【百田尚樹「海賊と呼ばれた男」感想】国岡鐵造の3つの主義

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百田尚樹作「海賊と呼ばれた男 上巻」の紹介記事です。出光の創業者出光佐三をモデルにし、彼の信念と経歴を記した小説です。本記事では主人公の信念3つを主軸にしてまとめていきます。

  1. 社員の一人一人を尊重し心中する覚悟で取り組むこと
  2. 社員を減らすのではなく仕事を増やす
  3. 日本国民の将来を守るために尽くす

 

目次

あらすじ

1945年8月15日、天皇は国民に向け敗戦の報を流した。それは戦争の終わりを告げるとともに苦難の始まりであった。

8月17日国岡鐡造は本社に残っている社員60名に向け一斉に告げる。

「昨日まで日本人は戦う国民であったが、今日からは平和を愛する国民になる。しかし、これが日本の真の姿である。これこそ大国民の襟度である、日本は必ずや再び立ち上がる。世界は再び驚倒するするであろう」

「しかし――その道は、死に勝る苦しみと覚悟せよ」


p.16より引用

PickUP

馘首を禁じる

戦争の敗北によって国岡商店は満州やフィリピンなどの海外拠点を失いました。補償金も降りず資金源が消失してしまいました。

また戦前にに施行された石油の全面禁輸は解けておらず、新たな仕事もありません。果たして人事はこの状況にどう対応するでしょうか?

一般的な回答は”人員削減”です。

2009年度にソニーが約16000人、日立が約8000人を削減したことや、2012年にシャープ系列が2000人の希望退職者を募ったことなどが挙げられます。

国見商店は一番の財産である社員を残すことを選びました。

「店員は家族と同然である。社歴の浅い深いは関係ない。君たちは家が苦しくなったら、幼い家族を切り捨てるのか」(pp.22)

家族である社員を守り切る誇りから馘首を禁じました。給料のために財産を全て処分して、部下とともに3日で疎開した社員1006人全員の場所を調べ切ります。

では残った財産をどう使うのでしょうか。次の主義主張につながります。

社長の仕事とは

石油関連の仕事がないならこだわりなく探せばいい。紀州の定置網漁業でも難題のラジオ修理でもやってみせる。

鐡造は椅子から失った仕事を取り戻すことを命令しました。既に61歳の身、本人は体力が劣っている自覚から営業に向かうことができません。不甲斐なさを感じていました。

見つけ出した仕事の内、石油タンク底からの回収が転機をもたらします。最大手である石油配給統制会社が断ったことを知ってなお請けました。

赤字業務かつ非常に過酷な環境下の業務を国見鐡造は何故選んだのでしょうか。

日本国民のため

日本国民の将来に尽くすことが国岡鐡造の第一目標でした。

日本国民の娯楽のためにラジオ修理を請け負い、石油全面禁輸を解かせるために回収業務を選ぶ。

植民地のように扱った米国相手にも我を貫き通しました。

特に主張が現れたのは言いがかりによる公職追放時でした。GHQに乗り込むだけでなく、実に堂々とした風貌で外交官と対面します。

「これはお願いすべきことではない。君はぼくの言葉を正しく伝えろ。彼らに喋っているときは、全国岡商店店員を代表して喋っているのだ」


p.92より引用

格上だと認識して泣き落としにかかる者が多い中、国岡鐡造は対等の立場で訴えます。

堂々とした態度と軍に関わっていなかった証拠の提出がGHQに認められ、最終的に無罪となりました。

まとめ:3つの主張

 

この記事の主張を纏めると、次のようになります。

  1. 社員の一人一人を尊重し心中する覚悟で取り組むこと
  2. 社員を減らすのではなく仕事を増やす
  3. 日本国民の将来を守るために尽くす

この記事では国岡鐵蔵の主張について取り上げ、商店の歴史についてほとんど記しませんでした。知りたい人がいれば、手に取って確かめて欲しいと思っています。

最後に、モデルとなった出光佐三のアーカイブから一言引用します。

『順境に悲観し、逆境に居て楽観せよ』

順調なときは楽観しがちで、し過ぎるといざ逆境に突入すると右往左往してしまう。逆境にいるときはかえって慎重に考え過ぎ、挑戦心が失われてしまう。

将来の浮き沈みを考えて常に備えておく、リスクマネジメントの言葉でした。

参考資料

(1)百田尚樹、「海賊と呼ばれた男 上」、講談社(2012)

(2)「ソニーがリストラを断行、1万6000人削減へーITmedia エグゼティブ」、http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/0812/10/news033.html

(3)株式会社日立製作所「業務改善に向けた取り組みについて」、http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2009/01/0130c.html

(4)「「希望退職の募集」の結果及び特別損失の計上に関するお知らせ」、http://www.sharp.co.jp/corporate/news/121120-a.html?_ga=2.219888028.467550704.1512743716-498609834.1512743715

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