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【人類は衰退しました 感想】教育機関が滅んだ世界で、少女は超常に振り回される
田中ロミオ「人類は衰退しました」は3投身の妖精さんが人類となった世界で、本名不明の少女が妖精のトラブルに振り回されるファンタジーです。ライトノベルの中でも戦闘描写や恋愛要素がほとんどない稀有な作品です。その分凝った世界観のほのぼのが繰り広げられました。
あらすじ
わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は「妖精さん」のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の“調停官(ちょうていかん)”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なのだろうとこの職を選んだわたしは、さっそく妖精さんたちに挨拶に出向いたのですが……。
人類は衰退しました(ガガガ文庫)
妖精さんたちの、ちきゅう
人類最後の教育機関「学舎」の最後の卒業生である”わたし”は、国際公務員の調停官として、故郷のクスノキの里に帰ってきた。調停官の仕事として、現代の新人類である妖精さん(平均身長10センチ)に出会うこととなる。
妖精さんの、あけぼの
前回の騒動のあと、わたしは報告書の作成していた。そんなとき、紙の模型(ゴミ)が捨てられているのを発券する。精巧に作られた紙細工は妖精さん案件であり、再びゴミ山へ行く。そこは広大なサバンナになっていた。
感想
地の文ですます調のわたしによる一人称小説です。
さすがは交易ルートのはじっこに位置するド田舎、クスノキの里。個人が気軽に使える通信機もない時代だというのに、情報はアナログ方式(風の噂)の分際で一瞬で伝播してしまったのです。
p.31
上の文のように、情報量は比較的多い文体となっています。また、少々口が悪く、暴言が地の文に現れることもあったりします。以上から感情移入しやすい作品でした。
次に、この作品を語るうえで欠かせないのが”妖精さん”という存在です。
- 身長10センチほどの3頭身
- 大抵なんとかしてしまうが、お菓子だけは作れない
- お菓子が大好き(嗜好品として)
- いつの間にか増えている、消えている
- 危険を感じると丸まる
- ひらがなの片言口調
- 大体謎の存在
そんな「超メルヘン生命体」の彼らが新人類です。この作品の異常事態の9割は妖精さん絡みになっています。1巻だけでもミニチュア都市や、人工サバンナ、ゴム動力のペーパークラフト生物などを生成したりしており、人間規格の外にあることと妙な材質のショボさがうかがえます。
最後に、巻末にある四半期報告について。国連へのレポートという体なので、大まかな出来事について客観的に述べられている。ただ、時々自分を守る文章が書かれており、書いている時のわたしの心境が垣間見えてきました。
そのような観点から考察しても、担当職員の認識に不備があったという事実はなく、妖精たちにとって影響力が強すぎると予測される宗教概念などの伝播もなく、実にまったく本当に問題はなかった。
そのような=妖精への過度の干渉
p.253
担当職員=執筆者=わたし
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