「少女は卒業しない」(前編)最期の朝に何を思う

3月25日、時期外れの卒業式が執り行われる。高校が潰れる最後の日に着目した小説、
朝井リョウの「少女は卒業しない」の紹介記事になります。

この本は、小説すばるの2010年4月号から2011年9月号までの7つの短編小説をまとめた作品とです。

また、それぞれの章につながりがあるオムニバス形式で、時刻は1章から順に並んでいます。

  1. 第一章:エンドロールが始まる →早朝
  2. 第二章:屋上は青       →卒業式直前
  3. 第三章:在校生代表      →卒業式
  4. 第四章:寺田の足の甲はキャベツ→卒業式後
  5. 第五章:四拍子をもう一度   →卒業ライブ
  6. 第六章:ふたりの背景     →卒業ライブの裏
  7. 第七章:夜明けの中心     →夜明け前

紹介文が思いの他長くなってしまったので、前編では第一章から第三章の卒業式送辞までを、後編では第四章から第七章までを取り扱います。

第一章「エンドロールが始まる」

卒業式の朝、延滞常習犯の作田と先生の物語。

 だけど私にとってあしたは、この本の返却日だ。結局最後まで読み切れそうにないけれど、それでも、絶対に返さなくちゃいけない。返却期限は、もう延ばせない。(p.13)

人それぞれの卒業式への印象の中、作田にとっての卒業式を端的に表した一文です。話のネタを作るために難しい英国小説を読み、興味を振ってもらうために先生の婚約者の容姿に似せようとしました。しかし、先生は最後まで奥さんと比較するだけで作田の思いを受け取ることはなく……

 好きでした。過去形にして無理やりせりふを終わらせればやっと、エンドロールが始まってくれる。(p.39)

7つの短編の最初であり、状況説明と別れの寂しさを兼ねた章となっています。関係がどこか続く終わりが多い中、ここだけは一方的に別れている点が印象に残りました。

第二章「屋上は青」

卒業式直前、集合している生徒を屋上から見る2人の物語となっています。

青いTシャツ姿で目立っていた尚輝と、黒髪眼鏡の孝子。自由奔放に夢を追い求め高校を飛び出した彼と、クラスの代表として卒業証書を受け取る彼女。幼馴染でありながら対照的な2人が、今は立入禁止の屋上に共にいた。

 東棟には幽霊のうわさがあったし、学級委員の私がそんな場所にいるのが見つかったら、クラス全体の責任にならないかとか、屋上で文化祭の練習をしているなんて言ったら出られなくなるかもしれないとか、私はいろんなことをぐつぐつと考えていた。
それでも尚輝についていったのは、あの屋上で踊る自分を想像したら、胸がわっと熱くなったからだ。何かが変わるかもしれないという予感が、一瞬で私の足をすくいあげた。(p.57-58)

近くにいた筈なのに、尚輝は次第に遠くへ羽ばたいてしまう。それは籠の中で過ごし、道標を見つけられない孝子にとって憧れであった。
壊される直前の東棟の屋上、踊り手1人観客1人のライブが卒業式とともに始まった。

尚輝は籠ったまま暮らしていた孝子を外へと引っ張り出し、そのまま飛んでいくことでしょう。彼女たちの羽ばたきと共に、後々にも登場する「東棟の幽霊」騒動が上手く繋げられていました。

第三章「在校生代表」

在校生の代表として亜弓が放った送辞……だけで20ページ近くあります。短編集で唯一2年生が視点となっている作品であり、それ故地の文が他とは違い砕けた丁寧語になっていました。

 それでは話します。壁際の先生たちは窓でも開けてください。女子は少し寒いかもしれませんね。このスカートぺらっぺらですもんね。だけど私、このままじゃ顔が熱くて大変なので、風が欲しいんです。(p.79)

しかし、送辞なのに最もネタに富んだ文章になっていると思います。先生への感謝、先輩への一目惚れ、部活を半ば抜けてまで入った生徒会活動と、亜弓自身は真剣に話しているので笑っていいのか悩んでしまいました。

送辞という非常に珍しい章でありながら、笑いあり、じんわりありという色々なものが詰め込まれた短編でした。

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