新井紀子「ロボットは東大に入れるか」AIのできること、できないこと


電王戦において将棋でプロに勝ち、計算処理能力はとっくの昔に人の限界を超えています。融合するのか、それとも破滅を招くのか。彼らが将来にどう変化するのか、今日さまざまな著名人が議論しています。

新井紀子作「ロボットは東大に入れるか」は、2011年に開始した「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトの、途中報告と概要について紹介している一冊です。人の限界を超えているのだから東大ごとき楽勝、人の感情や設問を理解できないから厳しい。簡単に答えの出せない問題に挑む人たちから、人工知能を知らない一般人に向けたメッセージとなっています。

著者情報

本書巻末の文章を引用しています。

新井紀子 (あらい・のりこ)
東京都生まれ。一橋大学法学部卒業。イリノイ大学数学科博士課程修了。理学博士。現在、国立情報研究所教授。2005年より学校向け情報共有基盤システムNetCommons(ネットコモンズ)をオープンソースとして公開。現在、全国の学校のホームページやグループウェアとして活用されている。2011年から人工知能分野のグランドチャレンジ「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトディレクターを務める。ナイスステップな研究者、科学技術分野の文部科学大臣表彰などを受賞。著書に『数学にときめく』(講談社ブルーバックス)、『ほんとうにいいの? デジタル教科書』(岩波書店)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞社)、『数学は言葉』『計算とは何か』(東京図書)、『ハッピーになれる算数』『生き抜くための数学入門』(イースト・プレス 「よりみちパン! セ」)ほか。

ストーリーPick up

以下の項目は2018年に発売された改訂版には含まれていない可能性があります。またあらすじを見た限りここ数年で「東大くん」は大きな進歩を遂げていたようです。

本記事では2014年の内容で紹介していきます。

人工知能(AI)ができること3か条

将棋で、囲碁で、投資で……今日、人工知能はさまざまな分野で人が担っていた役割を上回っています。このように書くと万能の兵器のように思える人工知能ですが、できることは有限の知識の入手、特定条件下の特定の手続き、繰り返しの3つしかありません。
\[
32\times5=160
\]
上の式では有限の知識が「32」、特定条件下の特定の手続きが「前の数字に5をかける」行動となっています。統計データのように多量の知識でも、相関性のように複雑な行動でも構いません。逆にどれだけ根が単純な操作だとしても、特定の手続きをする方法が分からなければ解決することができません。
\[
2\times2\times2\times2\times2\times2\times2\times2\times2=512
\]
繰り返しはこのように「前の数字に2をかける」操作を何回も行うことを指しています。
これくらいの操作であれば多くの人が計算できるはずです。しかし実際の計算量は上のものよりはるかに多く、面倒という感情が先に出てくることでしょう。心が設計されていない人工知能では、人と違い、与えられた基準をひたすら遂行することに長けています。だからこそ同じような操作を幾万も繰り返して学習することができるのです。

人との違いを見極められるか

機械と人間を区別できるのか。1950年にアラン・チューリングは論文中で「機械が知的かどうか」を見極める方法を提唱しました。この問いに答えるべく、多くの研究者が人間らしい人工知能の研究を続けています。

人間らしい、というパラメータは想像以上に難しいものです。円周率を数百桁読み上げる、幅広い知識を持ち合わせ過ぎているなどあからさまに論外なものもあります。問題なのは、統計結果を取った人の平均動作を行ったとしても人間らしくなかったことです。現状、知的である処理の仕方は考案されていなく、心理学や神経科学と異なった形で人の思考回路を研究している段階です。

それでも皮肉な手段で合格したコンピュータもいます。彼らの手段は個性を付ける、すなわち上手く会話できない口実を作ることでした。例として、2014年にロシアのスーパーコンピュータが合格したときには「13歳の少年」のたどたどしさ、間違えやすさを真似しています。酔っ払いや頑固な老人などといった同じ話を繰り返したりタイピングミスを犯しても納得のいく個性をたてたりすることもありました。

このように姑息な手段を持ってなんとか合格しているのが現状です。心のプロセスが解明させていない以上、現代では厳しいのかもしれません。ただ数十年後にもし区別がつかなくなったら、そのときは彼らにも選択する権利を与えるべきでしょうか。

人のほうが「安い」から

人工知能が職業の自由を阻害する、人工知能の開発の賛成、反対にかかわらず議論されている項目です。失われない職業としては、人と寄り添う専門職がよく挙げられます。しかし、もう一つ失われにくい職業があると筆者は述べています。

それはamazonがすでに行なっている荷物の取り出し係です。単純労働ではありますが、現場は日夜目まぐるしく変わっています。巡回ルートの変更をコンピュータに記録するより、コンピュータが叩き出した場所へ人を派遣したほうが低コストなのです。

要するに人権のへったくれもなく、コンピュータより人のほうが安いから人を使っています。近い将来、毎日のように変化する単純労働でもなく人と結びつくサービスでもない、多くの人が働いている中間職が真っ先になくなると考えられています。

まとめ:今いるところを共有する

人工知能が人に及ぼす影響は良くも悪くも大きいものになると予想されています。大波をどう対応するか、それぞれの意見はあるはずです。しかし今どこまで研究が進んでいるのか知っている人は多くないでしょう。

本作では、東大挑戦という大衆に受けやすいテーマから今の進捗を共有しています。刊行当時に人工知能がどこまで進んでいたのか、もっと知りたいと感じた方への入門書としておすすめの作品といえました。

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