どうしてネット小説の1話は短いの? 短編の基準の違いから見る

きっかけは2年前、私が9,000文字くらいの小説を書いていたとき。5話に分けて連載していたが、当時は書ききったことに満足していた。しかし最近になって、精々短編小説だったのではないかとふと感じる。なぜ短編小説ではなく、連載小説として投稿したのだろうか。

ネット小説と大衆小説では短編の扱いが異なっているが、その裏にはブログのSEOとは違うネット特有の事情があった。

記事を作ったきっかけについて

記事を作成したもう一つのきっかけは秋沙美 洋さんの「なろうにおける中編小説の扱いについて」(URL:https://ncode.syosetu.com/n1743cy/)である。中編小説を短編として出すよりも、分割して連載小説で出す方が視聴数を稼げた。という内容のエッセイであった。

小説家になろうのトップページには「新着の短編小説」(表示時間:約1時間)、「完結済みの連載小説」(表示時間:約12時間)「新着の連載小説」(表示時間:約10分)の3つがある。明らかに「完結済みの連載小説」の表示時間が長いために、1万字以下の文章を分割して掲載する事態が多発しているのが現状だ。

一般小説は10~20万字

一般的な書籍の文字数について気にしたことはあるだろうか。読書中にわざわざ数えるのも難しいし、別の機会に調べようともしない。その結果ネットに転がっている基準を鵜呑みにしていないだろうか。

ということで1つ検証してみた。手元にあった6冊の本から5ページずつ適当に選び、文字数を平均する。その後挿絵や章間を除いたページ数を数え、平均文字数にページ数を掛けた。ただしページを選出する際、幕間があるページを意図的に弾いている。

その結果下の図が得られた。ここから、サンプル数が少ないため確実とは言えないが、一般小説の文字数は約10~20万文字と予想される。

作品名行*列平均文字数ページ数文字数【万】
海賊と呼ばれた男(上)4518810543.236519.82
天地明察4218756548.046825.64
アルジャーノンに花束を(長編版)4520900716.430722.00
何者4018720512.028214.43
神様のいない日曜日 1巻4016640415.22389.88
ソードアート・オンライン14217714494.431615.62

また、行と列を掛けた理論文字数と比べた平均文字数は、67,72,80,71,65,69[%]となった。これは計測中の経験則から、短い会話の程度に依存していると考えられる。

文字数で4段階に分けてみると

小説は”掌編””短編””中編””長編”に分類されている。これを一般小説の文字数10~20万文字を踏まえたうえで、各段階の基準を見ていく。

掌編

小説を本格的に書くための下準備で作られることが多い小説である。長くても原稿用紙10枚、要するに2000~3000文字以内が基準になる。

文字数こそ小説の中では少ないが、執筆難易度はそこまで低くない。何故ならば、この文字数の中で展開からオチまでを、書ききらなければならないからだ。

短編

中途半端に書き伸ばした掌編、長編のプロット、中編から圧縮と様々な経緯で生まれる段階である。原稿用紙70~80枚程度という記述も見かけたが、おおよそ1~3万字の小説だ。1分あたり500文字読めるとするならば、ここまでが1時間以内で読める小説となる。

短編1つで書籍化は難しい。とはいえ、短編を募集要項としている文学賞も中にはある。文藝春秋が運営する『オール讀物新人賞』や、双葉社の『小説推理新人賞』が代表である。

中編

おおよそ原稿用紙200~300枚まで、つまり5~10万字の作品が分類される。

薄いライトノベルや文庫本のように、中編1作で書籍化は可能だ。しかし、各賞の募集要項はいずれも次の長編を取り扱っている。

長編

長編の基準は10万字以上である。超長編(原稿用紙1000枚以上)といった括りを作らない限り、最大の区分だ。

大半の新人賞は長編作品を募集要項として求めている。江戸川乱歩賞(350~500枚)、新潮新人賞(250枚以内)、電撃小説大賞(42×34で80~130枚)など。

細分化が好まれるわけ

では、何故ネット小説は短い文字数でも連載小説(中編~長編)として投稿するのだろうか。その理由は2つ考えられる。

1つ目は棚の更新頻度だ。本屋で売られている小説の場合、比較的長期間棚に置かれている。新刊の交換は月1程度で、余程売れ行きが悪くない限り数か月は書店内に売られている。しかしネット小説(短編)では、わずか1時間で新刊コーナーから弾かれるのだ。手に取る人もそれほど多くなく、結果としてほとんど見られることなく沈んでいく。

しかし連載小説の場合、1話の掲載時間こそ短編より短いが、話の数だけトップページに表示することができる。また『小説家になろう』など完結作品の新刊コーナーがある場合、ここに掲載される時間も加えられるのだ。

2つ目は体系の変化である。本と比べスマートフォンは携帯しやすく、短時間の読書に向いていた。しかし、ネット小説の栞は一般書籍と比べて粗く、各話ごとにしか設置することができない。また通勤中や休憩中に読む場合、長時間読書に充てることができない。その結果より短時間で読めるように進化した、という説だ。

さらに、この進化は作者にも影響する。1話当たりの文字数が少なくなるので、更新する頻度が上がるのだ。また最低文字数が下がるほど壁は低くなり、ふとした拍子で参加しやすくなる。

ブログとネット小説の『1つの違い』

インターネット上の文章の代表例である、ブログとネット小説。文章の書き方や句読点の使い方など共通点も多い。しかし、この2つにはたった1つ決定的な違いがある。それは誰に好かれるかということである。

ブログは特定の単語に焦点を当て記事を書いている。なので、10個の記事を書くよりも1個の記事を推敲してアクセスが増えることもある。これは多くの人がGoogleやBingなどの検索エンジンから流入するからだ。つまり、ブログは検索エンジンに好かれる記事が求められる。

一方のネット小説は、そのサイト内部からのアクセスが多い。したがって1話をどれだけ完璧に仕上げたとしても、アクセスはほとんど変わらないのだ。その結果、小説投稿サイトに好かれるように更新頻度を上げているのである。

まとめ

一般小説の文字数計測

  • 1冊あたり10~20万字
  • 空白はおよそ30%

小説の4つの分類

  • 掌編:2,000~3,000
  • 短編:10,000~30,000
  • 中編:50,000~100,000
  • 長編:100,000~

1話当たりの細分化

  • 更新頻度∝掲載頻度
  • 読みやすく、書きやすくするための進化

誰に好かれたいか

  • ブログ:GoogleやBingといった検索エンジン
  • ネット小説:なろうなどの小説投稿サイト
スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
レクタングル(大)広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告