『残酷な描写』かを判断する6個の基準

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今回は警告タグの一つである「残酷(な)描写」について、できる限り客観的である判断基準を示していきます。

様々な小説投稿サイトでそれぞれの判断基準が出されていますが、主体的かつ曖昧な点が問題となっています。本記事では小説サイトの定義に5つの視点を追加した6個の観点から考えていきます。

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各サイトの判断

カクヨム

カクヨムのガイドラインに示されている閲覧注意の内、残酷描写や暴力描写に関係するのは下の4点です。

自殺・犯罪・差別と具体的なものにも触れられていますが、表現の程度について全く教えてくれません。

  • 暴力的又は陰惨な画像・表現・描写などにより興味本位に暴力行為又は残虐性を喚起・助長するもの
  • 自殺を誘発・助長・ほう助するもの
  • 犯罪行為及び刑罰法令に抵触する行為又は誘引・助長・ほう助するもの
  • 他者に対する差別表現、権利を侵害する行為

https://kakuyomu.jp/legal/guideline#expression

ハーメルン

二次創作小説を中心とした投稿サイトハーメルンの基準は非常に簡潔でした。

単純な点は強みですが、これだけで判断できるかは怪しいでしょう。

残酷な描写が含まれる場合。(例:血飛沫など)


https://syosetu.org/?mode=readme_view&fid=17

2つの辞書の定義から

言葉の意味を調べる場合、辞書が真っ先に出てきます。

小学館の大辞泉、大修館書店の明鏡国語辞典[第二版]から『残酷』『描写』の意味を引用しました。

  • ざん-こく:【残酷/惨酷/残刻】《名・形動》無慈悲でむごたらしいこと。まともに見ていられないようなひどいやり方のさま。(大辞泉)
  • びょう-しゃ:【描写】《名》(スル)物の形や状態、心に感じたことなどを、言葉・絵画・音楽などによって写しあらわすこと。(大辞泉)
  • ざん-こく:【残酷】《名・形動》行いなどが厳しく冷たいこと。「惨酷」「残刻」とも。(明鏡国語辞典)
  • びょう-しゃ:【描写】《名・他サ変》具体的イメージを伴うようなしかたで、対象を描き出すこと。描き写すこと。特に、芸術作品として、知覚・認識した形態・情景・感情などを言語・絵画・音楽などによって具体的に表現すること。(明鏡国語辞典)

残酷描写について大辞泉では『まともに見ていられないようなひどい行動を表したもの』、明鏡国語辞典では『厳しく冷たい具体的イメージを伴った行動を表したもの』と解釈されます。

暴力やいじめは酷く厳しいものだと考えられ、各サイトの判断と大方一致していました。

血とはそこまで関係ない

ハーメルンの基準の一つとして「血飛沫」がありました。では血が出ていれば何でも残酷描写なのでしょうか。

結論として残酷な描写はそこまで血に関係していないと判断します。

例えばモンスターハンターシリーズでは武器によって討伐する行為が、残酷描写があると判断される1つの要因となっています。しかし包丁で指を切るシーンが残酷な描写とはならないでしょう。

また推理小説の流血や災害による出血は残酷な描写でしょうか。

流れていても映さなければ、描写しなければ規制しなくてもよいと考えることができます。

以上のことから「行動によって多量の血が流れているところを描写したものは残酷描写の一種である」とまとめました。

刑法との親和性の高さ

残酷な描写に当てはまる行動の多くは、法律によっても規定されています。暴力、傷害、犯罪ほう助、権利侵害、自殺ほう助は刑法に明記されています。

髪を触る、ツッコミなど意思疎通の為の暴力と、喧嘩やリンチといった我を通す為の暴力の2つに分けられます。残酷な描写といえば後者をイメージすることが多い一方で、どう区別すれば良いのでしょうか。

法律による区分の強みは示談の方法で判別できるところです。前者では取引なく成立できます。後者では示談金を始めとする取引が必要です。

したがって無条件の示談ができるかが残酷な描写か否かを判断する材料になると考えます。

  • 暴力→刑法208条(暴行)
  • 傷害→刑法204条(傷害)、205条(傷害致死)
  • 犯罪ほう助→刑法61条、62条(教唆、幇助)
  • 権利侵害 →刑法230条(名誉毀損)、民法709条、723条など
  • 自殺ほう助→刑法202条(自殺関与及び同意殺人)

問題点を挙げるとすれば自刃についてです。刑法は生者を咎める為のもので、加害者が既に亡くなっている場合を説いていません。これに対しては特例として残酷な描写へ入れることで解決します。

感情移入は描写の詳しさに依存する

次にむごたらしい行動へ長い描写をすれば、残酷な描写となるかを考えていきます。

まず賛成意見として危険度と離れた例を出してみます。タンスにぶつけた痛みを過剰に表現した前者と、あっさりと押してはいけないものを押した後者。

後者の方が安全に見えた人も一定数いたことでしょう。

ふと歩いているとき足の小指が何かに激突した。瞬間体に電流が走る。体の中から心拍が高鳴り、空気が妙に震えていく。私は赤く染まった足の先を思わず掴んだ。口から吐く息が荒れ、体は動けずにいた。

決まった手順でスイッチをリズムよく押していく。最後に隠されたスイッチを叩くと何かが飛んでいく轟音が響いた。

描写の長さが印象の強さと相関しない、反対意見も挙げられます。修飾に意味はあるのか、関係のない情報が含まれていないか。省かなければ正しく判断することはできないでしょう。

その景色を映したいか

残酷描写を生み出すとき、あなたは光景を想像できますか。それを分かったうえでなお表現したいのでしょうか。

それでも描写したいのであれば『残酷な描写』のタグは必要でしょう。

問題は見せたくないときです。どこまで描写するかが焦点になってきます。もちろん最も単純な対策は全く書かないことです。

他にも

  • 臨場感を出すような短文の勢いに委ねる
  • 風景や会話描写に逃げる
  • 視点をずらしてみる
  • 傷つけないように退場させる

といった対策も考えられます。

また童話の技法も参考になります。意図的に読者へ感情を移入させないことで、読者が傷つく確率を下げられます。

なぜ鬼が財宝を欲しがっていたのかを語らない(桃太郎)、陰で行っていた努力を映さない(ヘンゼルとグレーテル)、のように被害者の描写を嫌なものだけにするる。

自分の舞踏会の為に蹴落とす姉(シンデレラ)、強欲であり続ける隣人(おむすびころりん)のように恨みを買って爽快感で上回らす

残酷描写の客観的な判断基準とは?

  • 残酷描写の具体例:犯罪、自殺、いじめ、血飛沫etc. 特定のトラウマを除いて、感情移入によって読者を傷つける描写が対象
  • 刑法の基準と相関がある
  • 主観かつ抽象的な基準は、厳しく酷い行動を映すこと
  • 情景を読者が想像できるものに限る

今までの章の結論から、残酷な描写の客観的基準は

『キャラクターの個人的なトラウマ以外で、作者が思い描いた情景詳細に描写し特定人物の傷や痛みを描いたもの

としました。

このタグが付いているからと避けられることはほとんどありません。しかし読み書きするときに1つの定規として利用して頂ければと思います。

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