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【幼なじみが絶対に負けないラブコメ_感想】初恋の毒と恋の行方
二丸修一作「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」は恋愛感情の変化が激しいラブコメ小説です。誰を好きだと気付いて素直に動く。目まぐるしく変わる関係が特色となっています。
幼なじみは負けると言われる昨今、表紙のヒロイン志田黒羽は勝つことができるのか。
笑劇のオチに笑わされる作品でした。
読みどころ3選
- 初恋の人に見ていて欲しいという毒
- 誰かへの恋から始まる小さな企み
- 目まぐるしく変わる人物相関テトラアングル
- (しぐれうい先生のイラスト)
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二丸 修一/しぐれうい KADOKAWA 2019年06月08日頃
目次
小説情報
あらすじ
志田黒羽は陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きの文句なしの幼なじみである。でも俺は作家で学園のアイドルである、可知白草に恋してしまった。
俺にだけ笑顔で接してくれるのだから、脈があるのかもしれない。そんなとき白草に彼氏ができたと知ってしまった。
最高の復讐をしてあげようよ――失意に沈む俺へ黒羽がささやいた。
主要人物
丸 末晴
私立穂積野高校の2年生。高校1年生の冬に白草と会話し、初恋に落ちた。生徒会主催のイベント『告白祭』で告白する予定。
隠している才能と経歴があるが、他の主要人物は全員知っている。
可知 白草
クールな雰囲気の黒髪少女。高校1年生で小説家デビュー、3か月後に登竜門の芥見賞を受賞した。全国レベルの有名人で学園のアイドルとされる。初恋の人は小学生のときに会った有名人の少年。
男嫌いとして有名。しかし末晴には他の人と違った視線を向けている。
志田 黒羽
末晴のクラスメイトかつ隣の家に住んでいるという、典型的な幼なじみ。栗色のミディアムストレートヘア。148cmと低身長ながら面倒見のいい姉属性。初恋の人は末晴。
末晴から好意と尊敬の念を向けられていると気づいている。けれど、夏休み前に末晴に振られたことを根に持っている。
甲斐 哲彦
末晴の悪友でサークルメンバー。夏休み前に3股かけて総スカンをくらった後も、7股に成功したモテ男。所業の結果クラス内カーストは最底辺。初恋は無断に弾けた。
女は男を騙す生物だと考えている。
阿部 充
俳優の父親を持ち、最近俳優デビューした先輩。演劇のレベルが低いことを自覚している。
とある願いを叶えるため、1週間前に白草と付き合った。
「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」ストーリーPickup
以下、ネタバレ注意です。
PHASE1 志田黒羽_最高の復讐への協力
志田黒羽は可知白草のことをよく思っていません。
幼なじみの末晴が失恋したことを知ると、黒羽は復讐を提案しました。最初は末晴も渋ります。そこへ恋人する白草たちを思い浮かべさせ、末晴自身に復讐を宣言させました。
黒羽は白草のことをよく思っていませんでした。幼馴染の末晴が失恋したことを知ると、すかさず復讐を提案します。渋る末晴へイチャイチャする白草たちを思い浮かべさせ、自分から復讐を宣言させる徹底ぶりです。
白草のお相手は俳優で先輩である充。一筋縄でいく相手ではありません。
- クラスメイトに聞いても良いところしかでてこない
- 非合法に弱みを握っても悪印象が返ってくる
- 何より虚しさしか残らない
偽物の恋人関係になって白草を嫉妬させる。黒羽が発案する最高の復讐でした。
黒羽は2か月前に末晴に告白して振られています。黒羽案には、彼女の想いが多分に含まれているように思えます。
疑わずに末晴が乗ってきた辺りに、直情的な青春を覚えました。
PHASE2 阿部充_天才子役の影を追いかけて
阿部充にとって丸末晴は越えたい壁です。
末晴は視聴率30%超えを叩き出した”天才子役”で、父に継いで俳優を志すきっかけとなった人物でした。人気の絶頂の最中、6年前に雲隠れしています。高校3年生になった今でも、末晴に演技の腕で勝てると思えませんでした。
末晴はいつ舞台に戻ってくるか分かりません。ならばどう末晴に勝てばいいのでしょうか。
うん、そうなんだ。僕が白草ちゃんと付き合おうと思ったのは、単純に君に屈辱を味合わせたいがため――そういう側面は大きいな。
『[その二]初恋だからしょうがない』
相手の初恋の人物を大々的に奪ってしまえば勝てる。黒羽と同じ発想でした。
勝負する場として告白祭を選び、タイムリミットを出してあおる。末晴が壁を思い切り殴りつけるほど、充の演技は本音に聞こえました。
真の目的を達成するため、充は全力で踊りの練習を重ねます。行く先が見えてさぞかし良い表情をしていたと思わされました。
PHASE3 可知白草_突然会えなくなった君
可知白草は人生観を変えた初恋を隠していました。
昔の白草は不器用で引っ込み思案でした。毎週楽しみにしていたドラマから、同年代の主人公の成長に心惹かれていきます。彼女にとって父親がドラマのスポンサー企業の社長なことは救いでした。
父親を通して主人公役の俳優、スーちゃんと出会うことができました。何度も招待して遊ぶ日々の末、少女は初めての夢を描きました。
『わたしが物語を書いて、スーちゃんに主役をやって欲しい』
伝説級の人気俳優となった少年と会う機会は減っていきます。そして6年前、彼は芸能界から姿を消しました。どうして帰って来てくれないのか。白草はやがて1つの復讐を思いつきました。
最高の女になって、少年に離れたことを後悔させる。
末晴、充、白草。同じような発想をする人たちが3人揃いました。
PHASE4 丸末晴_2人が求めていた舞台の先で
末晴は初恋を取るか、隣にいてくれた幼なじみを取るか悩んでいました。
末晴は告白祭の勝負に向けて特訓を重ねていました。トラウマから踊れなくなっていたこと、6年間のギャップで体力が落ちていたこと。課題だらけの中でも、隣には哲彦と黒羽がいてくれました。
哲彦は黒羽の恋心を応援していました。そっちの方が面白そうだから。直感を信じて、黒羽の思惑をアシストしています。
充たちの思惑に乗って勝ち、思いの限りを伝える。
初恋を奪われた復讐心か、幼い頃の思い出か、隣にいてくれた相棒か。コメディ調の作品の中、唯一の緊迫した場面でした。
まとめ:幼なじみは絶対に負けない
- とある少年は『憧れの天才子役が舞台から逃げた』ことへ嫉妬して、勝負の舞台を整えた
- 元天才子役は『初恋の少女が嫌いな男と付き合う』ことへ怒りを覚え、復讐を決意した
- とある少女は『大切な少年が約束を破った』ことから寂しさを感じ、後悔させると奮起した
二度あることは三度ある。初恋故に復讐を志した3人が相対したとき、4人目の黒羽はどう感じていたのでしょうか。
『幼なじみが絶対に負けない』というタイトルをどう回収するか、黒羽の行動に注目が集まります。
「――クロ! 好きなんだ! 俺と付き合ってくれ!」
黒羽は今まで見たことのないような満面の笑みを浮かべると、マイクに向かってはっきりと告げた。
「――――ヤダ」
『[その四]我、初恋復讐完了す』
初恋の毒はテトラアングルを回って、主人公へ帰っていきました。
二丸修一作「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」は目まぐるしく相関関係が変わっていくラブコメ小説です。
白草から末晴へ、黒羽から末晴へ、末晴から黒羽へ。どの想いも本物で、素直なまでに爆発しました。一番の勝者は『憧れの人と勝負する』という望みを果たした充でしょう。
『勝つ』ではなく『負けない』。確かにタイトル通りだと笑わせてもらいました。
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二丸 修一/しぐれうい KADOKAWA 2019年06月08日頃
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