他者と向き合う『答え』をなくして【東方Project 二次創作】

原作知識を持っているのだから、妹が狂気に駆られることは分かっていた筈なのに。
どうして止められなかったのか、姉の幸福を奪ってしまったのか。
彼(彼女)は己を捨て、『答え』をなくし、……狂った帽子屋が生まれました。懺悔から清算しようとする姉、何も知らなくても助けようとする妹に気付くことなく帽子屋は狂い続ける。

今回取り上げる作品は納豆チーズV作「東方帽子屋」になります。東方Projectを原作とした二次創作で2015年2月に完結しました。某吸血鬼の妹として生まれ『答えをなくす程度の能力』を授かった主人公が、周りを守るためにサポートしたり余計なお節介をかいたりする物語です。

作品情報

データ一覧

作者:納豆チーズV
警告タグ:R-15、ガールズラブ、オリ主残酷な描写転生性転換
話数:136話、888979文字
UA:1259162

アドレス:https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=29577

原作情報:東方Project

忘れ去られた存在が集まった場所、幻想郷にて繰り広げられる日常と異変を描いた作品です。Windows版東方Projectの第一作「東方紅魔郷」は2002年に弾幕シューティングゲームとして販売されました。

神主(原作製作者)が二次創作を黙認していることから、ゆっくり動画の目印になっていたりニコニコ動画に多数MMDがアップロードされていたりと二次創作の規模が大きい作品です。

作品紹介

答えをなくす程度の能力

オリジナル主人公、レーツェル・スカーレットが所持する能力になります。事象を定義づける原因と結果の内、結果を消去することでその事象を起きなくすることができます。

作品中で行っていたことの一部だけでも
・感情から存在する表情という『答え』
・音を越えること、そして衝突によって怪我を負うという『答え』
・銃弾で怪我をする『答え』
・炎により火傷を負う『答え』
・妖力の光線で怪我を負う『答え』
・日差しにより自身が灰になっていく『答え』
・能力を行使するという『答え』
・寿命が減っていく『答え』
・○○により傷つくという『答え』
これだけあり、正直何でもありに近い冒涜的な能力です。更に自分にかけるなら発動条件やコストもなく、タイムラグもなく可逆であり……流石ラスボス系能力

理不尽な強さを持っている半面、この能力が枷になっている部分もあります。表情を消せるから故、他人に心を開けない。大概のことができるからこそ、他人に助けてもらおうとしない。レミリア・スカーレット(主人公の2歳年上の姉)が運命を捻じ曲げて救おうとしても、レーツェルに届かなかった。この枷をどう取り外すか、それがこの物語の終章になります。

Alice im Märchenland

この物語のいたるところにドイツ語や『不思議の国のアリス』の要素が組み込まれています。何故ドイツ語なのかは謎ですが。

  • 不思議の国のアリス→原作者はイギリス人
  • 吸血鬼→古代ルーマニア(ルーマニア語)
  • レミリア・スカーレット→自称ヴラド・ツェペシュ(現ルーマニア南部の君主)の子孫

レーツェルが「狂った帽子屋」を自称していたり、鈴仙(宇宙産の兎)を「三月のウサギ」に例えていたり。原作で両者は終わることのない「狂ったお茶会」を続け、アリスに答えのない意味のない問いかけをしています。

ここからはあくまで推測の域ですが……レーツェルの能力の由来は意味のない問いかけからでしょう。また(主人公の前世曰く)不思議の国のアリスの文体や背後知識は狂気を帯びており、それが何気なく狂っているレーツェルを示していると考えられます。

文法・文章評価:4/5

原作の知識をほとんど持っていなくとも、最後まで読むことができるほど文章に気を遣っていました。

二次小説特有の描写スキップもなく一々説明してくれます。(他の二次創作やニコニコ大百科を見た限りでは)原作人物との行動や発言の乖離もなく、事件の結末の大筋は変化していません。

物語評価:5/5

作品全体を通して伏線回収を非常によくされた作品です。

例えとして紫とは「初戦で油断している隙をつき完封して、貸しを作り(2-十二)」「地底に向かう=さとりと会うきっかけを貰い(7-六)」「『全力を以てしてあなたを止める』と誓われ(8-十○)」「時期を調整され(Kapitel 9)」「宣言通り止めに来る(10-六)」という流れになっています。このうち一つでも欠ければ物語として成立しません。

他にも茶番劇(異変と異変の幕間)が後につながっている点も利点として挙げられます。鷽(うそ)の祭事(8-七)はレーツェルの狂気を教え、節分(4-十六)はレミリアの願いがレーツェルに届いていないことを語り、人間っぽい骨(5-三)はレーツェルにとんでもない策を授ける。一つ一つの話に目的があり無駄な話は一つもありませんでした。(完結後除く)

完結後では……かぼちゃライダー(6話)やラーの翼神竜に愛される(7話)、といった呪いから解放されたレーツェルの姿が年1~2回見られます。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
レクタングル(大)広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告