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【負けヒロインが多すぎる! 感想】終わらされた恋と第二ステージ
雨森たきび作、イラストいみぎむるによる著書「負けヒロインが多すぎる!」(通称マケイン)の感想・紹介記事です。恋の争いに負けたこととなったヒロインが恋愛感情なしで主人公に接近し、ぼっち至上主義の考え方を改めていきます。カップルの恋愛描写を省くが、マケインの失恋は発散してもくすぶる様子を映す描写が印象に残りました。
「負けヒロインが多すぎる」はライトノベルにしては大変珍しいことに、愛知県の東三河を舞台としています。あまりフォーカスされない地元の作品ということもあり、場所の紹介などを行う記事を別に執筆しています。
読みどころ3選
- 負けヒロインたちはなぜ負けたのか
- 一方的に救ってはならない関係
- 終わっていない恋心
片手に行く、観光調査記事はこちら
目次
「負けヒロインが多すぎる」小説情報
あらすじ
クラスの背景である俺――温水和彦は、あるとき人気女子・八奈見杏菜が男子に振られるのを目撃する。これをきっかけに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花など、負け感あふれる女子たちが現れて――?
負けてこそ輝く彼女たちに、幸いあれ。負けヒロイン――マケインたちに絡まれる謎の青春が、個々に幕を開ける!
主要人物
温水和彦
ツワブキ高校1年C組のぼっち。ぼっちに達観しており、学校中の水道の味を夏までに覚えきった猛者。趣味はライトノベルで大人買いをする派。
2つ下にパーフェクトな成績とブラコンを両立する妹・温水佳樹がいる。
八奈見杏菜
ゆるふわ可愛い系でクラスでも目立った存在で、たぶん本作のメインヒロイン。
袴田とは十二年来の幼馴染で、子供の頃に結婚を誓った仲だった。
袴田の恋愛物語のクライマックス、空港に行くきっかけを与え送り出したことで負けヒロインとなる。
「負けヒロインが多すぎる!」のキャラクター、八奈見杏菜の魅力とは
雨森たきび/いみぎむる「負けヒロインが多すぎる!」(通称マケイン)のキャラクターである、八奈見杏菜の魅力を紹介する記事です。 色々な負けヒロインが登場する本作...
袴田草介
八奈見杏菜の幼馴染で温水たちのクラスメート。
クラス内でも明るく目立った存在である。
転校生の姫宮華恋と熱烈な物語を繰り広げ一ヶ月でクライマックスに行ってしまった。
温水のことを高く評価しており、八奈見を託せる相手だと信じている。
焼塩檸檬
こんがり日焼けした体育会系少女、マケイン2号。杏菜たちとクラスメート。Dクラスの綾野光希に惚れていたが、塾で付き合った千早という少女の存在を知り振られる。
「負けヒロインが多すぎる!」のキャラクター、焼塩檸檬の魅力とは
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小鞠知花
不愛想な文芸少女、マケイン3号。文芸部の部長に惚れていたが、彼が夏合宿のさなかに副部長に告白し受理されたことによって、間近で振られた。
負けヒロインが多すぎる_ストーリーPickup
以下ネタバレを含みます。
やけ食いから始まった出会い
ライトノベル、特にラブコメディー作品にとってヒロインとの出会いは重要です。描写の1つや関係性の作り方は最後までの道筋になり得ます。
本作では表紙の少女、八奈見杏菜とどう出会ったでしょうか。ファミレスにて、幼馴染に発破をかけて送り出した後やけ食いしているところに出くわしました。一方的に愚痴って、財布の中身を忘れて食べ進める。初めて出来た2人の関係は、借金の貸し借りでした。
欠片ほどもないロマンチック、調子に乗りがちなヒロイン、強く拒絶しない主人公。比較的現実味のある設定が続きますが、本作はライトノベルです。弁当を作ってきてあげるから、査定金額だけ減らしていくという独自性の高い設定が始まりました。箸が通らないくらいに圧縮された飯、賞味期限不明なソースの使用……個性豊かなメニューで翻弄してくるヒロイン。屋上前の階段で繰り広げられているのも相まって、何とも言えない空間が出来上がっていました。
Q. 八奈見杏菜はどれだけ食べたのか?
ファミレスでやけ食いして主人公和彦へ借金をした杏菜。どれだけ食べたのかの検証というオマケです。
最初に舞台の豊橋にご当地ファミレスは無く、高校周辺のチェーン店を使用したと仮定します。当記事では豊橋東高校や豊橋中央高校などに相対的に近い、ガストを採用しました。
初日時点の貸付金残高は3,617円。ファミレスで食べたにしては中々の金額です。ここから、描写されている以下の代金(2022年12月時点)を引いていきます。
- ステーキ(草介)税込1,099~1,154
- スープセット+α(草介)税込440
- サラダ+スープ(杏菜) ※品目不明
- ハンバーグ(杏菜)税込659~714
- スープセット+α(杏菜)税込440
- デザート(杏菜) ※品目不明
- 山盛りポテトフライ(杏菜)税込439~494
分かっているだけで3,077~3,242円です。残り金額からして最初のサラダ+スープはミックスサラダ(s)+日替わりスープだと推測されます。
よくよく調べてみると和彦の前でやけ食いしていたポテトフライよりも、草介といるときの方が明確に食べていたのです。草介は杏菜の食欲を知っていて、かつ見て見ぬふりをしてあげていたことになります。
大き過ぎる杏菜の見栄と草介の感情の矛先のズレが伺える、そんなワンシーンでした。
無条件の賞賛
イケメンで明るく、仲良い美人の幼馴染(副部長)や後輩(知花)に好かれる学生小説家。代表作は『拾った奴隷少女の正体がSランク冒険者だったので俺はヒモになることにしました』文芸部部長の一言に本作は要約されます。
「ヒロインたちは主人公に心惹かれてはならない。世界の理として主人公をただ慕い、無条件に賞賛しなくてはならないんだ」
元々は和彦が制作したネット小説に対しての発言ですが、メタを含めるともう1つの意味が見えてきます。負けヒロインである限り必ず惹かれる相手がいて、誰かに奪われなければならない。人間関係の変化によって恋愛の矛先が和彦に向くことはあり得ず、逆に軽蔑して疎遠になることもない。
今後の話の展開を敢えて縛ることによって読者と契約を交わす、1つの関係性になっていると感じました。
大きなお世話
客観的に見て杏菜の恋は一区切りつきました。でも杏菜にとっては終わった恋じゃありません。
杏菜のためを思って関係を打ち切り、疎遠に戻した和彦。
杏菜のためを思って新しい関係を祝福し、自然とフェードアウトしようとした草介。
杏菜ののためを思って罪悪感に巻き込むことを否定し、草介へ見守るよう指摘した和彦。
杏菜は全てが大きなお世話だと一蹴しました。彼女の怒りと叫びはクライマックスに相応しい感情の揺れ動きとなっています。
まとめ:振られ人の世界
負けヒロインと出会い、失恋を見届け、失恋を振り切る少女を知る。ぼっち学生が新しい関係を築くまでの約3か月の出来事は幕を閉じました。「友達になってくれないか」と自ら切り開いた和彦は間違いなく成長しています。そして告白していないのに杏菜に振られ、無事に振られ仲間の称号を得るのでした。
雨森たきび作、イラストいみぎむるによる著書「負けヒロインが多すぎる」(通称マケイン)の感想・紹介記事でした。恋の争いに負けたこととなったヒロインが恋愛感情なしで主人公に接近し、ぼっち至上主義の考え方を改めていきます。カップルの恋愛描写を省くのに対し、マケインの失恋は発散しても燻るさまを記し切る描写の優先度が印象的に残りました。
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