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アニメ『ライアー・ライアー3話』の謎解きとキャラクター分析:想定外の筋道
本シリーズはライトノベル出身のアニメ『ライアー・ライアー』にて、削られた部分を補足しつつ感想を書いていく記事群です。
前回は第2話「忠義と演技」について7点補足しつつ感想を書いていきました。第3回となる今回は第3話「互角と覚悟」を中心にみていきます。
目次
『ライアー・ライアー』のあらすじ
学生同士がランクを決めるゲームを繰り広げる学園島。篠原緋呂斗は国内最難関の学園島編入試験で歴代トップの成績を叩き出し、昨年度の絶対王者・彩園寺更紗を転校初日で陥落させた。結果学園島史上最速で頂点に1人だけ君臨する7ツ星に成り上がった。
そんなものは全て嘘だ。大切な人に会うために外部からやってきただけの一般人で、本当の星はたった1つしかない。しかし、学園島に残るためには嘘でもトップにいなければならない。姫路白雪のイカサマも、偽物だった彩園寺更紗との共犯関係だって活用する。
じゃあ、世界を騙す嘘を始めよう。
ライアー・ライアー3話「互角と覚悟」の展開と7つの補足
アニメで描写されていなかった背景、疑問視される展開を補足していく項目です。
この項目内の挿絵は全て、©2023 久追遥希/KADOKAWA/ライアー・ライアー製作委員会のものを使用しています。また彩園寺更紗(朱羽莉奈)については、アニメ化する範囲で本物の彩園寺更紗は登場しないため、彩園寺表記で統一します。
なぜ彩園寺が敷地内でも変装を解かなかったか
彩園寺は顔を覆うパーカーを身に付けて集合場所にやってきました。アニメでは無条件に踏み入っているようにみえますが、原作では1つの質問が為されています。
イカサマチーム《カンパニー》は信頼を置けるのか。彩園寺視点だと黒い組織でしかなく、一方的に信頼できるはずがないのです。つまり、事前に顔を明かさないことを妥協の条件にしていたからです。
「えっと、確か――『ご主人様、彩園寺更紗様と連絡は取れますか? もし可能なのであれば、明日この家に連れて来てください、他のメンバーは下がらせますので』って」
『第四章 無茶と無謀と無鉄砲』より
篠原も彩園寺を信じさせる術がありません。とはいえ流石は補佐チーム。待ち合わせ場所から服装、会場までの経路など全てをカバーしていました。
5つ星の久我崎晴嵐の端末情報を合法的に抜くためには、6つ星以上の協力者が必要です。また彼の《決闘》情報を一番知っているのは、間違いなく彩園寺でした。
そんな経緯から、《カンパニー》のリーダー姫路白雪によって、因縁の再会が果たされることになります。
我流二十七式遊戯
名前は仰々しいですが、我流二十七式遊戯はトランプの戦争をモチーフとしたゲームです。
前半の探索フェイズでは、『0』~『19』の計20枚を2人で取り合いすることになります。アビリティを使っていない場合、スタート時点で5枚、その後5分ごとにランダムな1枚が開示される仕組みです。
後半の開示フェイズは、手持ちのカード5枚の中から好きなカードを選び、大きい数字を出した側が1勝を挙げます。全5戦なので3勝すれば決闘に勝利です。
アニメでは飛ばされていましたが、開示フェイズにはもう1つ終了条件があります。両プレイヤーの手札が尽きた場合、何戦目であっても強制的に終わり勝者が決定するのです。アビリティを乱用しない限り起こらない状態ではあります、普通は。
だから原作では『最低三勝しなければならない』の発言に傍点が付けられていました。
篠原が決闘に持って行ったアビリティ
篠原が持って行ったアビリティは《表示バグ》、《幸運》、《数値管理》の3つです。このうち説明が必要なのは1つ目の《表示バグ》なのですが、何故がアニメではカットされていました。
《表示バグ》は高レベルだとカードの数字を誤認させる、滅茶苦茶な座標を表示するといった攻撃系(幻覚)のアビリティです。しかし篠原は1つ星です。『数文字書き換えるのが関の山』だと姫路も述べています。
姫路は座標を書き換えるプランを立てていましたが、他にも変えられる場所は幾つかあります。例えば……ルールブックを書き換えたら、そして改ざんされたデータを信じ込ませることができたらどうなるでしょうか。
また《表示バグ》は汎用アビリティです。複数回用いることも可能で、開示フェイズにも使用できます。篠原はそれに気付いていて、表示バグの回数と範囲の拡大を姫路経由で加賀谷へ連絡していました……がアニメでは削られています。
一言にまとめると、アニメは大事な伏線を削りすぎです。
17のカードの位置がおかしい
貴方ならこのカードにどうやって端末を近づけますか? ただしこの場所は3階であり、地面は長い間雨風に晒されて腐食しているものとします。更に左側の手すりも原作と違ってありません。
自殺覚悟以外の解答を答えられる方、待っています。
篠原が彩園寺の嘘に納得した理由
本物の彩園寺更紗の所在地は本土の高校でした。朱羽莉奈が島中に誘拐されたと嘘を吐いて、本人にも『転校は彩園寺家の決定』だと騙しています。
彩園寺の告白へ腑に落ちた様子の篠原ですが、どうしてすぐに納得したのでしょうか。
「でも……親友が誘拐されたからって替え玉になって犯人が釣れるまで待つ? 馬鹿言え、お前がそんなタマかよ。こちとら事故だってのに初対面でいきなり《決闘》吹っかけられたんだぞ? もし本当に誘拐なんか起こってるなら、お前は全精力を費やしてでも自力で犯人を捕まえてるよ」
『最終章 嘘つきの”天才”』より引用
あの彩園寺の性格を考えたら、待っている方が不思議なくらいだからです。怒ると周りが見えなくなる。本来は前科が伏線として活きる場面です。姫路へ精神面の心配をされたときも、彩園寺は一時的なものだと答えていました。彩園寺(朱羽)は彩園寺の無事を知っていたから、平静に嘘を振舞うことができたのです。
親友関係2人の呼び名について。姫路⇒朱羽はリナ(呼び捨て)、朱羽⇒姫路はユキ(白雪から付けたあだ名)
この後数分経ってから姫路白雪はやってきます。ここで現れてしまったことが、姫路が転校する原因となりました。
ルールブレイカーの欠点
高ランクのアビリティはとんでもない性能が揃っています。6つ星以上限定のアビリティ《規約情報操作》は《決闘》のルールを覆すもの……に見えてそこまで優秀な代物ではありません。アニメ版で忘れられた重い欠点があります。
実はほんの数文字書き換えるだけで用量オーバーしてしまいます。ぱっと見の強さゆえに有名なのですが、使いにくさから使用率自体は高くありません。
しかし、実在することが篠原にとって重要なことでした。
- 可能性として《規約情報操作》の持ち込みがあり得ること
- 《規約情報操作》は有名であり、観客にとって想定内なこと
- 久我崎のアビリティ3つが全て明かされていること
- 篠原の3つ目のアビリティが未だ不明なこと
- 事前に加賀谷さんへ開示フェイズでの《表示バグ》利用ができるようアップデートしてもらっていたこと
- 《表示バグ》の範囲を端末から拡張するアップデートをする時間的余裕があったこと
全てが噛み合ったことでようやく勝ちの目が生まれました。
……アニメ版で描写されていないのが2つ混じっていることはさておきましょう。
久我崎がカードを5枚とも消した理由
アニメの描写通り単純な思考回路です。
- ルールが『どちらも』から『どちらかが』に改ざんされたため、カードを所持する意味を失った
- 久我崎は6つ星だった時代があり、《規約情報操作》の詳細を知っている
- 久我崎が篠原と再試合できるなら当然したいと考えている
- 《緊急動員》のアビリティで我流聖騎士団(300人以上)の力を借りれる分、汎用性は自分に分があると判断した
相手が持ち込んだアビリティへの対応を間違えた結果、久我崎は無残に負けたということです。収集フェイズで篠原サイドの戦術ミスを笑っていましたが、見事に跳ね返ってきました。
篠原の煽りスキルとポーカーフェイスの高さも活きており、1巻としては十分な見せ場であると考えています。……原作であれば。
まとめ:伏線の削り過ぎによるご都合主義
今回の記事のまとめです。
- 彩園寺のパーカーは謎の組織《カンパニー》を怪しんでのもの
- 我流二十七式遊戯はどちらかの手札が尽きた時点で終了し、必ず3勝する必要はない
- 《表示バグ》は相手の端末の文字を数文字いじったようにみせることができる
- 彩園寺の性格から本物の誘拐に黙っていたのはおかしい
- ルールブレイカーは万能どころか、使い勝手が悪い
- 久我崎の敗因はアビリティへの対応を誤ったこと
ライアー・ライアー 嘘つき転校生はイカサマチートちゃんとゲームを制するそうです。(1)
posted with ヨメレバ
久追 遥希/konomi(きのこのみ) KADOKAWA 2019年04月25日頃
アニメ3話「互角と覚悟」は原作1巻の第四章の中盤からエピローグまでとなっています。
もう一度だけ書かせてください。アニメ版は伏線の情報を削り過ぎです。
- 彩園寺を屋敷に呼んだ理由
- 『両プレイヤーの手札が尽きた場合、それまでの勝敗で勝者が決定する』という決闘の終了条件
- 《表示バグ》の効果範囲
- 開示フェイズで《表示バグ》を使えるよう、事前に調整したこと
- 彩園寺(朱羽)への篠原の理解度の高さ
- 《規約情報操作》の効果範囲および有名性
少なくともこれだけの情報を削ってしまっています。初見だと騙し合いというより、篠原のご都合主義にみえてしまうことでしょう。
3~4巻が1つのゲームになっているため3話/1巻構成になるのは致し方ありません。とはいえ、次はもう少し細かく描写してくれることを期待しています。
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