元素を分かりやすく理解するために

いきなりですが、「この世界が90種類の元素からできている」と聞いて信じるでしょうか。水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム……カリウム、カルシウム。高校で習った周期律表をどこまで覚えているでしょうか。時々報道される水素やリチウム、工業的によく使うアルミニウムや炭素などはともかく、世間に知られていない原子は数多くあります。

そんな原子をヒト型模型で表した作品が、寄藤文平作「元素生活」です。完全版の発売(2017年3月末)までに発見された元素118種類(人工元素28種類含む)を紹介しています。「特殊性質(放射性や磁性)を背景や服装」「発見された年代を年齢」「使用用途を服装」「類を髪型」といったように、とにかくヒトで表すことに拘った作品を見ていきましょう。

補足情報(元素と原子の違い)
元素:物質の最小単位を表す概念。現代では”素粒子”とされている。
原子:原子核と電子から成り立つ物質。核分裂反応(原爆)のように多大な圧力をかけない限り、原子は化学反応によって変化しない。なので、近代では原子と元素を混合して扱かった。

元素生活 完全版 [ 寄藤 文平 ]

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生活中の原子

一般的に聞きなれない原子でも、日常で使っていることが多くあります。原子時代はたった7種でしたが、現代では30種類以上もの原子が用いられているそうです。このように日常で使用する原子の種類は、技術の進歩と共に増大しています。

  • ノートパソコン:リチウム、ニッケル、金、銀、銅、ルテニウム、ガリウム、臭素など
  • 携帯電話:マンガン、コバルト、タリウム、ガリウムなど
  • スピーカー:ネオジム、ジルコニウム
  • 布や植物:窒素、炭素、水素、酸素など

分からない原子が見つかった方へ、次の項目でちゃんと補足するので安心してください。

原子Pickup

ここからは個人的にマイナーだと思われる元素を、4種類ほど紹介していきます。

  • 原子番号:原子番号が大きいほど重い原子になります。ただし、中性子があるので単純比例はしません。
  • 分類:第m周期n族といった形。炭素(第2周期14族)と珪素(第3周期14族)など同じ族の原子の性質は似ています。
  • 融点:固体が液体になる温度。
  • その他特徴:放射性や磁性など

上の写真は「完全版 元素生活」の125ページから引用しています。この写真のように、人を使うことで原子の情報を子供でも分かりやすく表しています。

Snを選出した理由は唯一つ、ブログ名のモデルになっている原子だからです。著名揃いの炭素族(14族)の中でも影が薄く、最近の使い道もそれほど多くありません。しかし青銅・ブリキ・はんだといった用途で過去は大活躍していました。

他の炭素族天然原子は、炭素(樹脂やアミノ酸)、珪素(半導体やセラミックス)、ゲルマニウム(健康器具の騒動の原因)、鉛(蓄電池などに使われていたが中毒性あり)の4つです。

ガリウム(Ga)

  • 原子番号:31
  • 分類:第4周期13族(ホウ素族)
  • 融点:29.78℃
  • 使用用途:産業用

主に半導体に使われている原子です。特にgallium nitride、窒化ガリウムは青色発光ダイオードの光源として一躍有名になりました(2014年ノーベル物理学賞受賞)。他にも緑色(GaP)、赤色(GaAs)の発光ダイオードとしても使われます。

上記のように融点が低いことから低融点合金の原料としても用いられます。特にガリウムーインジウムースズ系は融点が-19℃と低く、常温下で液体なので水銀の代替として期待されています。

ジルコニウム(Zr)

  • 原子番号:40
  • 分類:第5周期4族(遷移金属、チタン族)
  • 融点:1852℃
  • 使用用途:多目的

酸化ジルコニウムとして宝石、包丁、人工歯冠、酸素センサ……硬く審美性の良い材料として多岐にわたり使用されています。

産業的には酸化ジルコニウムとして使われることが多くあります。常温下での靭性の高さ(=曲がりにくい)から包丁などに、2710℃という融点の高さから耐火物として使用されています。

酸化ジルコニウムは1100℃付近で、斜方晶系から正方晶系に転位します。これが曲者であり、降温時には体積が膨張するので壊れてしまいます。ただ日用品で売られているものには、既に添加物で対策してある(部分)安定化ジルコニアなのでご心配なく。
副作用として酸素空孔ができることから酸素センサとしての用途もあります。

用語解説
・斜方晶系:縦、横、高さの値が全て違う直方体の結晶。直方晶系とも。
・正方晶系:底面が正方形の直方体の結晶。
・(部分)安定化ジルコニア:4価のジルコニアに2価、3価の酸化物を添加したもの。常温で正方晶や立方晶にすることで、転位による体積膨張を防いでいる。
・正方晶系:立方体の結晶。宝石用途にはこの晶系のものが用いられる(キュービックジルコニア)
・酸素空孔:酸素が本来いる位置にいない、という場所。ジルコニアと添加物の配位差が原因

ルテニウム(Ru)

  • 原子番号:44
  • 分類:第5周期8族(遷移金属、白金族)
  • 融点:2310℃
  • 用途:触媒など

ルテニウムは触媒として有機合成化学の発展に大きく寄与した原子です。具体例は「不飽和結合の水素化」や「オルフェンメタセシス(オレフィン=不飽和炭化水素の結合の組換反応)」など。

他にもハードディスクの磁気ディスク材料としても用いられています。

ハードディスクは磁化をかけることで0・1信号を記録しています。したがって、より小さい領域で信号を記録できれば、容量を拡大することができるということです。ルテニウムを記録層間に挿入することで、磁化方向が安定化し容量拡大につながります。

タリウム(Ta)

  • 原子番号:81
  • 分類:第6周期13族(ホウ素族)
  • 融点:303.5℃
  • 用途:専門的

水銀(第6周期12族)と鉛(第6周期14族)に挟まれている微量原子です。水銀らは古代から知られていましたが、タリウムは19世紀中盤にようやく見つかりました。携帯電話関連では光ファイバーの添加剤として使われています。

両隣からお察しの通り、タリウムも強い毒性を持ちます。劇物の法定93種(塩化第一水銀や六価クロム酸など)に硝酸タリウムや硫酸タリウムが指定されています。致死量は1g未満だとか。

余談となりますが日本の法律では劇物以上の危険物質として、毒物という定義があります。大体複雑な有機物質(例外:シアン化水素=青酸やフッ化水素)ですが原子も一部含まれています。(順番は国立医薬品食品衛生研究所の「毒物」の並びを遵守した)

  1. セレン(第5周期16族)
  2. 黄燐(第3周期15族)
  3. 水銀(第6周期12族)
  4. 砒素(第4周期16族)

まとめ

実物は1原子あたりに160文字程度割かれています。ページ数のわりに文章量は少なく、それでも情報が集約されている一冊です。

今回は紹介していませんが、他にも「元素の食べ方」と称した体中のミネラルを取り扱った章も存在します。また付録に人間模型式周期律表もついてきます。

原子についてもっと知りたいけど専門書は難しい、そういった人に向いている書籍だとまとめます。

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