【千歳くんはラムネ瓶のなか 感想】 千歳朔の魅力と2人の対比

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裕夢、raemzによる「千歳くんはラムネ瓶のなか」の紹介・感想記事です。トップカーストのリア充千歳朔が自らの威信のため、不登校児をリア充化させる第一歩を踏ませるヒューマンドラマとなっています。清々しい程にバカ正直に課題を解決していった主人公が特色です。

ライトノベルの賞の1つ、『このライトノベルがすごい!』において絶大な人気を誇っています。ユーザー人気の高さから1位(2021, 2022)、2位(2023)を授賞し、通算5作目タイの殿堂入りに輝きました。鳴り物入りで今更なところもありますが、千歳朔と山崎健太に着目してみていきます。

  • 千歳朔の魅力的なバカ正直さ
  • 山崎健太が踏むリア充街道の第一歩
  • 秀逸なタイトルの由来
目次

小説情報

あらすじ

主人公は、超絶リア充。
『五組の千歳朔はヤリチン糞野郎』

学校裏サイトで叩かれながらも、藤志高校のトップカーストに君臨するリア充・千歳朔。
彼のまわりには、外見も中身も優れた友人たちがいつも集まっている。

圧倒的姫オーラの正妻ポジション・柊夕湖。
努力型の後天的リア充・内田優空。
バスケ部エースの元気娘・青海陽……。

仲間たちと楽しく新クラスをスタートさせたのも束の間、朔はとある引きこもり生徒の更生を頼まれる。
これは、彼のリア充ハーレム物語か、それとも――?

千歳くんはラムネ瓶のなか|書籍|小学館

主要人物

千歳朔

学年トップカーストに君臨する高校2年生。リア充集団、通称千歳組のトップを務め、裏掲示板からは『ヤリチン糞野郎』と呼ばれている。

彼の神髄はバカ正直であること。わざわざ学級委員長を務め、自分を勘定に入れず相手にとって最善策で改善を図る。要領の良い方法を知っているくせに、敢えて不器用であり続けた。彼の魅力の高さは、このラノ男性部門2位なことからも伺える。

山崎健太

千歳組のクラスメイトで、教師からの依頼で千歳が学校に来させようとした青年。

典型的なライトノベルオタクで、美少女フィギュアもたくさん持っている。昨年末からの不登校の原因は、オタサーの姫たちにけちょんけちょんにいじられたという同情的な代物。千歳によって生活態度などの改善を命じられ、著しい変化を遂げる。

千歳くんはラムネ瓶のなか_ストーリーPickup

以下ネタバレ注意です。

序章の問題点

主要人物2人の対比が1巻最大の魅力だと考えています。千歳朔は非現実的な理想を追い求めたキャラクターで、リア充に反して山崎にとっての最善策ばかりを取りました。山崎健太は現実的で閉じこもった性格のキャラクターで、偏見に反してきつい努力を欠かさず第一歩を成し遂げました。

問題は第1章です。いっその事最初の3割ほどを投げ捨てていいとまで断定します。

  • 蔑称に違わないくらい女子へ手を出している
  • 自己紹介のギャグがつまらない
  • 二人乗りをしたい欲望と言い訳
  • 勝手に来て最低限の礼儀で顔を出せと強要 ※ヒロインの1人
  • 中学時代の相棒バットで窓ガラスを破壊

主人公たちの感性が分かっていない中で、これらの描写は不快感をつのらせます。事前に人気作だと分かっていなければレビューに星1を入れるレベルで、1巻のボスよりもボスしていました。

安心してください。千歳が窓ガラスを破壊したあたりから本作は面白くなります。

千歳朔_清々しいほどバカ正直な青年

千歳は不器用故に人気を勝ち得た人物です。中途半端な結末を嫌い、ハッピーエンドへひた進む。山崎を救う過程でも彼のスタンスは遺憾なく発揮されました。

最初に手掛けたのは興味関心への共感。山崎が矢継ぎ早に述べたライトノベル50冊以上をわずか1週間で読破します。次に現実の確認。三次元の少女の良さを共感させ、今の容姿を容赦なく叩き潰すことでモチベーションの方向性を定めました。3つ目に計画の遂行。夜遅くまで3週間の計画を考え、毎日片道16 kmを歩く。一歩を踏み出せるまで休日を犠牲にして指導し続けました。

作中でも指摘されていますが、もっと楽な方法は間違いなくあります。人を使うことを惜しまず、最善を尽くす。敢えて悪評を公開し、進んで犠牲になることを選びました。

千歳朔は年間何十冊と読んでいても滅多に出くわさないほどアクが強いキャラクターだと感じています。彼は非現実的な実力を曝け出し、憎たらしいほどバカ正直な行動原理を持っていました。(1巻の限り)印象の薄いヒロインたちと比べて、良くも悪くも印象に残る変態でした。

[補足] 千歳宅から山崎宅まで10 km、山崎宅から学校まで6 km

山崎健太_理想を諦めず成し遂げた青年

人が変わることは容易ではありません。特に生活に根付いた習性を変えることは困難です。

千歳は評価のため、山崎はリア充になるため。相互利用の関係を山崎は利用し続けました。食生活を整え、運動習慣を身に付け、容姿の拘りを取っ払い、SNSを切り離す。3週間継続させて、維持させることがどれだけ大変でしょうか。

隣に指導者が付いていて方針が見えていた点は成熟の大きな要因です。しかしそれだけで改善すればダイエット記事の乱立なぞ起こりません。戻らない、歩き続ける。自分を律せて留まらなかった故の成果でした。

アクの強い千歳と違って、山崎は王道的な人物です。現実的に努力して、小さな改善を積み重ねていく。時折弱音を吐いて失敗し、反省して踏み直す。想定読者にとって変化を想像しやすい人物設計が魅力的な要因だと考えています。

Q.相手が悪意に満ちたいじめをしてくるやつだったら

A.徹底的にぶっ潰せ

去年一緒にいたグループと再接触して理解する。それが朔から課された卒業試験でした。師匠の教えと元来の性格を掛け合わせた笑い者となった山崎が印象に残ります。

しかし相互理解は上手くいきません。むしろ嫉妬から逆上する始末。3対1で馬鹿にされて心が折れそうになります。千歳組以上の小悪党でもし退場しても笑えて済ませられる、と印象付ける決め文句を青年は遺しました。

『お前のLINEを見ながら迎える初めての夜は、死ぬほど燃えたぜ。五回は果てた。健太のおかげだよ』(p. 325)

山崎健太を支えたのは、何故か後ろで待機していた千歳たちでした。いつかの約束を守り、背中を守ってくれたのです。何気ない場面で出た上の一言が、終盤の伏線として機能していました。

この後6ページにわたって皮肉まみれの発言が届けられます。想定外に粘って地雷を踏むサークルと、人並みの怒りを見せる朔。有言実行した有様に、山崎は千歳の正体を察するのでした。

まとめ:千歳くんはラムネ瓶のなか

とある少年は人より出来ていました。完璧でいれば嫉妬され、敢えて失敗してみればより馬鹿にされる。いっそのこと届かないくらい高くあれば良いのではないか。孤高な場所を目指すと決意しました。

それは例えば、夜空で青く輝く月のように。
いつか本で読んだ、ふたの開かないラムネの底の瓶に沈んだビー玉みたいに。(p.137)

相互利用の関係になることを選んだ、千歳と山崎の相互理解の瞬間でした。

裕夢、raemzによる「千歳くんはラムネ瓶のなか」の紹介・感想記事です。清々しい程にバカ正直に在り続けた千歳朔と等身大のまま成長を遂げた山崎健太の対比に注目してみていきました。背景描写の不足による序章の問題を除けば、難しい表現がなく読みきりやすい作品でした。

個人的にはこのような方にオススメできると考えています。

  • セクハラな表現・描写に強い不快感を覚えない
  • 対照的な性格の師弟が努力して成長する様に惹かれる
  • かませ犬がざまあされるシーンが大好き
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