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【デート・ア・ライブ 二次創作】残基∞に科せられた呪い『死に芸精霊のデート・ア・ライブ』
生きている以上生物はいずれ死にます。消えたくないという思いから不死を求める者も多く、始皇帝の逸話を始めとして多くの伝記が残されています。一方で不死となった人物が死を求める物語も多々あります。
ふぁもにか作「死に芸精霊のデート・ア・ライブ」は死にたくないと願った少女が復活した代わりに世界に殺され続ける物語です。ギャグのように1万回以上死んでいる少女を救いたい、原作主人公は封印するために立ち上がります。SAN値が一桁の少女は何故正常でいられたのか、果たして何を隠しているのか。
自らの犠牲を恐れることなく助けようとする雄姿が印象に残る作品でした。
目次
作品情報
小説データ
URL:https://syosetu.org/novel/150031/
作者:ふぁもにか
警告タグ:R-15, 残酷な描写
話数(2018/6/25):25話 113,876文字
UA(2018/6/25):39,914
あらすじ
文化祭が終わって日常に戻りつつある9月28日、五河士道は妹の琴里から新たな精霊:霜月志穂の情報を聞かされる。
志穂は世界各地で頻繁な目撃情報がありながら危険性は非常に低く、精霊撃破の練習台として扱われていた。
死の呪いにとりつかれた志穂を救うべく、士道は世界から1日守り抜くことを誓う。
主要登場人物
霜月 志穂
識別名:イモータル 人の生死を操る<垓瞳死神>の力を得た元人間。常にハイテンション気味で、世界に嫌われていることも受け止めている。
顕現してから1年間の記憶がない。
五河 士道
原作主人公。好感度の高い精霊とキスすることで力を封印できる高校2年生。7巻直後にあたり、本作では既に6名を攻略済み。
時崎 狂三(ときさき くるみ)
自分の時間を使って時を操作する<刻々帝>の能力を得てしまった元人間。時間と交換で物や情報をあげていたため志穂の過去をよく知っている。
原作:デート・ア・ライブ
精霊と呼ばれる謎の生命体によって大災害が起こるようになった世界。五河士道には、好感度の高い精霊とキスすることで封印することができる能力を持っていた。1人の少女を助けるために五河士道がデートする物語。
原作に登場する精霊にはいずれも生命の樹(ユダヤ教)の守護天使の名前を冠している。なお志穂のアズラエルはイスラム教における死を司る天使のこと。
ストーリーPickup
この先ネタバレ注意です。原作を知らない人に対しても分かるよう専門用語は注釈に記しておきます。
残基∞の少女
志穂は体が死ぬ度に違う所に転移する性質を持ち、不死性を持っています。故に盛者必衰を尊ぶ世界から嫌われ、毎日のように殺されていました。最近珍しいことにリスポーン地点が近所に固定されており、コンタクトを取る一行。ただ今の志穂は毎日のように殺される理由を知らず、士道に封印されることを嫌います。
しかしながら、なぜ志穂は自分の身を守ろうとしないのでしょうか。容易に人を殺せる武器:天使もあれば大砲クラスも防ぐ鎧:霊装もあるはずなのです。
なぜ使えなかったのか、空白の1年間に何かあったのだと推測されます。
天使 : 精霊固有の能力のこと。武装した一般人くらいなら簡単に潰せる火力を有する。士道の異常な再生も精霊の能力ゆえ。
世界からの呪い
志穂はすぐにデートを受けてくれるタイプでした。与えられた2時間を活かすため、士道たちはプランを立てて本番に臨みました。
結果……鉄柱に潰され、植木鉢の直撃、流れ弾の被弾、暴走トラックに轢かれ……挙句の果てには「いしのなかにいる」。絶命するたびに痕跡が消え無傷の志穂が現れました。本人が制限時間を設けたのも忙しいからではなく、死に際を見せたくないからだったのです。
そんなハトのような少女へ遊んでいるような殺し方を数万回行っている世界ですが、一定の規則に則っていることが分かっています。
- 珍しい事件に巻き込まれることは多々あっても、超常的な死因ではない
- けがを負うことはあれど、他人が巻き込まれて死ぬことはない
この制約に士道たちは勝機を見出しました。
リベンジデート
制約1「超常的な死因にはならない」より、死因になり得るものをできる限り排除する。制約2「他人が着こまれて死ぬことはない」より、自分が盾になって防ぐことで回避する。士道自身が傷つくことを除けば勝算のある先鋒でした。
前半戦「街路樹の下敷き」「ボールの直撃」「階段からの落下」といつも通りの方法で殺しに来る世界ですが、いつもと違い大量に援護されている志穂に傷一つ与えられません。無事に昼食を越えられてしまい、遂に世界がブチキレました。
「ゴリラやキリンなど危険動物のみの脱走」「エレベーターの落下」「ビルの崩壊」「地盤沈下」「青天の霹靂」など多少の異常事態を受け入れてでも志穂を殺そうと動きます。
敢えて作中になかったことに突っ込むと、志穂さん、人への被害が少ない分経済に大打撃を与えていたりします。彼女を世界が殺そうとするたびに何かが壊れており、現代で頻発すればSNSで曰く付き扱いされることでしょう。志穂の目算の死亡回数は15000回でそのたびに出てくる損害賠償(と加害者が妄想扱いされる精神ダメージ)。事故の原因ごと抹消してくれれば助かるのに、と思わざるを得ませんでした。
余談:志穂の記憶3年間を1日12回死亡換算で計算すると約13000回。15000回を達成するには3年5か月もしくは1日あたり13.7回の死が必要であり、「いしのなかにいる」といった即死を加えれば概算として合っています。ハイテンションなだけで何も考えていないわけではない。彼女の一面を感じた気がしました。
後半戦の先に
志穂の過去を知っている狂三が士道に伝えた言葉「キスをしてからが本番」。無事にデートが終わってキスをして、安堵感に包まれていた士道へ志穂は狂ったように嘲笑います。
彼女は決して過去を思い出さないよう、最も硬い鎧である霊装で蓋をしていました。封印されると霊装は解除され、膨大な記憶と感情が蘇ってきたことでしょう。
「ふふん、冗談ッスよ。そんなに身構えることないじゃないッスか。先輩には今までお世話になったし、私の記憶を取り戻してまでくれたッスから、お礼に特別待遇で一番最後に殺してあげるッス。地球最後の人間になれるなんて」
「志穂……」
「いやはや、物事には優先順位というものがあるッスからね。まずは今まで私を殺しやがった全ての人間に、心がへし折れるほどの凄惨な死を経験させてあげるッス。それから私によくしてくれた人たち以外をサクッと殺して、あとはノリと流れに任せて人類滅ぼす感じにするッスよ」
『16話 本番』より引用。
彼女は何故世界をすぐに滅ぼさず、わざわざ記憶を封印したのでしょうか。彼女の隠していた想いと士道の尋常じゃない精神の強さが映える延長戦に続いていきました。
まとめ:残基1つ
作者は「紙装甲の精霊を登場させたかっただけの小説」といっていた本作。必要な専門用語の少なさやあとがきの人物紹介から、原作を知らない人でも読みやすい作品でした。
志穂のギャグのような死に方、裏がある狂気と志穂のキャラクターが魅力的だったからこそ上手く完結できた作品だと思われます。不死者が主要人物でも誰も欠けることのない内容ですが、後半に重くなる展開だと知ったうえで読むことをすすめます。
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