【一次創作紹介】Vtuberにさせられました。

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身近な誰かと比べて私は劣っている。だから何をしても願いは叶わない。

身近な誰かは本気を出せば私を追い抜いてくれる。だから機会をプレゼントした。

本記事はilru様作「Vtuberにさせられました。」の紹介記事です。双子の姉妹が2人で1つのVtuberになったことをきっかけに、自分だちの思いのすれ違いに気づかされる物語です。相手のためを思って行動していても受け取ってくれないことにやきもきしている人にとって、どこか助けになるかもしれません。

小説データ

URL:https://syosetu.org/novel/218093/
作者:ilru
警告タグ:R-15, アンチ・ヘイト
話数(2021/12/10):15話 83,716文字
UA(2021/12/10):42,985

あらすじ

姉(陽菜)への劣等感で人見知りになった少女、奈倉月乃はVtuberのことを愛していた。ある日、陽菜の善意によってVtuberの面接に応募され、2人で1つのVtuberを演じることとなる。

「人見知りでぼっちだった彼女が、どのように人と絆を紡いでいくのか。」

主要登場人物

奈倉月乃

本作の語り部である16歳(高校二年生)の少女。二期生の六枚夏月ろくひらなつきの片割れ。

姉と比較した結果擦り切れてしまい、哲学思考にふけることが多くなった。そのため、配信中でもほとんど話さない。Vtuberのことが好きで、特にYu-Raがお気に入り。

奈倉陽菜

月乃の双子の姉で瓜二つの容姿。二期生の六枚夏月の片割れ。

妹のことをたいへん可愛がっており、成長の機会になることを願ってVtuberの案件を持ってきた。

八野葵

身長は150㎝以下、童顔のように見える、高校1年生の美少女。一人っ子。好奇心に底がなく、退屈な人生に色を添えようとVtuberになった。名は青野ハチと本名をもじっただけのもので、身バレすることを期待している。

和泉桂香

一期生のiZuMiという名で、主にゲーム配信を行っている。プロ並の腕前と関西弁で人気。

幽谷沙良かそだにさら

背筋も少し丸く、見た感じ頼りなさそう(月乃評)な女性。芸名はYu-Raで歌ってみたやオリジナル曲の歌唱を中心に行っている。Inter-LiVE内で最も人気のアーティスト。

用語集

Vtuber

「バーチャルYoutuber」の略語で、主に動画サイトでCGやイラストを使って動画の制作・配信を行っている人を指す。

本作で扱われるのは企業が運営するVtuber、いわゆる企業系Vtuberの方である。

Inter-LiVE

一期生4人、二期生4人と所属が少なく新しい企業。一期生は英語縛り、二期生は漢字中心の芸名となっている。一期生はいずれも人気Vtuberであり、今後が期待されている。近日、Live2Dのモデリングが一期生と夏月(サプライズ)に実装された。

Live2D

株式会社Live2Dが開発した、イラストを自由に動かすことのできる技術のこと。原画をパーツごとに分けて使用するため、絵の魅力を活かしながら立体的な表現が可能である。

Vtuberの他、アプリゲームなどに用いられる。

詳細はLive2Dとは(公式HP)を参照してください。

 

ストーリーPickup

以下、ネタバレ注意です。

2人で1つの六枚夏月

顔認証のパスワードを誤魔化せ、声も瓜二つの一卵性双生児。だけれども、性格は「ぼっちな哲学愛好家」と「表向き陽キャの元生徒会長」と深い溝に隔たれていました。

陽菜は月乃名義でVtuberの面接に通すことで溝を狭めようとしていました。月乃は条件として「姉さんも一緒にやってね」(1話より引用)と提示します。相談の結果、多重人格者として2人で1つのVtuber_六枚夏月が誕生しました。

月乃は最初は嫌々でしたが、結局はなることを選びます。比較されることを分かっていても、初配信の際には楽しんでいる姿が描かれました。

他の誰でもない、彼女に笑って欲しかった。漸く、一歩進めた気がする。


1話あとがきより、陽菜の心境

六枚夏月は2つの人格から作られています。やはり声が似ていることから、2人1役か本物の多重人格か視聴者も確定できていません。

『シロ』は陽菜の人格で、明るい方です。初配信のとき元気いっぱいに挨拶をし、イメージを定着させました。

『クロ』は月乃の人格で、物静かな方です。配信声出しRTAと称されるくらい声を発さず、当初は断末魔、喘ぎ声、哲学持論の3択でした。

なお、片方が話しているときもう1人は隣にいます。

Vtuberとしての死(6話)

きっかけはとある有名な芸能人の逝去でした。仏教と神道の違いから聞く陽菜に、月乃は知識を披露します。話が進み、『六枚夏月の死』に話題が移っていきます。6話は終始2人の会話で、無事に配信まで間をつなぐことができました。

 

VtuberとYoutuberの一番の違いは、「キャラクター」か「人」だということでしょう。Vtuberはファンがイラストやマンガを描くことが多々あります。人気がでる、親しみやすさに拍車がかかると利点が大きい一方、二次創作が独り歩きしかねないとも取れます。

キャラクターで認識しているから名誉毀損のような行為(例:R-18、アンチ・ヘイト)をしても許される。中の人がいるから、中身が変わったら視聴者は別人だと認識する。2次元とも3次元とも取れない不思議な位置に、彼女らは存在しています。

自分じゃない自分が、自分が言わないような、言った覚えのないことを喋ってたり、自分の知らないポーズを取っていたり。まるで自分を見てくれているはずなのに、見られていないような、自分だけど自分じゃない誰かを見ているような、そんな感じ。


6話より地の文を引用。

余談1:ゲーム部プロジェクト

ニコニコ動画、Youtubeで動画投稿を行っていたCtuber(キャラクターYoutuber)4人組。2019年声優陣によって労働問題が告発され、声優が変更された。その後、低評価の嵐に見舞われ、2021年2月解散が発表された。

演者とキャラクターは切り離せないということが教訓として残された。
参考先:「ゲーム部プロジェクト」活動終了と、彼らが「Vtuber」文化に残したもの

追記:株式会社Brave groupは音楽部門としてRIOT MUSIC(リンク先:公式Youtube)を運営している。こちらも登録者は十分多く、(個人的にチャンネル登録していることもあり)騒動が起こらないことを強く期待している。

余談2:転生(Vtuber)

配信者、アイドル、VtuberなどからVtuberに姿を変えて活動を開始すること。個人で活動していた人が企業にスカウトされたケース、以前に問題を起こした人が炎上や荒らしから逃亡するために行うケースなど要因は様々である。

外側を変えて活動することは可能なのだが、特定しようとする輩がいることを忘れてはならない。特定後にどのような反応になるかは、以前の活動に因る。

余談3:音声読み上げソフトと実況者

VoiceroidやSoftalkなどの音声合成ソフトには、モデルとなるキャラクターが充てられている。同じ合成ソフトを使用していても投稿者の趣向や絵師の性質、話させる言葉の選択などによって、独自のキャラクターのイメージを持たせることができる。

今年ニコニコ動画で流行っていた「ふにんがす」というコンテンツがある。これは紲星あかり、琴葉茜といったキャラクターは1つでも、言動や絵師によって区別できることを示した。そして、中身がお兄さん(もしくはおじさん)でもキャラクターとして百合カップリングが成立し得るという情報も得られた。

月乃(妹)から見た陽菜(姉)

月乃から見た陽菜は天才でした。あらゆる分野において、人が何年もかけて身に着けた技術を追い抜いてしまいました。妹は姉と比較されがちで、何故できないのかと周囲に問われています。月乃のためと姉は迷惑な行動を押し付けてきて、Vtuberとしての活動もその1つでした。

同じ体を扱うVtuberとしてともに過ごしていくうちに心の持ちようが変化していきました。憎さ、苦手といった負の感情だけじゃない、いかに姉が等身大の姿で見守ってくれていたかを知ります。

2人の関係にさらなる変化が訪れたのは「六枚夏月の3Dを誰が動かすか」という質問がきっかけでした。久々に自主的にやってみたいと思う月乃を遮ったのは、こういう時だけ果実をもぎ取っていく(と思っている)陽菜の一声でした。社長のアシストもあり何とか表明はできましたが、決断は先延ばしになってしまいました。

数分だけ先に産まれたプライドだけで努力ができるという意地、月乃が本当に嫌がることをしないという姿勢。身近だから気づかなかった姉の思いが、同僚によって解きほぐされていきました。

陽菜(姉)から見た月乃(妹)

かつて陽菜から見た月乃は賢い子でした。地頭の良さ、考える力に長けていました。妹に負けまいと対抗心を燃やし、プライドから努力している姿を隠します。

また妹を好いていても、自己肯定感の低さを嫌っていました。彼女がそうなった理由として、認めてくれる人が少なかったからと分析しています。努力して上回ってしまったから月乃は諦めることを覚えてしまいました

自己肯定感を高めるため、陽菜は地位や権力を尽くします。Vtuberとしての活動も尽力したうちの1つでした。同じ体を共有してVtuberとして活動していくうちに、月乃の友達を作ることができ、2人の間でくだらない会話もできるようになってきました。

2人の関係にさらなる変化が訪れたのは「六枚夏月の3Dを誰が動かすか」という質問がきっかけでした。いつものように月乃に任せるつもりが、「あたしがやります」と答えます。姉として妹を導きたいのか、陽菜として月乃と再び離れたくないのか。思いがまとまらず1週間の家出を敢行します。

思いがまとまらない陽菜を助けたのはマネージャーでした。気持ちを受け止めて、悩み切れるように住み場を提供してくれていました。

まとめ:2人で2人

何度も何度も反芻する記憶。あの後姉さんとちゃんとお互いを知り合って、話し合って、言葉と感情を尽くした果てに出した答え。そこに悔いは無い。反省なんてあるはずが無い。けれども不安をどうしても拭いきれない。


エピローグより、月乃の思い

2人が出した回答は、万人に認められるものではありません。笑い飛ばせる人もいれば、嫌悪感を隠せない人もいる攻めた作戦でした。けれども、2人は確かに同じ景色に向かっており、共に歩けるようになっていました。

双子の姉妹が2人で1つのVtuberになったことをきっかけに、自分だちの思いのすれ違いに気づかされる物語です。相手のためを思って行動していても受け取ってくれないことにやきもきしている人にとって、どこか助けになるかもしれません。

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