二次小説の原作忠実度―二次創作と一次創作の境目―

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二次小説に限らず、二次創作においてどれだけ原作に忠実でなければならないという基準はない。各々の思うままに作っているのが現状であり、それが間違っているわけではない。

しかし、人によっては二次創作と一次創作を分別したい人がいるかもしれないと思いこの記事を作成した。「段階が進むごとに原作の要素が薄れていき、一次創作ならではのオリジナル性が出てくる」ことが本記事の目的である。

なお、オリジナル度は原作をある程度知っていることを前提とした「極小<小<中<大<特大」の5段階となっている。

  • 極小:原作に非常に忠実で、作品への愛情や敬意がみられる作品
  • 小 :原作に忠実なうえで、創作者のスパイスが加えられた作品
  • 中 :極小~小と比べると個性が強く、大~特大と比べると原作に依っているという中間の作品
  • 大 :原作人物もしくは舞台は出てくるが、骨組みが原作と異なっている作品
  • 特大:一次創作に一部原作が混ざった、二次創作よりパロディ・オマージュの方が近い作品。

段階1:ショートストーリー(SS)

オリジナル度:極小~中

原作のキャラクターや設定を使い、原作では描かれなかった物語を綴った二次小説である。特に注釈のない二次小説やSSと呼ばれているものはここに該当している。

オリジナル度は原作との差に依存するため、具体的な段階を設けることは難しい。例としてカードゲームの二次小説を書くとする。原作で達成できなかった試合を再現したならば、オリジナル度は非常に低い。逆に世界へ羽ばたいたり、原作になかったカードが軸になったりするのであればオリジナルの成分が多くなっていく。

原作読者からすれば既に知っている情報が中心なのでとっつきやすい、容姿や原作の用語を説明する必要がないといった利点はある。しかし、いくらオリジナルのストーリーを作ったとしても原作のキャラや設定に忠実な点から一次創作にはなり得ないという欠点が残る。

段階2:オリジナル登場人物

オリジナル度:小~大

原作のキャラクターの中に、極少数のオリジナル人物を紛れ込ませた二次小説を指している。特にオリジナル人物が視点人物になる場合にはオリ主と呼ばれている。

こちらは段階1と比べ、オリジナル人物がいる分オリジナル度は高いといえる。原作と乖離しているかは、彼らが如何に軸になっているかが重要になってくる。彼らの視点から原作人物を鳥瞰しているならば低く、逆に事件の元凶になるならば高くなっていく。また段階1と同様、展開が原作に存在していたかも重要な要素になってくる。

詳細は下のオリ主についてまとめた項目に任せるが、自分ならではの人物を置けるため書きやすいという利点がある。その一方で、原作設定が壊れる恐れがあり、読者の面からは読みにくくなるという欠点もあった。

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段階3:クロスオーバー

2つ以上の原作を組み合わせた二次小説を指している。クロスオーバーは主に3種類に分かれており、それによってオリジナル度が大きく変化するため分割して説明する。

原作Aの人物・物→原作B

オリジナル度:小~中

1つ目は特定の人物や物を他の原作に移した場合だ。このとき余程異なった世界観を混ぜない限り、他の原作のストーリーをほぼ流用することになる。

利点、欠点は段階1と近い。他の原作が混ざっている分、段階1より説明なしでついていけない、突然分からなくなって飽きやすいという問題はある。しかし、原作に忠実でも誤差が避けられないため、その変化を味わうことができる利点もある。

原作Aの人物+原作B、C……の能力

オリジナル度:極小~小

2つ目は能力や技能を他の原作から流用したパターンである。人物ではなく技能なので原作からかけ離れることはまず起こりえない。ただし、これは単体の影響をみた場合であり、それによって人格が変わる、ボスを瞬殺するほどの過剰能力といった二次的影響があればその限りではない。

利点、欠点は上記と同じなため省略する。

原作A+原作B+原作C+……

オリジナル度:中~極大

3つ目に何種類かの原作の人物を同じ舞台に混合した作品がある。ゲームであれば、お祭り的格闘ゲームが当てはまる。何種類の人物を移植した場合、たとえ物理法則が同じだったとしても作風の違いから大きなずれは避けられない。

作者にとっては、能力の扱いや人物同士の相性などを纏める手間がかかる。読者にとっては、全てを知っていることはまずなくなり、価値観の違いによって気分が悪くなる恐れがある。逆に物語が破綻することで原作の間柄ではできなかったことができるという、大きな利点も確かにある。

段階4:舞台設定の流用

オリジナル度:中~特大

オリジナルの人物、能力を原作舞台の上で動かす二次小説群のこと。原作人物の描き方の違いに囚われることがない分、原作人物が(ほとんど)出てこないため彼らが好きな人には敬遠される部類となっている。

これらの利点は自由度の高さだが、1つ重大な問題を抱えている。ほとんど一次創作であり、わざわざ舞台だけを引用する必要がないのである。そのことから、世界観が独特で似た世界観を作ってもパクリにしかならない場合を除き、一次創作と扱って読んでもいいのではないだろうか。

この部類でありながら出版された例として、時雨沢恵一「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」が挙げられる。この作品の場合、

  • 出版社や作者の許可が得られている
  • 作者が既に著名人である
  • 独自の設定、人物が輝いている
  • 原作未読な人に向けて説明がなされている

という点から、一次作品と同様の扱いでメディア展開されている。

段階5:テンプレート作品

オリジナル度:大~特大

二次創作ではないが、段階4と比較するためにテンプレート作品について取り上げる。これはシナリオや舞台設定を基底の作品に従って進める物語のことを指す。段階4と比べ、設定面は独自な代わりに物語が縛られることになる。

巧緻にかかわらず一括りにしやすいことから○○○系と非難されることはある。しかし、読者にとってその後の展開が分かりやすく、細かい点まで見ることができる点や好みの話かを短時間で判断できる点など、利点は大きい。

ただし、このような作品を取り扱う場合には一つ注意点がある。段階4は作者が二次創作と扱っているが、段階5のこちらは一次創作だと断じている違いがある。このことから、他の作品の根幹を引用していないか気を付けなければならない。

まとめ

オリジナル度という尺度を用い、二次小説の段階を見てきた。

全体的に、オリジナル度が低いほど原作の良さを重視して自分なりの感じ方を描いた物語、オリジナル度が高いほど原作の利点を生かして自分の好きなシナリオを描いた物語となっている。

  • 段階1:ショートストーリー:極小~中
  • 段階2:オリジナル人物  :小~大
  • 段階3:クロスオーバー  :極小~特大
  • 段階4:舞台設定の流用  :中~特大
  • 段階5:テンプレート   :大~特大

ここまで敢えて触れていなかったが、もし原作を知らないのであれば一次創作と同じように見ることもできる。

本記事の目的は、二次小説が原作既読者のみに向けたものではない、一次創作と違いがほどんどない作品もあるということを示すことだった。肝心のオリジナル度を見極める方法は作品を試し読みするしかないが、原作を知らないからといって敬遠することが減るのであれば、この記事に目的はあったといえるだろう。

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