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本当の想いを侮蔑で隠して「妖花の魔女より、もうどこにもいない君へ」紹介
どんな馬鹿でも真実を語ることはできるが、うまく嘘をつくことは、かなり頭の働く人間でなければできない。
サミュエル・バトラー(英国の詩人)
人を救うための嘘はあると思いますか?
染井由乃作「妖花の魔女より、もうどこにもいない君へ」は自らを犠牲にした少女が、周りの本音に気付くも手遅れと化した物語です。強すぎる外力ゆえにハッピーエンドとはいえない作品ですが、主人公を想っている描写が初期から記されていることが特長でした。嘘つきと悲恋の物語に興味がある方向けの作品でしょうか。
目次
小説情報
小説データ
URL:https://ncode.syosetu.com/n3608hq/
作者: 染井由乃
警告タグ:R-15, 残酷な描写
話数(2022/08/04):27話、122,825文字
あらすじ
伯爵令嬢のジゼルは、ある日、聖女の力を発現するが、病弱な妹の治療薬と引き換えに聖女の座を王女に引き渡すよう王に脅迫される。取引に応じたジゼルは、聖女の座を奪われただけでなく魔女の烙印も押され、人々から虐げられるようになった。
冷酷になった婚約者、ジゼルを魔女と糾弾する妹、王女に従順な聖騎士、唯一優しい血の繋がらない義兄。人々に石を投げられ、蔑まれる不遇の日々が彼女から笑顔を奪っていった。
けれどジゼルは気づかない。彼らが秘めたジゼルへの本当の想いに。誰もがただ、ジゼルのことを嫌いなだけではないということに。これは「魔女」を愛し続けた人々と、誰も嫌いになりきれなかった聖女が「妖花の魔女」になるまでの物語。
主要登場人物
ジゼル・メルエーレ
伯爵令嬢。12歳のとき(本編の6年前)に聖女の力を発現したが、取引脅しによって公表を妨げられる。その後王女らの趣味で「妖花の魔女」扱いされ迫害される。
クラウディア
ファーロス王国王女。12歳のときに取引で聖女扱いを受ける。外向けは完璧だが、真の顔はアレ。
フローラ・メルエーレ
ジゼルの妹。病弱で特殊な薬草がなければ生きていけない。部屋に肖像があるくらい聖女(偽)を信仰している。
アルフレート・ベルデ
ジゼルの許嫁で侯爵令息。2歳年上。妖花の魔女判明以降、ジゼルに冷酷になった。しかし、関係性を崩す気はなさそうで……。
リアン
本編12年ほど前に引き取られたジゼルの義兄。ジゼルが聖女であると知っている。隣国に1年間留学していた。
レア・アディ
初代聖女を保護したアディ伯爵家の令嬢。アルフレートの護衛の聖騎士。本業は聖女の護衛であり、正体を知った後ジゼルの騎士になると決意した。
ストーリーPickup
以下、ネタバレ注意です。
妖花の魔女とは
伝承上の存在で、名前の通り瘴気の花を咲かせる存在。黒いドレスの着用が義務付けられており、道を歩くたびに石を投げられるくらい迫害の対象となっている。
神聖な花を咲かせる聖女の成れの果てともいわれている。
神聖な花を咲かせる聖女の成れの果てともいわれている。
本作の主題であり、実害がないのに嫌われる存在です。それにしても、怒りを買いそうなのに何故執拗に攻撃したのでしょうか。王女の所業といい作者の聖女を堕としたい信念を感じました。
殺害されない為の迫害
フローラやアルフレートはジゼルの正体に気付いていました。しかし彼女のまわりには王女直属の部下がいたのです。なので彼らは監視の目を欺くために迫害していました。問題なのは知らないジゼル側で、唯一変わらなかった義兄に依存していきます。
助けを封じ、いじめを強要させる。やはり王家の悪辣さと作者の意向の強さが現れていました。
王家にイラついた方へ。安心してください、きちんと報復されます。
暗殺対象
変わっていないように見えた義兄リアン。1部で一人称描写がなかった時点で怪しかったのですが、ちゃんと2部で明かしてくれています。
”聖女”を殺さなくてはならない。しかし義妹に手を下したくない。彼にとって今の状況は都合が良かったのです。発狂して役目をさぼらないように癒す傍ら、隣国が真実に気づく前に計画を実行まで動かす。彼の気持ちもジゼルは気づいていませんでした。
しかし、彼の計画は外力の手によって狂っていきました。
まとめ:聖騎士の誓い
聖騎士レア・アディの命を賭けて御身と御心をお守りすると誓います。あなたが正しい光の下にあればあなたの盾に、もしもあなたが妖花に蝕まれたときには、あなたを終わらせる剣として役目を果たしましょう
第9話 聖女の嘆願 より引用
主人公の一生は一般的に憧れるものではないでしょう。覚醒して早々脅され、その後6年もの間周りの気持ちに気付くことはありませんでした。衣類の自由もなく、民衆から迫害され続ける日々。想いに気付いたときには、誰も去ってしまいました。
救いであったとすれば、約束を覚えていてくれたことでしょうか。
この作品は妹の為に自分を犠牲にした少女が、周りの本音に気付くも手遅れと化した物語です。強すぎる外力ゆえにハッピーエンドとはいえない作品ですが、主人公を想っている描写が初期から記されていることが特長でした。嘘つきと悲恋の物語に興味がある方向けの作品でしょうか。
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