材料学から見る刃物の歴史【おもしろサイエンス 刃物の科学】

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日常生活ではハサミや包丁、工業製品では金ノコやドリル。私たちと刃物は切っても切り離せない関係にあります。しかし、刃物がどういう材料からできているか、答えられる人は多くありません。

今回は朝倉健太郎著「おもしろサイエンス 刃物の科学」を使って、刃物の歴史を材料学の視点から見ていきます。

 

本文のまとめ1:材料の特性

  • 木製……簡単に集められて加工しやすい
  • 骨製……木製よりも硬く壊れにくい
  • 石製……有機質より硬く壊れにくい
  • 銅製……石製より扱いやすく修理しやすい
  • 鉄製……銅製より壊れにくい
  • ステンレス製……鉄製と比べて錆びない

本文のまとめ2:材料ごとの得意分野

刃物の材料選択

  • 金属製:コントロールしやすい、砥石によって性能を維持しやすい → 料理店や業者、硬い野菜などを切るときに向いている
  • セラミックス製:中程度の重さ、手間なしで切れ味を長持ちさせやすい → 家庭にて、軽いものを切るときに向いている
  • プラスチック製:軽く壊れにくい、携帯性に優れている → 持ち運びする際や緊急なときに使用する動きがある

材料学とは……物理学や化学の業績から新しい材料を開発・計測する工学分野のことで、材料科学や材料工学とも呼ばれています。

  • 生体材料工学……細胞の培養法や再生医療など
  • 有機材料工学……樹脂や生分解性プラスチックなど
  • 無機材料工学……セラミックスやナノ粒子など
  • 金属材料工学……鉄鋼や都市鉱山対策など
  • 鉱石材料工学……鉱石からの精製や鉱石自体の利用

近年では垣根を越えた研究が盛んになり境界が無くなりつつあります。

 

目次

刃物の歴史と材料学

最初の刃物は偶然から

初期の刃物は、木や動物の骨といった有機物から作られていました。加工しやすく手軽に入手できたからです。しかし加工しやすいということは、切れ味が劣化しやすいという欠点がありました。第二世代の刃物は、黒曜石のような鉱石で作った刃物でした。骨と比べて硬く、なおかつ切れ味がよい代物でした。

この世代の刃物は、人類が誕生した初期から使用されています。石器時代を支えた第一世代、第二世代の刃物は各地で発掘されており、博物館で見ることができます。

金属時代の到来

約6000年前人類は金属を使うようになりました。しかし紀元前の頃は約1000℃が限界でした。当時の金属は金のように酸化されにくいものや、青銅のように数百度で加工できるものに限られました

1991年アルプスのエッツ渓谷で約5300年前の斧が見つかり、99.7%銅-0.22%ヒ素-0.09%銀と分析されています。純銅が作れないにもかかわらず純度と切れ味に秀でる物を当時の人々は扱っていました。しかし流通することなく途絶えています。

鉄製の刃物も紀元前から作られてました。純鉄は純銅と比べて融点が約1540℃と高く溶かしにくい点が問題でした。

人々は炭素が混ざることで融点は下がることを見つけ出し、近代まで炭素鋼製は日本刀など広く用いられていました。

隕鉄を用いる解決策もありました。隕鉄とは鉄-ニッケル合金からなる合金で、現在では隕石としての価値しかありません。ただ彼らにとっては溶かさずに得られる貴重な鉄でした。柔らかくばらつきのある特性上、隕鉄製は特権階級の装飾品や儀式に使用されていたとされます。

錆びない刃物の誕生

近代まで鉄の主流は炭素鋼でした。しかし炭素鋼には錆びるという致命的な問題があり、水場で使うには向いていません。

現在使用されている刃物には、錆びにくいステンレス鋼が使用されています。研究が進展したのは20世紀初旬、量子力学や熱重量測定の発展と重なる時代です。研究の転換があったのは1911年、フィリップ・モンナルツの学位論文でクロム鉄合金の「不動態被膜についての効果」が初めて報告されました。その後クロム添加鉄の対酸化性や不動態膜の研究成果も報告され続けました。

クロムの添加によって合金の表面には1~3nmの酸化クロム(Ⅲ)膜が生まれます。膜が破れたとしても次のクロムが析出するので、長期的に内部の酸化を防ぐことができる原理となっています。

1913年マルテンサイト系ステンレスによる刃物が生まれました。耐食性と強度に優れる一方で、硬すぎたがゆえに研削や鋳造加工に向いていませんでした。それほど硬く錆びない点が刃物として評判になりました。

金属以外の可能性

人類の金属利用が始まって以来多くの刃物は金属製でした。切れ味の劣化のしにくさ、再利用のしやすさ、粘性の高さが評価されたからです。

今では金属以外から作った刃物も主流になっており、その一例を紹介していきます。

プラスチック

炭素繊維製のナイフが代表例です。鉄以上の強度、耐熱性、耐摩耗性、耐酸化性に優れており、さらに軽く運びやすいところも強みです。対して切れ味は金属ほど高くなく調理に使いにくい点が弱みといえます。

セラミックス

多くは酸化ジルコニウムで作られています。耐食性、耐熱性、熱伝導性の低さ、高強度と刃物に向いている材料です。重さは金属と炭素繊維の真ん中ほどで、錆びることは決してありません。

弱点は弾性や粘性のなさ。局所的に大きな力がかかると先端の欠けを招くこともあります。そのため肉や葉物といった柔らかいものを切るときに使うべきといえます。

まとめ

朝倉健太郎著「おもしろサイエンス 刃物の科学」を使って、刃物の歴史を材料学の視点から見ていきました。どんな刃物を使えばいいか悩んでいる方へ、向いている素材が分かるようになれば幸いです。

本文のまとめ1:材料の特性

  • 木製……簡単に集められて加工しやすい
  • 骨製……木製よりも硬く壊れにくい
  • 石製……有機質より硬く壊れにくい
  • 銅製……石製より扱いやすく修理しやすい
  • 鉄製……銅製より壊れにくい
  • ステンレス製……鉄製と比べて錆びない

本文のまとめ2:材料ごとの得意分野

刃物の材料選択

  • 金属製:コントロールしやすい、砥石によって性能を維持しやすい → 料理店や業者、硬い野菜などを切るときに向いている
  • セラミックス製:中程度の重さ、手間なしで切れ味を長持ちさせやすい → 家庭にて、軽いものを切るときに向いている
  • プラスチック製:軽く壊れにくい、携帯性に優れている → 持ち運びする際や緊急なときに使用する動きがある

材料学とは……物理学や化学の業績から新しい材料を開発・計測する工学分野のことで、材料科学や材料工学とも呼ばれています。

  • 生体材料工学……細胞の培養法や再生医療など
  • 有機材料工学……樹脂や生分解性プラスチックなど
  • 無機材料工学……セラミックスやナノ粒子など
  • 金属材料工学……鉄鋼や都市鉱山対策など
  • 鉱石材料工学……鉱石からの精製や鉱石自体の利用

近年では垣根を越えた研究が盛んになり境界が無くなりつつあります。

 

参考資料

1)朝倉健太郎「おもしろサイエンス 刃物の科学」、日刊工業新聞社(2017)

2)久保内 昌敏「鋼の状態図と変態 7.鋼の状態図と変態」http://foundry.jp/bukai/wp-content/uploads/2012/07/4228431119094d162c3f7d5829d4e110.pdf

 

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