【遊戯王 二次創作】人形が人の輝きを得た1つの出会い

病気、交通事故、いじめ。それぞれのきっかけから生の感覚を失った少女らは、1つの願いとともに命を絶った。方舟に乗せられた彼女は2度目の生を受ける。

うた野作「沢渡さんの取り巻き+1」の紹介記事である。これは遊戯王ARCーVの初期を元にした二次創作小説だ。オリジナル主人公の久守詠歌が、原作人物の沢渡シンゴとの出会いを通して人の輝きを取り戻していく。

原作はカードゲームの販促アニメなので、文字数の半分以上はデュエル描写に費やされている。当時の世代を知らなければ置いてかれる部分も確かにあった。

しかし、この作品の一番の特徴は転生ではなく憑依を用いた点だ。『生きたい』と『消えたくない』と願っても、2つの魂は同じ体に宿らない。元人形が繰り広げる思いのぶつけ合いが魅力的だった。

小説情報

小説データ

URL:https://syosetu.org/novel/38507/

作者:うた野
警告タグ:オリ主、転生、憑依
話数(2018/3/12):39話、488,841文字
UA(2018/3/12):204,659

原作:遊戯王ARC-V

スタンダードのデュエリスト榊遊矢が3年前に失踪した父の姿を追い、人を笑わせるエンタメデュエルを目指していた。ストロング石島と戦っている最中、遊矢がペンデュラム召喚をしたところから物語は始まった。そのころ融合次元「アカデミア」の侵攻を阻止すべく、LDSの社長である赤馬零児は槍となる戦士を探していた。

融合次元に滅ぼされたエクシーズ次元のユート黒咲隼、シンクロ次元のユートがスタンダードに転移したことをきっかけに、遊矢たちは4つの次元の戦争を知り、密接に関わっていく。

カードゲームで世界を救う販促番組、第5弾の作品である。エンタメデュエルやアクションデュエル、スターシステムなど過去作の総体制として作成された。が、乱入システムやアクションデュエルによるカードゲームとの乖離以前の作品人物への冷遇ルールの誤りの頻度の高さにより炎上騒動を引き起こした。

主要登場人物

久守詠歌(くもり えいか)

沢渡シンゴを「沢渡さん」と敬愛する黒髪の少女。基本的におっとりしているが、沢渡を侮辱すると訂正を要求する。沢渡のために駅前のケーキ屋に通う、沢渡のために紅茶を注ぐ練習をするなど、行動原理の多くが「沢渡さん」由来。彼女に沢渡を語らせると数時間はかかる模様。

他にもLDSの真澄、北斗、刃の3人とかかわりを持ち、特に刃を兄のように慕っていた。使用デッキは甘い魔法を表す【マドルチェ】、相手によって破壊されたときデッキに戻るカテゴリーである。

本来の人格は、両親を交通事故で亡くした。親族や知り合いが押しかけてきたことを鬱陶しく思っており、誰も気にしなくなったとき自殺を図った。体を勝手に使って遊んでいる”詠歌”を嫌い、過去の”詠歌”と同じく沢渡をバカにしている。詠歌の痕跡を潰すように自分の部屋を壊した。当初は生きる気がなかったが、”詠歌”との出会いを通して「生きていたい」と感じ決闘に臨んだ。

本来の使用デッキは影人形を表す【シャドール】、リバース効果と特殊召喚メタが中心のデッキである。

逢歌(おうか)

融合次元出身の詠歌そっくりの少女。一人称は「僕」、詠歌のことを”私”と呼ぶ。彼女もまた憑依した人格で、詠歌の憑依人格と同一人物。詠歌を嫌うのは、逢歌の体を奪った罪悪感に苛まれている横で第二の人生を楽しんでいたから。

本来の人格は学園の落ちこぼれであり、いじめによって自殺した。そのため本編中で一度も目覚めてくれず、より一層罪悪感を強めていった。その後、外伝にて表層に出てきて逢歌と和解する。

使用デッキは【霊獣】。融合・分離を繰り返してアドバンテージを稼ぐデッキである。墓地に送ることで発動するコンセプトのせいで除外にめっぽう弱い詠歌と違い、除外を能動的に使用する。

沢渡 シンゴ(さわたり シンゴ)

”詠歌”が敬愛する相手であり、ナルシストが入った男性。原作の勝率は2割以下と散々、この作品中でも13話の1勝のみ。LDSの生徒だが取り巻きの扱いやサボり癖から小物臭が漂っていた。それゆえ真澄、北斗、刃、零児などから久守詠歌はどうして沢渡の取り巻きをしているのか疑われている。どうしても自己中心的な部分は抜けないが、それでも詠歌のことは気にかけている。

使用デッキは【帝】【妖仙獣】【魔界劇団】とデッキを時々変えている。どれも対戦相手へのメタを中心としたコンセプトで、持ち前の運もあり実力は高い。

作品紹介

方舟は人形へ運ばれた

『白い天井に白い壁、白いベッド、そして鼻を刺す消毒液の独特な臭い。』(『満たされぬ魂』より引用)この病室で4人を看取った少女は、誰にも看取られずに亡くなった。それが名もなき少女の最期だった。満たされることなく眠りについた少女の魂は方舟に乗って世界を渡る

一方で自分の生を捨て去ろうとする少女たちがいた。代わりに生きてくれるのならば、と少女たちは体を差し出す。少女たちは方舟に願いを叶えられた

作られた世界で人形は少女へ変わる

久守詠歌として生きてきた最初は楽しんでいた。かつて教えてもらったエクシーズ召喚と融合召喚を使って、記憶はなくても女王様のように振る舞うことができた。しかし、榊遊矢の父親である榊”遊”勝のエンタメデュエルを見て、この世界のことを思い出してしまう。

詠歌は5番目の作られた世界だと気づき、主役に立つことをあきらめた。デュエルの腕を活かして要人警護をしていくたびに、この世界が非現実だと突きつけられた。

沢渡への第一印象は、『偉そうで、傲慢で自分勝手な嫌な男』(『居場所』より)。最初は仕事だと諦め、沢渡を人形と評されながらも守り続けた。作り物の世界で無駄な努力を続ける彼を見続けた。

沢渡の意思を、努力を作り物にしたくない。仕事が終わったのちも、自分の意思で沢渡のうしろに立つために、かつて叶わなかった普通の学生として付き添うことを選ぶ。

詠歌はくすんでしまった

赤馬零児は黒咲隼がLDSにいたという記憶処理を行った。原作でも平然と行われており、覚悟と躊躇いのなさが示された1シーンである。しかし、この作品では零児の想定外が発生してしまった。久守詠歌を覚醒させてしまったのだ。

混乱する記憶、沢渡シンゴを最大の汚点として二度と近づかないように警告するなど、詠歌は豹変してしまった。一方で非情になりきれていない側面もあり、榊遊矢に「泣きそうな顔」だと指摘されている。

「榊遊矢! お前には数々の恨みがある」
「……怨み?」

「その1! 俺からペンデュラムカードを奪い、俺に敗北を味あわせた! 屈辱だ!」
「……元は自分が奪ったというのに」
それに加担した事もまた、私にとって拭い去れない過去だ。

「んぐっ……その2! お前そっくりのエクシーズ使いに怪我を負わされた! 屈辱だ!!」
「自分でそっくりって言っているんですが……逆恨みにも程があります」
そして怪我をしたのは私だ。


『人形とエンタメデュエルショー』より、沢渡の発言と詠歌のツッコミを引用

この騒動の原因は互いに相手の本心を知らないことだった。詠歌は沢渡の利点を見ることなく、”詠歌”は沢渡の欠点を無視して盲信する。沢渡は付き従っていた”詠歌”だけで久守詠歌を判断していた。勝手に詠歌は訣別を決意し、周囲は逃げ道をふさいでくる。沢渡自身の「別の間違った道に進むのを許せない」感情も合わさって、久守詠歌に決闘を申し込む

まとめ

憑依した人格と元の人格が『決闘の儀』で向き合う、初代遊戯王の最終戦に沿った終わり方をする本作。奪ってしまった罪悪感と他の人格が認められない衝動を細かく描いており、憑依と転生の違いを最大限に活かしていた。

総じて、転生作品を読み飽きた人におすすめの作品である。

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