【Angel Beats! クロスオーバー小説紹介】2回死んだ少女が2回目の死後を全うする

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もしも学生時代をもう一度過ごせたら。そこは何かが原因で学生時代に未練が残った人へ与えられた、死後の世界だった。そんな世界に新たな少女がやってくる。彼女は学校に通ったことのなく、戦いの中に身を投じた一生であった。
伊東椋作「Angel Beats! ―SCHOOL REVOLUTION―」の紹介記事である。この作品は、ビジュアルアーツの作品2作を組み合わせたクロスオーバー作品となっている。ストーリーの大筋は原作に忠実だが、友情に焦点を当てており、原作とは少し違った関係が印象に残る作品だった。

目次

小説情報

小説データ

URL:https://syosetu.org/novel/8118/
作者:伊東椋
警告タグ:残酷な描写、クロスオーバー
話数(2018/5/4):80話 388,418文字
UA(2018/5/4):29,270
作者ブログ:http://itoryo847.blog74.fc2.com

あらすじ

見知らぬ学園のグラウンドで目を覚ました朱鷺戸沙耶。彼女が目覚めた場所は死後の世界だった。光の刃を生やした謎の女子生徒と戦っていた音無と言う男子生徒を助けた沙耶は、天使を相手に戦う死んだ世界戦線と名乗る組織に誘われて―――Angel Beats!とリトルバスターズ!の朱鷺戸沙耶を主人公としたコラボ作品!


当作品のあらすじ欄より引用

登場人物(原作との違い)

この作品にはオリジナルの人物はほとんどおらず、大きな設定変更もない。なので、原作との違う人物のみを紹介することにした。

朱鷺戸沙耶(ときど・さや)

「一流のスパイ」を自称する高校2年生。死後の世界で出会った音無をパートナーに選ぶ。当初は1度目の死後を覚えていなかったが、とある事件をきっかけに全てを思い出す。生前は医者の父親に連れられて紛争地域を転々としていた。死ぬまでに学校に通った経験はなく未練はあったが、1度目の死後で既に解決していた。

元はリトルバスターズ!の追加ヒロイン。ゲームマスター(棗恭介)の温情でイレギュラーながら住まうことを許されていた。ラスボスを打破したのち、秘宝(生物兵器)とともに自爆した。

音無結弦(おとなし・ゆづる)

記憶喪失の受験生で、Angel beats!の主人公。死んだ世界戦線として参加した最初の任務で沙耶と出会い、パートナーとして特訓させられる。生前は医学部志望だったが心半ばで事故に遭い衰弱死。かなでの真意と世界の真実を知った後は、メンバーを転生させることを選ぶ。

原作との違いは最後に「消滅」して転生する点。死後の世界から旅立ったのは、最後から2番目(卒業式後、直井→ゆり→日向→かなで→音無→沙耶)。

ユイ

Girls Dead Monsterの陽動部隊の1人。岩沢「消滅」後にボーカルとして参加する。生前は体が不自由だったことから未練は多く、音無たちが「消滅」させようとしたときに苦労することに。生前の最も大きな夢は結婚。原作との違いは、日向と結ばれた後に日向を思って「消滅」しない点。ガルデモの「消滅」を見届けた後、日向に見届けられて「消滅」した。

生徒会書記

唯一のオリジナル人物。幽霊のような存在感のなさで、副会長の直井も忘れていた。かなでだけが使用できると思われていた「Angel Player」の使い手。

正体は”制御”のために作られたNPC。後半で黒幕となった”改変”用のNPCと対になる存在で、イレギュラーであった沙耶を「消滅」させようとした。音無にパソコンを破壊されて一旦は破壊された。

のちに最終手段として沙耶によって招集される。ゆりに預けられて黒幕と対面。彼と抱き合って消滅した。

原作情報

Angel beats!

原作麻枝准、制作P.A.WORKSのオリジナルアニメとして2010年春に放映された。死後の世界を舞台にした青春ドラマ。殺されても死なないことを利用した過激なギャグや平和な生活主要人物の理不尽な人生の対比が描かれた。

リトルバスターズ!

ゲームブランドkeyによる恋愛アドベンチャー。2007年に対象年齢12歳以上で、2008年に要素を追加した18禁版で発売されている。主人公たちのために棗恭介たちが創った空間(学校)が舞台になっており、5月から6月の約1か月を繰り返している。主人公たち(+追加ヒロインのうちの2人)を除いて瀕死の状態だからこそ、それぞれの未練を晴らそうとしていた。

シリアスとギャグを問わず友情を重視した物語が繰り広げられた。

ストーリーPickup

2人目のパートナー(3話~5話)

自称生徒会長に再び刺されそうになった音無。そこに沙耶が現れて彼女を撃つ。沙耶は事情を知らず、音無は「相当やばいことに首突っ込んでいる」と己への反省と共に教えた。

次の日、戦線へと加入することにした沙耶が最初にしたことは、一番弱そうな音無を鍛えることだった。


この作品においてイレギュラーである沙耶の役割を明確にした場面である。生前、1度目の死後と2度に渡って銃と深く関わってきて、なおかつ学校というものをよく知らない彼女にとって、戦線という場所はうってつけだった。

なお、「最も弱い者を鍛え上げてパートナーとする」ことは原作でも行っている。ただ、今回は何度も遭遇して一方的に記憶を持っている仲ではなく、ほぼ同時期に戦線に加入した仲間である。なので、このときの2人の関係は師弟関係にとどまっている

成仏への引金(9話~12話)

音楽を聴く経験のなかった沙耶にとってバンドは印象的だった。だからこそ、沙耶は音無たちと離れてガルデモの護衛に付く。

案の定、ライブを止めようと動く教員たちに対して沙耶は独り乱入して迎撃する。「ここはあたしが抑えとくから、岩沢さんは歌いたかった歌を、歌って」それが岩沢に引導を渡すことになると知らずに。


印象的だったからこそ付いた護衛で、だからこそ岩沢を消してしまった。沙耶にとって心に残る出来事であり、この後も何度か追憶している場面である。沙耶は作戦以外に姿を出すことがなく、音無からスパイのような陰密さだと言われている。

戦線としては、天使の強さの秘密を知った代わりに重要なメンバーを失ったシーン。ユイが文字通りのデスメタルを披露し球技大会に参加するまで、良くも悪くも小休止する羽目になった。

なお、沙耶は球技大会に直接参加していない。その代わり、原作を再現してか樽の後ろに隠れていた。大会中、ライフルでボールの軌道をずらして有利にするという行為に勤しんでおり、なんやかんやで戦線のことを気にしていることが描かれていた。

イレギュラーとイレギュラー(30話~34話)

学生時代に理不尽に死んだ人たちの未練を叶える。学園に運ばれる条件に「1度目の死後で未練を叶えてしまった」沙耶や「死の直前で報われてしまった」音無は当てはまっていなかった。

生徒会書記は来るはずのなかったイレギュラーを処理するべく動き、沙耶は密室へ囚われた。そして、沙耶は失われた「1度目の死後」の記憶を呼び起こされる。


原作通り、音無とかなでが直井達に囚われていたころ、沙耶は不審な人物の尾行をすることに。NPCの大半が気づくほど杜撰なものだったが、本人は完璧だと思っていた。しかし、生徒会書記は分かったうえで誘っており、罠に引っ掛かってしまう。

運動能力や銃の腕は本当にあるのだが、隠れることに関しては未熟な沙耶の弱点が出てしまった場面。隠れるどころか一般人の理樹(リトルバスターズ!の主人公)に見られた原作からしても、妥当な弱点である。

この章では音無の機転の良さ、沙耶へのパートナーとしての思い2点が描かれていた。特に下の発言は、戦線やパートナーへの理解が深まったように思えた。

「俺たちは、イレギュラーだとか、そんなコンピュータ染みたものの存在なんかじゃない。 お前とは違う」
「……………」
ゆっくりと彼女が俺の方に振り返る。だが、その足は二度と動くことはない。
「俺たちは、理不尽なことや理解できないことに抗い続ける人間なんだよッ!!」
俺はそう叫び、引き金を引いた。


episode34より引用。彼女=生徒会書記

未練を叶えて(54話~62話)

かなで(天使)を加えた3人は、満足してもらって成仏させることで一致した。音無と沙耶はそれぞれの道に進み、誰かの未練を叶えようとする。

音無たちはユイの未練を次々と消していく。しかし最後に残った夢は「結婚」で音無にはどうしようもなかった、後ろから声がするまでは。


基本的にAngel beats!の原作に忠実だったこの作品で、最も原作と離れた点がユイの成仏のタイミングであった。原作ではこのエピソードで成仏するが、この作品では75話まで残り続ける。

この差は「この世の未練の有無」によって起こっていた。未練がなくても戦線のために残った沙耶と同様、日向を思って留まる。作者さんがパートナーとの関係性を大事にしていることが伺えた。

まとめ:Start

卒業式を終え、最後に残っていた6人も徐々に世界から離れていく。感謝を伝える者、勘違いを悔やむ者、もう一度会えると願う者……最後に残った沙耶は校長室にいた。戦線が証を残した場所から、一筋の優しい光を見る。満足したと確証した沙耶は、旅立ちへの一歩を踏む。


再び会えることを願って、最終話でそれを示唆する。ユイが残り続けたこともそうだったが、この作品は原作に忠実であり続けながら人と人の関係を注意して書かれていたように感じた。

Angel beats! を知っていると先が予想できてしまうこともあり、どちらかというと、原作を知らないけれど興味がある人、学園系の恋愛コメディが好きな人に勧めたい作品といえる。

 

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