【VTuberのエンディング、買い取ります。 感想】Vの遺物を追い求め、Vを燃やす

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人生を賭けるほど推していたVTuberが炎上で蒸発した。

朝依 しると/Tiv 『VTuberのエンディング、買い取ります。』は炎上を促進するブログを運営するほど闇堕ちした主人公苅部かるべ業が荒羅斗カザンとして、誰かを探し求めるヒューマンドラマです。

本作は炎上によってVTuberを終わらせるという珍しい箇所に焦点を当てています。

VTuberを辞めたいヒロインを登場させることで主人公に正義の役割を持たせた点、主人公の目的を最後まで隠しカタルシスを演出した点が見事でした。

VTuberへ思い入れの深い人、普通の人が人生を捧げて求めるものに憧れる人へおすすめのライトノベルです。

目次

『VTuberのエンディング、買い取ります。』小説情報

あらすじ

VTuberアイドルグループ『星ヶ丘ハイスクール』所属の
VTuber――夢叶乃亜。

彼女を推すことに青春の全てを捧げ、V界隈でも名を馳せていた高校生の苅部業は、乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上したことで人生が一変する。
「おれはあの夜に死んだ……」
運営から推しの臨終を告げられ絶望した業は、高校を休学し一年後VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしていた。
そんな業の元に『自分のVTuberを炎上させてほしい』という依頼を持ち込む美少女、小鴉海那が現れ――。
「これは人助け……いえ、VTuber助けみたいなものです」
『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語。

VTuberのエンディング、買い取ります。
朝依しると/ファンタジア文庫

主要登場人物

()内はVTuberとしての名義です

苅部かるべ

通称:カルゴ 夢叶乃亜というVTuberの熱狂的ファン。周りを巻き込むタイプのオタクで、海外にファングッズを手間賃なしで送付したりイベントの主催をしたりしていた。 

ノアの方舟の事件以降、荒羅斗カザン名義で【燃えよ、ぶい!】という炎上まとめのブログを運営している。収益で家賃を賄っており、学校には通っていない。

小鴉海那(鏡モア)

通称:ミーナ 金髪碧眼(母親がイングランド人のミックスドレース)の女子高校生。アイコンが漆黒のカラスで業には強面のおっさんだと思われていた。

空白の1年間でVTuberになったが、プロデューサーに恵まれなかった。

霧谷彩音(彩小路ねいこ)

海那の高校の友達。海那がVTuberになっていたことに気付いていた。

政治に関する発言から炎上してしまう。しかし、本人は炎上による登録者増加を好意的に受け入れていた。

※今回、彼女の救われ方と顛末についてはPickup数の都合で触れません

鍵尾菜子(六翼なこる)

昨年の春に大学を卒業し、就職先で長続きしなかった社会人。

大学のときに必死だったバンド活動を思い出し、表現する方法としてVTuberを選んだ。

ネクロ万酢

カルゴと並んで有名なノア友。

同担拒否勢の筆頭で、自分を認めてくれた乃亜を追い求めている。

『VTuberのエンディング、買い取ります。』ストーリーPickup

以下ネタバレが含まれます。

燃えたノアの方舟

業や海那が推していた乃亜は天真爛漫なトークと力強い歌唱力が魅力的なVTuberでした。

登録者数も30万人に近づき、アマチュアの中では屈指の値です。彼女のファーストシングル【Ark!】はノアの方舟にかけられています。

東京の晩夏、池袋でファーストソロライブが開かれ……その日の内に炎上を起こしました

乃亜の犯行は裏垢の痴態です。

  • リアルでボーカル活動をしていた時のプロフィール公開
  • 鍵のかかっていないサブアカウントの暴露
  • ファンが恋人と謳っていたにもかかわらず、彼氏への愚痴をこぼす
  • 下ネタの数々やパパ活を匂わせる発言
  • アイドルオタクに対する偏見と誹謗中傷

それでも業は諦めずファンに呼びかけ、運営にも活動の有無を直訴しました。

トップファン層であっても想いが報われず、しかし勝手に消えてしまった乃亜を探したい。手がかりを求める作業とVTuberへの冷めた想いが炎上系ブログ『燃えよ、ぶい!』を生み出しました

終わらせてほしいVTuber

VTuber鏡モア(海那)は自分を終わらせたいVTuberでした。

著名なイラストレーターを父に持ち、登録者数もある程度確保できています。しかし、父親のセクハラが酷く手掛かりを求めて業の元を訪れました。

業は最初無断進入してきた海那に怪訝な反応をしています。しかし、元来のお人好しな素質と『推しに相応しい死に様を捧げられるのではないか』という打算から仕事をすると決めました。

業はVTuberを燃やす専門家であり、海那の証拠とセクハラの告発だけでは大して燃えないと知っていました。だから手段を変えて、海外の元ノア友に協力を仰いでいます

全てが終わった引退日。海那に器を捨てる覚悟が足りていませんでした。

海那はよろよろと立ち上がり、震える手で業の服の丈をつまんで泣き続ける。

業はそんな海那の腕を握り、ぐっと引き寄せ、怒気を込めて言った。

「いいか。なにかを成し遂げたいなら、その手でしっかり掴め。そんな細い指先で誰かを守れると思うな。わかったか」

Case.1―方舟へみちびく女― より

この章はシリーズ全体の目的を示すと同時に、1巻の結末への伏線を張る箇所となっていました。

魂の中身を探って

乃亜の魂を追っていたのは業だけではありません。遺されたノア友は近いVTuberを探し、六翼なこるへ辿り着きました。

なこるは『絶滅した天使の残留思念がバーチャル界に転生して配信活動をしている』という設定で活動しています。

ミュージシャンであり、異様に声が似ているジェネリック乃亜というあだ名まで付けられ、配信中でも魂を聞くという禁忌に手を出すものもいました。

彼女の中身は鍵尾菜子という社会人です。ストーカー被害に遭っていても会社側は「盛り上がっているならば良し」という判断で、乃亜のように振舞うべきか悩んでいました。

最も乃亜に詳しい人に聞いて調整する。業に連絡を取ったとき、菜子はまだVTuberの個を確立していませんでした。

過去の遺物をぶち壊す

乃亜の影を追って1年間、大量のVTuberを業は見てきました。しかし、乃亜がどこにもいないと理解し自らの終わらせ方を模索します。

彼が選んだ最期は鍵尾菜子のストーカーであり、なこるの配信の迷惑者であったネクロ万酢との公開処刑でした。

注目される舞台で彼を特定し、乃亜を貶めた特定厨へ個人情報を流し込む。そしてネクロ万酢をストーカーしていた運営者もろとも『燃えよ、ぶい!』を消し去る。

舞台はクラウドファンディングで映像をビル街で流す方法を取りました。かつてネクロ万酢が詐欺を働いた分難易度が上がりましたが、ブログからの収入を投げうって前代未聞のステージを作り出します。

VTuber未満の女性へ個性を見せてVTuber六翼なこるに仕立て上げ、過去の亡霊である自分たちは同時に滅ぶ。

特定厨から始まりVTuberの終わらせ方を変えようと取り組んだ業にとって、実に皮肉で綺麗な終わらせ方でした

……そんな終わり方を許さない少女を見逃していなければ。

『VTuberのエンディング、買い取ります。』まとめ:新人Vと歩むリスタート

「そう、わたしというVTuberが生まれる記念日。カルゴさんが破滅する日でも、なこえるをお祝いする日でもなく――新人VTuber『水闇ガーネット』がデビューする日です」

海那の声は震えていた。

池袋駅前の雑踏の中で懸命に何かをしようとしている。

Case.3 ―天使のはしご― より引用

海那は近づき、無理やり業にサイリウムを掴ませる。

赤は乃亜のカラーだったはずだ。

「それはガーネットのサイリウムカラーです。ガーネットは大洪水の日、ノアの方舟が迷わないように希望の光を照らした深紅の宝石。その光で、わたしが全部上書きします。カルゴさんがつらかったこと、苦しかったこと、怖かったことも全部、深紅の光で炎の色を塗りつぶします。――最後になんてさせませんから!

Case.3 ―天使のはしご― より引用

全ては池袋で始まりました。一年前はノアの方舟のコンサートと炎上を知った場所。今年はなこるをVTuberに仕立て上げ2人目の推しと出会えた場所。

無謀でVTuberらしからぬ海那の行動が、薄らと燃えていた炎を上書きした記念日を作り上げました

朝依 しると/Tiv 『VTuberのエンディング、買い取ります。』は炎上を促進するブログを運営するほど闇堕ちした主人公苅部かるべ業が荒羅斗カザンとして、誰かを探し求めるヒューマンドラマです。

本作は炎上によってVTuberを終わらせるという珍しい箇所に焦点を当てています。

VTuberを辞めたいヒロインを登場させることで主人公に正義の役割を持たせた点、主人公の目的を最後まで隠しカタルシスを演出した点が見事でした。

VTuberへ思い入れの深い人、普通の人が人生を捧げて求めるものに憧れる人へおすすめのライトノベルです。

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