【幼女戦記_二次創作紹介】ただ幼馴染に愛されたくて

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ふぃれ作「少女×幼女戦記」の感想・紹介記事です。世界大戦という人の尊厳を奪われた世界で、「自分にとっての合理性を優先する少女」ターニャと「他者からどう思われているかを気にする少女」ティナが出会いました。自分とは全く違う少女ターニャに憧れたティナが、ターニャを必死に追いかけ隣に立とうとするファンタジーです。

2人の仲は一方通行から双方向へ変化していき、通して2人に欠けていたものが補われていきました。自己犠牲に走った少女らの成長と当初からの変化が感じられるワンシーンとなっていますので、最初の部分で気になった方は最後まで見ることをお勧めします。

目次

小説情報

小説データ

URL:https://syosetu.org/novel/135232/
作者:ふぃれ
警告タグ:R-15、オリ主、神様転生、残酷な描写
話数(2019/05/04):36話、183,082文字
UA(2019/05/04):151,626

あらすじ

ティナ・アルベルトは前世での生を終えた後、自称”神”によって軍事主義で拡張主義な”帝国”に転生した。僅か8歳ながら合理的で主観的な考え方を持つ少女、ターニャ・デグレチャフを応援したい。そんな思いからティナは軍へ行くターニャに付いていくと心に誓った。

心の動きに敏感過ぎて嫌われた少女は、転生の末に愛されることを望む。

主要登場人物

ティナ・アルベルト

ターニャの2つ年上の少女。

他人の考えていることが理解できる体質を前世で持っており、忌み嫌われていた。歪んでも壊れなかった姿勢を評価され、存在Xに信仰値稼ぎとして転生させられる。

転生しても愛されたい欲求は収まっておらず、ターニャへ並々ならぬ想いを抱いている。前世での経験から周囲からの印象に疎く、自己評価は非常に低い。ターニャほどではないが高い魔道適正を備えており、4本の短剣を手足のようにして戦う。戦闘スタイルから付けられた通称は”四枚羽”。

存在Xへの好感度はそれなりに高い。

ターニャ・デグレチャフ

原作主人公かつ本作の準主人公。8歳のときに高い魔道適正を認められ、将来の平穏な生活のために軍学校に行くことを志望した。前世は他者の意思を顧みない敏腕サラリーマン。

肉体が幼いながら高過ぎる合理性をもち、周囲に年齢相応にみられていない。本人の希望とは反対に戦場によく送られる。共和国側からの通称は”ラインの悪魔”。

典型的な近代合理主義者であり、転生させた奴を”存在X”と命名し忌み嫌っている。

存在X

自称:創造主。信仰心を稼ぐため2人を戦乱の世界に転生させる。強制的に信仰させる強力な武器”エレニウム九十五式”の開発を始め、ターニャの信仰心を培うために何度か干渉しているがいずれも失敗している。

対して、信仰してくれるティナには肯定的な姿勢を見せる。

原作:幼女戦記

魔法技術が発達している20世紀前半の西洋を舞台とした、オンライン小説およびライトノベル。10歳程度の少女が残虐な行為を厭わず生き抜くという、タイトルとイラストや内容のギャップが印象に残る作品の1つ。原作が描かれた2010年代前半には「魔法少女まどか☆マギカ」「結城友奈は勇者である」「魔法少女育成計画」など、魔法少女に怨みでもあるのかと思わせる作品が他にもいくつか存在する。

本作の特長として2つ挙げる。1つは主人公が筋金入りの合理主義者なことだ。部下を物のように使い最期に裏切られた前世からスタイルは変わっていないが、それが軍部の印象と合致している。もう1つは魔法世界を舞台とした作品の中では現実味を帯びている点である。史実と照らし合わせて、狂気に包まれていった過去と相関させて彼女の凶行を強調しているかのようにみえた。

ストーリーPickup

以下、作品後半部までのネタバレを大いに含みます。

幼馴染を追いかけて

「士官学校へ行く」8歳ながら非常に合理的な選択を即断できるのに、独善的で危うい少女。ターニャの年不相応な考え方の裏に潜むわずかな子供っぽさに刺激されました。

本作中では互いに相手が転生者であると知らず、最後まで相手を年下と見做しています。ティナはターニャの心を意図的に読もうとせず、ターニャもティナの性格の問題を必要以上に責めようとはしませんでした。

ターニャは存在Xへの復讐と持論のために軍へ行くことを望み、ティナは愛されることを望んでターニャに付いていく。転生者は自分だけと思い、自分の好きなままに生きていく姿が描かれていました。

少女の初めての願い

他人の心が読めてしまうから、ティナは人よりも負の感情に敏感でした。相手を怒らせないように他者を優先し続けていました。

ターニャと過ごす内に彼女は「ターニャと一緒にいたい」という思いを抱くようになります。殺意がターニャへ向けられたとき、初めてエゴを貫き人を殺めました。

罪を自覚して、決して忘れないと誓う。軍人らしい解でなくとも、確かな成長が見られました。

隣にいて欲しい少女

合理性を何よりも重視し、今世でも従い続ける。ターニャは存在Xの介入に屈することなく自己を貫いていました。

彼女にとってティナは不思議な少女でした。同じ孤児院にいて、軍事学校で同期になり、陸軍所属後も上司と部下として関わっています。

「帝国よりも個人としてティナを守りたい」という想いは、初めての非合理的な感情でした。苦難を与え続ける存在Xは別として、部下ではない特別な関係を望む姿へ成長を感じました。

過小評価の末

表面上の勝利ではなく、民を守るため皇帝を潰して国を守る。ターニャは過激な計画を企てていました。自分がターニャとしてクーデターを起こし失敗させる。ティナなりの皆を助ける方法を彼女は企てます。

  • 世界に1つしかないターニャの武器を持てば誤認させられる
  • あらぬ方向へ発砲すれば人的被害を抑えられる
  • 戦場の悪魔が公的に死ぬことで、ターニャへ平和をプレゼントできる

思いを秘め、願いを共有しなかったことが作者が意図した2人の過ちです。

ティナはターニャにとって自分がどれほど重要だったか考えられませんでした。前世で他人と関わってこなかったこと、人の心を読めたこと。なまじ知っていたから読み取った先に気付かなかったのです。

ターニャはティナに思いが伝わっていると過信していました。常に人の上にあろうとしたこと、個人的な繋がりを持とうとしなかったこと。初めての経験だから機敏に気づいてあげられませんでした。

「ふ……ざ……けるな、この馬鹿が……!」

幼女はその手の中でグシャグシャになったその記事を、いつまでも睨み続けていた。
それは亡き友の選択を責めるように。
それは友にそんな選択をさせた自身の不甲斐なさを悔いるように。


第29話より引用。その記事=「帝国の敗北と反逆者ターニャ・フォン・デグレチャフの戦死」

2人のすれ違いがバッドエンドを生みました。存在Xがいなければハッピーエンドに持っていくことはできない。絶望的な末路からどう救われたのか、ぜひ読んで欲しいと思っています。

まとめ:訃報と願い

英雄によって偽の悪魔は殺され、帝国は共和制へ移行した。ターニャは残された名”ティナ・アルベルト”を継ぎ、”ターニャ・デグレチャフ”の代わりに大佐の業務を引き継ぐ。ようやく訪れた安寧の中、ターニャは1人の新人と出会う。


ふぃれ作「少女×幼女戦記」の感想・紹介記事でした。心を読めてしまう主人公が、自分とは全く違う少女ターニャに憧れ、隣に立とうと奮起するファンタジーです。一方通行から双方向へ変化していく成長過程が魅力的でした。

自己犠牲に走ってしまう彼女がどう立ち止まったのか。

自己犠牲少女が救われる作品が好きな人、存在Xが神様しているところを見たい人へオススメします。

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