【感想まとめ】魔法使いの引っ越し屋 勇者の隠居・龍の旅立ち・魔法図書館の移転、どんな依頼でもお任せください

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引っ越しに別れは付き物。

でも、だからといって――誰かが傷つく必要はないのだ。

二章 神獣のお引っ越し

坂石遊作・いちかわはる『魔法使いの引っ越し屋 勇者の隠居・龍の旅立ち・魔法図書館の移転、どんな依頼でもお任せください』は自分の天職を見出した少女が、才能を十二分に使って依頼者の願いを叶えていくお仕事ストーリーです。

使い魔は物を収納できるミミック、ミミックと共生関係のドラゴンに乗って空を飛び、ときには魔導書や建物ごとの移転を請け負う。

人によっては無駄遣いだと言われる規格外の魔力を、少女は楽しそうに振舞っていました。

本作は日常的な魔法の使い方によって救われていく人々を描いています。

戦いだけに囚われない魔法の使い方や、オムニバス形式で救われていくストーリーが好きな人におすすめします。

4章中2章まではカクヨムにて公開されています。

目次

魔法使いの引っ越し屋 小説情報

あらすじ

王国一の魔法使いが紡ぐ出会いと別れ、とある日常の1ページ。

 王都の片隅で小さな引っ越し屋を営む少女ソフィは、王国一の天才と謳われる魔法使い。どんな荷物も難なく運ぶ彼女のもとには、今日も特別な客からの依頼が舞い込んでくる。

 ある日やってきたのは、こっそり隠居したいという「老いた勇者」。お屋敷いっぱいの家具や宝物はミミックに収納して運び、呪われた魔剣もきっちり封印。更には、引き留める人たちとのこじれた縁も綺麗にほどいてみせて――?

 剣と魔法の世界で紡がれる、出会いと別れのファンタジー。

【12/8発売】魔法使いの引っ越し屋 ~勇者の隠居・龍の旅立ち・魔法図書館の移転、どんな依頼でもお任せください~

主要登場人物

ソフィ=イザリア

『時代の魔法使い』の称号を持つ当代屈指の魔導士。

使い魔のミミックと共に何でも運べる引っ越し屋を営んでいる。

かつてエルフから魔法使いの引っ越し屋に預けられた過去を持ち、店を継承するため学園に通った。

フランシェスカ=シルファリーオ

学生時代ソフィと同級生だった宮廷魔術師。

彼女の実力を認めており、今でもソフィを追い越そうと切磋琢磨している。

ドリルのような髪型が特徴的。

ロイド=エクステラ

50年前に魔王を倒した勇者。

肉体的にはともかく精神的な衰えから引退を決意し、ソフィに辺境への引っ越し依頼をする。

実は魔王を倒すより前の記憶がない。

魔法使いの引っ越し屋 ストーリーPickup

以下ネタバレ注意です。

本作に登場する魔法一覧

本作の魔法はソフィのスタンスから、戦闘用の魔法よりも日常的に便利な魔法が充実しています。

  • 変身魔法……材質も形状も自由に変えられる。作中では箱が馬に変身した。
  • 筆記魔法……頭の中で考えた文章をそのまま紙に書いてくれる。
  • 耐性魔法……自分の周辺にベールをまとい、外からの毒を防ぐ
  • 本から飛んでくる魔法……読みたいと思った内容の本から自分の周りに飛んでくる。失われた魔法
  • 憧憬魔法……かつての景色を映し出す。造形魔法と組み合わせることで理想の景色を再現できる

過去の自分に報いたい

勇者ロイドは50年もの間憧れであり続け、加護によって若々しい姿を維持していました。

しかし、ロイドは覚えていない故郷と親族に思いを馳せており、ソフィへ故郷への引っ越しを依頼します。

一方でロイドの伝説は民の基準であり続け、書籍にもなっている現代の偉人です。

特にロイド伝説の功績によって昇進した大臣、ロイドを目標として鍛え上げてきた隊長、そんな人たちにとっては引退して欲しくありません。

ソフィは引っ越し屋として彼らの妨害の原因を突き止め、ロイドの鎖を解き放つ道を選びました。

主要人物の自己意識の低さが浮き彫りとなったストーリーで、わだかまりは後編によって晴らされる構成となっています。

再会の誓いによる癒し

砂漠化や火災によって劣化した土地を回復させる役目を持つ神獣、それがフランシェスカら経由で依頼されたソフィの引っ越し対象でした。

2章は戦闘系の魔法が見られる唯一の章で、神獣の分身6体との戦闘シーンが繰り広げられます。

一方で神獣に育てられた少年を人間の世界に帰す作業も、神獣によって求められました。

互いに寂しさを感じていても、一緒にいれば少年の命を奪ってしまう

本章は魔法使いの先輩として、義親に拾われた先達として、ソフィが少年を導いていく物語です。

共に過ごした日々に意味を

300年前から続く魔法図書館の引っ越しは、ソフィが取り掛かる一大プロジェクトになりました。

特に本から読者に近づいてくる魔法は術理が遺されておらず、長命種の開発者ミーリは事故で亡くなっています。

昔からお世話になっていたソフィにとって魔法の喪失は唯ならないものでした。

少女が取った手段は開発者の全てを模倣することです。

自分の生活を変えてまで開発者の夫と居住し、性格を変えてハイテンションな態度を試してみました。

「ええ、呼びましたよ? だって私と貴女の仲じゃないですか!」

 あはは! とキラキラに輝く笑顔を見せるソフィに、フランシェスカは自分の頬を抓った。

「こ、これは、夢……? わたくしがいつも妄想している夢の世界……?」

「なんてものを妄想してるんですか貴女は」

三章 王立魔法図書館のお引っ越し

種族が違って子供を残せないけれど……開発者らの愛情が感じられたエピソードです。

まとめ:かつての景色を映して

 人生の中には山ほどの出会いと別れがある。最初はだれもがそれを恐れ、惜しむ。しかしやがて誰もが決意と共に前へ進もうとする。

 ソフィはそれを知っていた。だから、勇者だけが悲観する現状は「違う」と思った。

四章 勇者のお引っ越し・後編

ソフィは誰も悲しまない、前に進める引っ越しを目指しています。

勇者の里帰りを支援し、少年に再会の知恵を授け、失われた愛情由来の魔法を取り戻す。

そんな少女にとって勇者の後悔は望まないものでした。

かつての桜を映し出した魔術と一緒でも対照的な、勇者へ届けられた50年前の手掛かりを必死に探すソフィが印象に残りました

坂石遊作・いちかわはる『魔法使いの引っ越し屋 勇者の隠居・龍の旅立ち・魔法図書館の移転、どんな依頼でもお任せください』は自分の天職を見出した少女が、才能を十二分に使って依頼者の願いを叶えていくお仕事ストーリーです。

本作は日常的な魔法の使い方によって救われていく人々を描いています。

戦いだけに囚われない魔法の使い方や、オムニバス形式で救われていくストーリーが好きな人におすすめします。

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