ「ライアー・ライアー12話」の謎解きとキャラクター分析:嘘から始まった友情関係

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ライトノベル出身のアニメ『ライアー・ライアー』を、補足しつつ感想を書いていくシリーズの最終回です。

第11話「兵と友」は《百面相》側の刺客、霧谷きりがや凍夜との戦いが中心に描かれました。彩園寺(朱羽)を敬う久我崎を味方につけ、秋月の些細な復讐と組み合わせて打ち取ります。しかし、ラスボスの《百面相》を倒す計画は失敗し、正攻法は失われました

ここから始まるのは番外戦術です。

第12話「ずっとみんなと」はアストラルの後始末です。どうやって《百面相》騒動の全てを倉橋御門へ押し付けるか。たった3人だけの盤上戦が幕を開けました。

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目次

『ライアー・ライアー』のあらすじ

学生同士がランクを決めるゲームを繰り広げる学園島。篠原緋呂斗は国内最難関の学園島編入試験で歴代トップの成績を叩き出し、昨年度の絶対王者・彩園寺更紗を転校初日で陥落させた。結果学園島史上最速で頂点に1人だけ君臨する7ツ星に成り上がった。

そんなものは全て嘘だ。大切な人に会うために外部からやってきただけの一般人で、本当の星はたった1つしかない。しかし、学園島に残るためには嘘でもトップにいなければならない。姫路白雪のイカサマも、偽物だった彩園寺更紗との共犯関係だって活用する。

じゃあ、世界を騙す嘘を始めよう。

キャラクター紹介

  • 篠原緋呂斗:英明学園2年の7つ星(偽)。ポーカーフェイスと機転で補う。
  • 彩園寺更紗:桜花学園2年の6つ星。影武者で本名は朱羽莉奈。
  • 椎名紬:中学三年生の引きこもり少女。偽アカウントを作れるくらいの天才で、倉橋御門のスカウトを受けた。《百面相》の正体
  • 倉橋御門:一週間ほど前に学園長の座を追放された。裏の顔は残っており、ASTRALを掌握。2人に復讐するため《百面相》を差し向ける。

ライアー・ライアー12話「兵と友」の展開と7つの補足

アニメで描写されていなかった背景、疑問視される展開を中心に補足していきます。

この項目内の挿絵は全て、©2023 久追遥希/KADOKAWA/ライアー・ライアー製作委員会のものを使用しています。

また彩園寺更紗(朱羽莉奈)については、アニメ化する範囲で本物の彩園寺更紗は登場しないため、彩園寺表記で統一します。

椎名と《決闘》するために

《百面相》のしもべは倒せても、《百面相》本人はASTRALの正規ルートでは倒せません。篠原が提案したのは《百面相》、すなわち椎名紬との《決闘》でした。

視聴者の代弁として、榎本真司から3つの質問が為されます。

《百面相》と《女帝》の決闘中に申請が仕掛けられるのか

椎名紬は星獲りゲームの正規参加者ではない。星の数がないから、格下に仕掛けられない7つ星が仕掛けることもできる。

どうやって一夜で《決闘》の内容を準備するか

倉橋を徹底的に潰すための《決闘》を一ノ瀬学長に依頼する

何もしなければ勝てるのに、どうやって《百面相》をおびき出すか

椎名紬の心理を利用する(後述)

つまり、不正や妨害を使ってでも黒幕の倉橋を倒す番外戦術に出るということです。

椎名紬はどうして倉橋に手を貸していたのでしょうか。天才少女の答えはいたってシンプルでした。

『高校生にはなりたくないけど、星獲りゲームに参加したい』

勉学の内容は理解している。人と会いたくない。けれども高校生にならなければ、星獲りゲームの資格が貰えない。だから《決闘》に参加するための不正アカウントを自作してしまいました

類まれな所業を倉橋に目を付けられ、《百面相》になるよう指示されたといいます。つまり、椎名はただ《決闘》をしたかっただけでした。

カーテンを閉めなさい

椎名の端末が分かっている以上、端末を物理的に破壊する方法もありました。しかし、椎名紬が

『負けたゲームには執着しない代わりに決着がついていないゲームに関してはとことんまで”続き”を迫ってくる』

少女であることをASTRAL開催中に知っています。彼女に負けたことを認めさせなければなりません。

アニメ作画班へ カーテンを閉めてください。7つ星が真夜中に中学生の女の子と密会している映像を撮られかねません。原作でも開いていた描写はなく、開けておいた理由もありません。彩園寺との密会は彩園寺が止めましたが、姫路が傍にいない篠原は盗撮に無頓着なのでしょうか

ゲームへ誘導する策

椎名紬も待っているだけで勝てることを分かっていました。そこへ篠原が突き付けた提案は、ペテンというより理詰めでした。

椎名紬が彩園寺へ突き付けた勝利条件は『篠原緋呂斗を先に倒すこと』。引用箇所で言っているように篠原を倒さなければ実質敗北します。さらに篠原は全スペルを逃走用に整えており、ASTRALで追い詰めるのも困難でした

『そして最後に、もし誰も――私も貴女も誰も彼もが篠原緋呂斗を倒せなければ、その時は彼の単独勝利ということで構わないわ。私の処遇も彼に任せることにする』


『ライアー・ライアー3巻「第一章 ニセモノのニセモノ」』より《影武者》の発言

篠原と彩園寺にとっては自分の所属する学園の順位を上げるため、椎名にとっては最強クラスの2人と《決闘》するため。三方良しの《決闘》が幕を開けました。

ASTRAL連動《決闘》クロスボード

篠原が一ノ瀬学長に頼んで作ってもらったゲームはクロスボードです。ASTRALのマスを100マスにまで圧縮しており、クロスボードの結果はASTRALと常に連動しています

クロスボードはターン制ゲームです。1ターンに一度、自分の領土の周り1マスへ2つの旗のいずれかを置きます。

  • 【制圧旗】配置したマスを即座に自チームの色に変える
  • 【浸食旗】次のターン終了時、配置したマスの周囲7マス(-隣接1マス)を自チームの色に変える

その後3つのコマンドのうち1つを選択します。

  • 情報収集:指定位置がコア拠点か判定(コア拠点は潰されると即脱落)
  • 移動:コア拠点を2マス以内に移動
  • 攪乱:1ターンの間、自チームに対する情報収集を無効化
原作による補足

最初に運ゲーを仕掛けていたようにアニメでは見えます。原作ではアビリティ《行動予測》を使って、椎名紬の初手とコア拠点を把握していました。少女は《決闘》を楽しみたく、2択で《女帝》に負ける浅慮な賭けをするつもりはありません。それを把握しているから篠原は詰ませにかかれました。

連動しているが故の番外戦術

クロスボードの盤面はASTRALと連動しています。埒が明かないと判断した倉橋は、《黒の星》を使った劣化コピーを桜花学園のエリア(桃色)へ送り出しました。彼らが暴れることで桜花のエリアを聖城学園の黒へ上書きしていきます。

どうして篠原は連動させるように設計したのでしょうか。答えの1つは榎本が託した少女に委ねられました。

「――僕の指示に100%の精度で応えてくれる人間など、この世に浅宮七瀬鹿存在しないと思っているからだ」
『っ……!?』
榎本の放った言葉に思いきり動揺し、七瀬は声にならない声を零した。


『ライアー・ライアー4巻「最終章 無垢な怪物の倒し方」』より榎本視点

4人目の生存者である七瀬が榎本の指示のもと、劣化コピーをせん滅してくれています。前日に霧谷の二刀流に切られたように演出されました。そのとき、ダメージを榎本が《避雷針》アビリティで受け、七瀬は《潜伏》スペルで隠れて離脱します。主催者のライブラが味方に付いており、生存人数のデータログを偽る不正くらいは許されました

原作との違い Part2

倉橋が霧谷に電話したとき、彼は学校の屋上にいました。彼は何のために連絡していたのでしょうか。

アニメで明かされなかった倉橋の提案は『ワイルドカードの偽造』です。生存者の霧谷によって制圧してもらう算段でした。しかし、原作では対面したうえで3つの理由から断られています。

  • 厄介なコピープロダクトがかかっており、端末を壊しかねないものだった
  • 事前に《小悪魔》秋月乃愛が煽りにきていた
  • 昨日の《入れ替え》アビリティで渡されたアビリティから、篠原の詰めの一手を理解していた

往生際が悪い倉橋へ報復を

この時点でクロスボードのマス数は聖城35、英明37、桜花28です。七瀬たちが頑張っている英明が増えているのは納得ですが、追い付けている彩園寺の異常性が伺えます。

霧谷に裏切られ、倉橋は『直接椎名のARを操る』強硬策に出るしかなくなりました。外からの操作で2校のエリアを黒く染めようとします。

この瞬間、篠原が企てていた全ての勝利条件が満たされました。

アビリティ《逆探知》

《決闘》外から干渉している通信をハッキングし、横から乗っ取ることのできるアビリティ。星の数に応じて効果が調整されるアビリティの都合で、最終日にしか使えない制約がかかっている。

30人近くの選抜メンバーを周辺に待機させ、直接乗り込むことで倉橋を鎮圧した。

原作との違い おまけ

Part2で触れたように、原作では霧谷は直接対面して裏切りを告げています。乗り込みの時刻を考えると、霧谷も同伴していたのに放置されていた可能性が浮上しました。

倉橋の一派は中枢組織から完全に排除され、イベント運営委員会も厳重注意が下されました。そうしてASTRALは篠原ら英明学園の優勝で幕を閉じています。

なお、彩園寺はコア拠点をちゃっかり《干渉無効 Lv5》で守っていました。

まとめ:最大の被害者は被害者へ何を問う

問題となるのは椎名紬の処分でした。彼女は倉橋によってかなりの情報を制限されており、不正をしている意識はありません。とはいえ最大の被害者のライブラにとってどう映るかは別問題です。

原作との違い Part3

原作では端末越しの会話でしたが、AR空間の目の前に現れる演出に変更されました。ここは純粋に良改変といえるでしょう。

ついでに《ライブラ》で特集するために彩園寺と付き合って欲しいという問題発言もカットされました。このときは、嘘うんぬんの前に破滅しかねないほど、姫路白雪が無表情で嫉妬しています

だって、その証拠に――

「…………へえ…………」

(こ、怖いんですけど姫路さん!?)

何故かさん付けしたくなる無表情の姫路が隣でポツリと呟くのを聴きながら、俺はひくひくと頬を引き攣らせていた。

エピローグ 祭りのあと

『だから、《アストラル》にゃ。この《決闘》は、紬ちゃんにとって楽しいモノだったのかにゃ?』

全て楽しかったと告げた椎名は、風見らによって無罪放免となるのでした。

第12話「ずっとみんなと」はアストラルの後始末です。どうやって《百面相》騒動の全てを倉橋御門へ押し付けるか。たった3人だけの盤上戦が繰り広げられました。

嘘から始まった物語は一区切りを迎えました。大きなトラブルも今はなく、学園内での地位も確固たるものとしています。しかし、真の7つ星へはまだまだ続きます。アストラルで篠原が彩園寺に向けた言葉を最後に、『ライアー・ライアー』アニメ版の感想を閉じさせていただきます。

どこか挑発的な彩園寺の発言に、ひくっと頬を歪ませる俺。……ああ、やっぱりこのお嬢様は厄介だ。厄介で、狡猾で、その上いちいちカッコいい。

そんなことを思いながら――俺たちは、やがて《アストラル》が終焉を迎えるまで、ただひたすらに不敵な視線を交わし合っていた。

最終章 無垢な怪物の倒し方より
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