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【ドスケベ催眠術師の子 感想】過去のトラウマから自立して
桂嶋エイダ・浜弓場双『ドスケベ催眠術師の子』は親の負債によって虐げられるようになり過去を隠した主人公が、二代目の登場によって過去の謎が晒されていくストーリーです。
かつてドスケベ催眠術師は名前の通り、R-15程度のエロに才覚を見出していました。
彼に魅了され本性が出てしまった人物も現れる始末で、彼の伝説の中には性義を知らない息子に自身の業績を話させたエピソードもありました。
そんな彼が死に、しかし彼の前に現れたのは2代目ドスケベ催眠術師を名乗る少女片桐真友です。
転校初っ端から全裸祭をしやがった真友が求めたのは、初代が自分たちにかけた催眠術の解除。
本作は名前の通り催眠術が話の中心に出てきますが、エロ展開は最初の部分しかありません。
実態は親によって虐げられた過去を持つ少年たちが、催眠術によって新たな性格を獲得していったヒューマンドラマです。
エロを求める人よりも、トラウマからの自立を見たい人へ本作をおすすめします。
目次
『ドスケベ催眠術師の子』小説情報
あらすじ
前代未聞！？ ドスケベ感動巨編！！！
「ドスケベ催眠四十八手――夢幻狂気」
転校初日に“狂乱全裸祭”を引き起こしたそいつの目的は、俺の協力をとりつけることだったらしい。
「私は片桐真友。二代目ドスケベ催眠術師。いえい」（だぶるぴーすぶいぶい）
――ドスケベ催眠術師。
俺にとっては悪夢そのものの名前だ。
誠に遺憾ながら、その初代こそが、俺の父親だからである。
縁を切って、苗字まで変えたのに。
「サジ。ドスケベ催眠術師の子として、私の仲間になってほしい」
「断る」
催眠女子×闇系男子のタッグ成立！？ ドスケベ催眠×青春コメディ！！
主要登場人物
佐治沙慈
ドスケベ催眠術師（山本平助）の子。
徹底的なまでの合理主義者で、いつでも真友との交流を切れるように契約を結ぶ。
父親に散々かけられた過去から催眠術が効かない体質。
片桐真友
ドスケベ催眠術師の子を追って転校してきた2代目ドスケベ催眠術師。
ドスケベ催眠術師なことに誇りを持っている。
中学生になるまでの記憶がない。
『ドスケベ催眠術師の子』ストーリーPickup
解除条件：仲間を作る
真友は催眠術の効く人間を肉人形のようにしか思えない少女でした。
彼女にとって沙慈は類まれな才能を持つ人材であり、唯一『仲間を作る＝ドスケベ催眠術師と知っていても近くにいてくれる』という催眠術を解除できそうな相手です。
師匠から託された秘密の思惑もありつつ少女は沙慈に近づきました。
真友の秘密の思惑（4章の内容）
真友は師匠の後悔を知っていました。
立派な職とは呼べず、褒めてもらったのが嬉しくて世間に流通、沙慈をいじめの標的にしてしまっています。
故に彼は沙慈に最後の催眠をかけ、ドスケベ催眠術師の地位向上を図ろうとしていました。
その一環で宗教団体で祀られていた真友を救出し、催眠の才能を好意的に発揮できるように暗示をかけています。
師匠が死ぬまで、そして2代目となった真友が人助けを続ける理由は単純です。
いつか父親を、何よりも沙慈自身を許せるように成長してもらうため。
真友はその根拠づくりに励み、ドスケベ催眠術師の正の側面を見せるため協力を持ちかけたのでした。
ドスケベ催眠四十八手
ドスケベ催眠四十八手は初代が自身の催眠技法を48の型に落とし込んだものです。
金縛りにするような単純なものから、性癖の解放、常識変換など（解除条件を設定しておけば）とにかく都合の良い技となっています。
きちんと2代目にも受け継がれており、穴あきコインの髪飾りを弾くことをトリガーに、作中でいくつかの技が披露されていました。
- 夢幻狂気……あられもない常識を植え付ける催眠術。“狂乱全裸祭”を引き起こしドスケベ催眠術師の子を炙り出した。
- 透明認減……読み方の通り、周囲から認識されなくなる催眠術。師匠はこれで女子風呂に入ろうとして（監視カメラに映るため）失敗した。
- 伝導剣舞……手から発する振動によって相手に簡単な動作をさせる催眠術。鍵を掛けられた扉を開けてもらうために使用。
- 童貞卒業……対象に直前の発言を守らせる責任感を与える催眠術。役者（）の演技力を増すために支障はよく使っていた。本編では依頼主に自信を持たせるため、健全な使用方法が図られている。
- 担々淡々……名前通り感情の起伏を押さえる催眠術。意味わからない言葉を理解してもらうのにも使える。
- 懐古回顧……昔の感情を思い出させる催眠術。依頼された漫画家のやる気改善に使用された。
- 可憐経転……内容不明。とりあえずセックスレスの改善には役立つらしい。
- 白紙塗料……対象の記憶を忘れさせる催眠術。
- 直立腐道……動けなくする催眠術。
- 虚乳力学……対象の平衡感覚を失わせる催眠術。椅子に座れない程ガタガタになる攻撃技。
過剰なまでの合理主義
ドスケベ催眠四十八手の根本的な弱点は、対象者以外に効果がないことです。
監視カメラの件は伏線であり、外部や機械からは”狂乱全裸祭”を異常事態と捉えられてしまいます。
ドスケベ催眠術師の都市伝説ができている中誰が怪しまれるか、答えは明確でした。
なぜだろう。
俺は真実を知っていて、真実を語っている。
合理的で、正しいのは俺だ。
何も間違っていない。間違えていない。
なのに、どうして俺への悪意で空気が淀んでしまうのだろうか。
4章 サジの一人戦争
- どうして催眠で嘘の自白をさせるのか
- 蛙の子は蛙にしかなれないのか
- どうして催眠術で鎮静化しようとしないのか
かつてのようにならないため、いくら合理的な理由を述べても、勝手に理論を作られて糾弾は止みません。
かつて助けた人たちによって事態が収束するまで、沙慈は犯人扱いとして煙たがられる存在であり続けました。
本作≠コメディ
4章は真友が記憶を取り戻し、催眠術にトラウマを覚え直したことがきっかけでした。
真友に自白を迫った要因も、庇う術がなくなったという合理的な考えによるものです。
沙慈の非難と沙慈へのいじめへのリアリティの高さが、本作をコメディ作品と言いづらい理由にもなっています。
この状態からハッピーエンドに持っていくには、催眠術という埒外の手段を持ってくるしかありません。
復活させるため沙慈は自分のルーツを探り、掛けられた催眠術の内容と解き方を掴み取るのでした。
「そういうのを判断する段階に、俺は至っていない」
望む答えを言ってやることはできる。
友達とか、バディとか、協力相手とか。
でも、それは言葉をなぞるだけにしかならない。
なぜなら、俺が真友のことをよく知らないから。
これまで損得や合理性でしか人を見てこなかったツケだ。
5章 かけぬけ★催眠スパーキング！ 『結局、サジは私（真友）のことをどう思っているの？』に対する回答
合理主義者としての大枠は変わらなくとも、真友に感謝を述べることができた。
心を支えていた催眠から解放され、沙慈は一歩成長したように考えています。
『ドスケベ催眠術師の子』まとめ：周りに避けられようとも
真友は転校当初の奇行と流布されたドスケベ催眠術師の実態によって周囲から畏怖軽蔑される存在になりました。
冤罪だった沙慈も罪悪感と近くに真友がいることから誰も近寄ってきません。
唯一の例外が真友と仲良くしたくてドスケベ催眠術師に相談した元幼馴染だけで、ハッピーエンドと言える雰囲気ではないでしょう。
「構わない。言ったはず、知られても何の問題もない、立派な職業だと。借りに最初は植え付けられたものだったかもしれないけど、今はもう私の意志だ。私は今でも、最高のドスケベ催眠術師になりたい」
エピローグ ドスケベ催眠術師の子
最初は心の傷を軽減するためにかけられたドスケベ催眠四十八手から始まりました。
催眠術が解けても沙慈は合理的に過ごしており、真友はドスケベ催眠術師の師匠を超えることを誓っています。
引用した言葉が長年刻まれたものの重さを感じさせました。
桂嶋エイダ・浜弓場双『ドスケベ催眠術師の子』は親の負債によって虐げられるようになり過去を隠した主人公が、二代目の登場によって過去の謎が晒されていくストーリーです。
本作は名前の通り催眠術が話の中心に出てきますが、エロ展開は最初の部分しかありません。
実態は親によって虐げられた過去を持つ少年たちが、催眠術によって新たな性格を獲得していったヒューマンドラマです。
エロを求める人よりも、トラウマからの自立を見たい人へ本作をおすすめします。
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