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【セラミックスとは?】7分で歴史から特徴・用途までの解説に挑戦
- セラミックスとは:一言で示せば「練りもの」。原料の粉をかき混ぜ、増粘剤を加えて、高温で固めることで作られている。
- 使用先:陶器や磁器、コンクリートだけでなく、電池や電子部品、切削工具など幅広く使われている。
- 長所と短所:長所は硬く耐久性に優れている点。また対応力の高さも魅力。対して短所は衝撃にもろく、作るのに多くのエネルギーを使う点。
左巻健男著「絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている」の8章の情報を交えつつ、セラミックスについてからどこに使われているかといったことまでを紹介していきます。ありふれていて古臭そう、横文字で分かりにくいと思うだけでなく、意外な用途や特徴について興味を持っていただけたら幸いです。
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左巻 健男 ダイヤモンド社 2021年02月18日頃
目次
セラミックスとは
セラミックスを一言で表すと「練りもの」です。原料の粉をかき混ぜ、増粘剤を加えて、高温で固めることで作られています。原料を溶かして鋳造する金属や、原料を反応し射出成型して得るプラスチックなどと相反する材料です。
陶器やセメントを中心に発展しており、半導体基板や二次電池、圧電材料といった応用が期待されています。
いずれの開発にも高温で焼結させるための窯が不可欠でした。
陶器と磁器
セラミックスの中で最もイメージしやすいであろう陶器と磁器。あなたは違いを説明できますか?
陶器は土物です。粘土から作られ800~1300 °Cと比較的低温で作られています。多孔質で吸水性が残ってしまうため、釉薬をかけて焼かれることも多くあります。
熱伝導率も低く熱くなりにくい所も特徴です。
食器類の他タイルや便器など水回りによく使われています。
磁器は石物です。陶石やカオリンの比率が高い粘土を1200~1400 °Cで焼き上げることで作られます。石の比率が高くガラス質になるほど高温で焼いているため硬くなり、薄く作ることができるようになりました。
素材から白くなだらかに作られることからデザインが映えやすいとされます。
食器類や装飾品の他、理化学用器具としても良く使われています。
どんなところに使われているか
コンクリート
一番身近なセラミックスといえば道路や電柱などに使われているコンクリートでしょう。コンクリートは原料のセメントに砂や砂利を混ぜ、水を加えて固めることで作られます。
古代ローマの頃から活用されているとされる、由緒正しいセラミックスでもあります。岩石と石灰、石を混ぜたものが水中で固まっていたことが最初でした。今でも約2000年前に建造されたパンテオンのドームを見ることができます。
その後産業革命の頃に鉄筋コンクリートが有名になりました。安価でコンクリートの弱点を補うことができるからでした。
補足:水を加えて混ぜる理由
化学反応を起こすためです。溶解時の熱によって針状の結晶が新たにでき固まります。水道水でも海水でも反応はしますが、鉄筋コンクリートでは塩分によって腐食するおそれがあるため、不純物には注意が必要です。
セメントとは
硅石や酸化鉄、粘土といったそこらにある石にチョークにも使われている石灰石(水酸化カルシウム)を回転窯で混ぜて、1450°Cで熱したもの。他の用途と比べ昔から産業に大きく関わっていたこともあり、多くの論文とエーライト(C3S:3CaO・SiO2)、ビーライト(C2S:2CaO・SiO2)といった専門用語が作られている。
もっと知りたい人は「ポルトランドセメント」で検索してください。
ガラス
窓ガラスからディスプレイまで幅広く使われているガラスもセラミックスの一種です。透明で成形しやすいことが強みなのですが、産業用としては比較的歴史が浅い素材です。
発見自体は古くエジプト・メソポタミア文明からありました。副葬品や装飾品としての利用が大半だったそうです。2100年ほど前に吹きガラスが作られるようになり、器やステンドガラスといった工芸品としての道が開かれました。中世では錬金術のための器具として科学の発展に大きな影響を与えています。
産業用としての流通は1959年にピルキントン社がフロート法を開発してからでした。今では窓ガラスだけでなく光ファイバー網の素材としても活躍しています。
補足:ガラスが透明な理由
理由は2つ。1つは境界面がないから、厳密に言えば「数十nm以上続くマクロの規則性がなく光を散乱しないから」となります。もう1つは目に見える光(可視光線)を吸収しないからです。窓ガラスは紫外線を吸収しており、紫外線が見える生物にとっては透明に見えません。
触媒担体
ガソリンを燃やして動かしている以上、排ガスの発生は避けられません。しかし基準を超えないように触媒が動いているから、スモッグが起こらなくなりました。nmスケールの触媒の機能を支える装置を触媒担体と呼びます。
上の図に示した日本ガイシの技術が有名で、排ガス規制を満たすため数多くの車両に導入されています。
二次電池
セラミックス基盤の電池は、高い温度でも発電できることができます。ものによっては800°C以上と銅が溶けかけ鉄が曲がるような温度でも安定できるのです。
なぜ高温で発電するのでしょうか。
答えは「継続させるときの維持エネルギーコストが低いから」、すなわち環境への負荷が小さくなるからです。大型のセラミックス電池は一般人が見ることのない工場内で活躍し、今後の進展に注目が集まっています。
日本ガイシ(NAS電池)、京セラ(SOFC)、産総研(NASICON)など企業ごとに特色をもって取り掛かっていました。
コンデンサ
高周波数に対応できる強みと、誘電性や磁性など性能の改善が重なり20世紀半ばから生まれた技術です。現在のスマートフォン1台には600個以上のセラミックスコンデンサが搭載されており、見えないながらも欠かすことのできない素材でした。
有名企業は村田製作所、日本ケミコン、MARUWA、京セラ、TDKなど。
切削工具
硬い、錆びない、削れにくいといった特徴から、はさみや包丁などにも使われていることも。
酸化アルミニウム(アルミナ)や窒化ケイ素は工業用として、酸化ジルコニウム(ジルコニア)は刃が白い包丁やはさみの素材として使われています。これらの素材は特にエンジニアリングセラミックスと呼ばれ区別されています。
セラミックスの長所と短所
長所1 硬い
分かりやすい強み1は硬いことです。柔らかい方のセラミックスでもステンレスに匹敵し、エンジニアリングセラミックスは数倍のビッカース硬さを有しています。
多少の衝撃ではびくともしない、採寸が変わらないことから切削工具を始め広く使われています。
長所2 耐熱性
続いては耐熱性です。プラスチックが100~200 °C、ステンレスがおおよそ500 °Cと分解せずとも使用に耐えうる温度には限度があります。一方セラミックスは1000 °C以上耐える素材が数多くあるのです。
その特性上溶鉱炉の内側やエンジンといった高温に晒される環境で活躍しています。
長所3 絶縁性
窓ガラスからコンクリートまで、一般的なセラミックスは高い絶縁性を有しています。漏電を防ぐ、一方向にだけ流したいときに活躍します。
分かりやすい例としては電柱、他にも電車のパワー半導体として活躍していました。
当然ながら万能の物質ではないので、短所も数多くあります。その中でも特に大きな2つに絞って紹介しています。
短所1 延びない=脆い
セラミックスの弱点で最も代表的なものです。日常生活の中でも「床に落としたら茶碗が割れた」「窓ガラスが割られて業者を呼ばなくてはならない」など耳にすることもあるでしょう。どうして硬いはずのセラミックスでこの問題が発生するのでしょうか。
答えは延びないからです。針金やプラスチックは力を加えると曲がろうとします。これは構造の中に余裕があり受け流すことができるためです。でもガチガチに構造が固まったセラミックスには猶予はなく、ポッキーのように一度ズレるとあっという間に壊れてしまうのです。
耐熱性を一部犠牲にして有機樹脂を加える、ズレやすくなる原因の欠陥を減らす、割れたときの人的被害を抑えるといった数々の対処が取られています。とはいえこの弱点に完璧な回答はありません。
短所2 エネルギーコスト
通常のセラミックスは高温で焼かないと作れません。土器や陶器では1000 °C以上、フロート法で作られる窓ガラスは約1500 °C、エンジニアリングセラミックスの炭化ケイ素では1700 °C以上が求められます。また取ってきた炭酸カルシウムなど炭酸塩を酸化カルシウムにする工程で、どうしても二酸化炭素が排出されます。
総じてセラミックスはエネルギーを要求しがちな材料です。
研究者にとって分かりやすい問題なため様々な対策が研究されています。
- 圧力をかけて作り上げる低温焼成
- セメントに近い原理で焼かない無焼成セラミックス
- ガラス瓶やフライアッシュなどを混ぜ込むことによる原材料抑制
ガラス瓶はアルミ同様、リサイクルによって特に消費エネルギーを抑えられることが報告されています。
まとめ:縁の下の力持ち
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左巻 健男 ダイヤモンド社 2021年02月18日頃
左巻健男著「絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている」の8章の情報を交えつつ、セラミックスについてからどこに使われているかといったことまでを紹介していきました。ありふれていて古臭そう、横文字で分かりにくいと思うだけでなく、意外な用途や特徴について興味を持っていただけたら幸いです。
また、書籍はセラミックスだけではありません。金属や繊維といった比較先となる材料だったり、カレーライスやお酒といったもっと身近なものも載っていたりしました。正の側面だけでなく以前記事にしたような負の側面の数々も含まれており、より深く興味を持つきっかけとしてオススメの一冊でした。
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