本記事は魔法使いと黒猫のウィズのエピソード「双翼のロストエデンⅢ Load of Evil―魔王―」の感想記事です。お人好しの魔王夫妻から義理の子供たちが独り立ちするときに起きた、傲慢をぶん殴るストーリーとなっています。
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前作の感想記事

基本情報
あらすじ
別れの時が近づいていた。
かつての奇妙な縁から、出会い、共に過ごし、親子のような関係を築いていたアルドベリク・ルシエラとリュディ・リザ。
子供だったリュディとリザは成長し、アルドベリクの言いつけ通り、故郷に帰る準備をしていた。だが、どこか納得できない気持ちを抱えていた。
――別れたくない。素直な思いを自分たちの心が否定できないのだ。
そんな時、アルドベリクの周囲に不穏な気配が漂い始める。嵐が起きようとしていた。
「魔法使いと黒猫のウィズ」君の本より引用
世界観
魔界
魔王および数多の種族の魔物が暮らす異界。もともとは1つだった異界が7つに分断されている。いくつかの国に分割して治められており、国ごとに魔王がいる。平和的な解決のために王侯会議を定期的に開催しているが、自由気ままな気質のため集まりは悪い。
天界
聖王および数々の天使が暮らす異界。もともとは魔界と1つであったが、敵対関係にある。今の聖王は魔王の1人(堕天使)の姉のミカエラ。規律に厳しく天界至上主義が多数派だが、中には臆病な天使もいる。
死界
108の異界の亡くなった人がやってくる地点。死喰に人生を食べてもらうことで、まっさらな魂を他の異界に送り出していく。ヴェレフキナなど死界生まれの場合、怨嗟でどろどろに煮詰まったような海からシステムとして生まれている。
皇界、魔界、聖界、冥界、天界、死界、時界の7つのこと。元々は1つの異界、神界であったがとある騒動の結果分裂した。初期の頃から7異界以外とも行き来する手段が備わっている。
- 皇世:7異界の頂点。大天使が統べており、今代はシャロン。
- 魔界:種々の魔族が暮らす異界。王侯会議と呼ばれる合議制。古来からの召喚術が残されている。
- 聖界:星々にまつわる神と、神に仕える聖女が過ごす異界。トップはエークノームと呼ばれる聖域。他の世界には伝道師が移動して教えを説いている。
- 冥界:大罪人を閉じ込める収容所で、死神を介して他の異界にも赴く。イークワルが親から受け継いだ。
- 天界:天使が治める異界で、魔界と闘争する関係。聖王ミカエラがトップを務めている。
- 死界:いわゆる死後の世界。”死喰”というシステムが魂を浄化することで輪廻転生を行っている。今回の件の担当者はヴェレフキナ。
- 時界:時間の管理を任されている……とされているが、セティエしか登場していない影の薄い異界。
主要登場人物
アルドベリク・ゴドー
魔界の魔王の1人。屈指のお人よしで生真面目な性格。ルシエラをはじめ周りにからかわれながらも愛されている。信頼されていることも分かっており、人付き合いは良好である。現在の居候は、天使(ルシエラ)、養子(リュディガー、リザ)、ときどき友人?(黒猫の魔法使いたち)。
魔王らしく残忍で容赦のしない側面もあるが、それは被害者しか知らない。
ルシエラ・フオル
天界出身の天使なのだが、天界時代は幽閉されていたため天界を知らない。現在はアルドベリク宅にて居候中。周りから結婚扱いされている。長年アルさんと2人で時を繰り返してきたため、ジェネティスに対するメタとして役割を持つ。
ジェネティスへ感染した経験やアシストの結果、とんでもない方向へ進化した。
ミカエラ・セラフィム
天界の聖王で前聖王の娘。ルシエラが封印されていることを知っていたが、生死の輪廻を繰り返さないために黙認していた。イザークとは継続的に連絡を取り合っているが、今回はほぼ出番なし。べリガントの陣営拠点へ襲撃を指示した。
イザーク・セラフィム
魔界のとある国の魔王。ミカエラの弟。500年前、天界との均衡を保つために堕天し、騒動後も魔界を治めている。アルドベリクの爵位を抹消しているが、アルドベリクたちが元凶のアジトに向かいやすくするように仕向けている。
(馬鹿なクィントゥスを除いて)直接手を借りてはならないという約束を守った結果、裏方に専念していた。
クィントゥス・ジルヴァ
生粋の馬鹿で脳筋な青年。王侯会議に参加する資格があるジルヴァ家の当主で、会議内でも認められる実力者。イザークは「指揮官として優秀」、後のリュディは「指示が的確でブレないから厄介」と述べられている。
ヴェレフキナ・アマン
死界に暮らしており、問題のある魂を回収するお仕事をしている。関西弁なことと短パンなことに命かけとる。。常に一緒にいるシミラルは彼が自分の魂を2つに分けて作った造形物。ジェネティスの後遺症に頭を悩ませており、特効薬を持った人物を探している。ルシエラの感染を懸念するアルドベリクらとも協力し調査をしているが良い報告は届いていなかった。
リュディガー・シグラー
Ⅱにて子供だった2人の成長した姿。趣味は父親アルドベリクと同様で武器の手入れ。狩りの方法や殺す流儀などを魔王直伝で教わってきた。リザとは許嫁だが、恋人と扱うと怒られると感じている。
リザ・ロットレンダー
Ⅱにて子供だった2人の成長した姿。母親ルシエラの影響を多分に受けた結果、口がかなり悪くなった(+中の人も変わった)。王侯会議の女性陣との仲もよく、魔界から出るように唆す両親へ疑問を抱いていた。
ストーリーPickup
以下、ネタバレ注意です。
<ヤラ>の物語と果実
不死身の女性(通称:ヤラ)の戦闘力はそれほどでもありません。しかし、果実を出す能力がありました。後悔している過去の話を聞くことで、その弱点を克服できる能力を身に宿す果実を作ることができます。数千年前から生き続けており、人をからかうのがやりがいでした。
そんな彼女の今の目標は「アルドベリクを、魔王に相応しい男にする」ことでした。彼は実力は十分ある一方、絶望を欠いていました。故にヤラは周りを破壊することによって覚醒させようと企みました。べリカント一味に果実を与え、アルドベリクの義娘リザを誘拐させ、魔王会議から追い出します。さらに、義嫁ルシエラをジェネティスに由来する病で斃すことによって、アルドベリクを独りにする予定でした。
弱点は自分の真名を呼ばれると死んでしまう点。しかし、数千年前の名前を憶えている者などもはや生きていませんでした。ゆえに、彼女は自分が不死身だと分析します。すべての計画は死なないからこその享楽だったのです。
笑っていたい
見た目のインパクトが大きい今回の報酬精霊たちですが、最大はコイツでしょう。見た目だけでなく、「ズキュンズキュン」や動けないところを撲殺する姿勢など言動もインパクト抜群です。
彼にヤラの果実で与えられた能力は<絶対的人気者>、笑顔を見せることで攻撃を封じる力でした。かつて、彼は主人の粗相を笑ってしまいました。そのとき、顔の皮を剥がされ、代わりに与えられたのはぬいぐるみのような皮膚(おそらく紫色の部分)だったそうです。
実は、今回の敵キャラの中で彼だけ幸せな将来を迎えています。ベリカントの一味の先鋒として、第一回ワクワク魔界フェスティバル跡地に来た彼は運命的な出会いをしました。クィントゥスは彼の姿を笑わず、本気で殴り合えるほど大事な奴だと認めてくれました。ジルヴァ領に彼の居場所を残したおかげで、エピローグのパーティーにも出席していました。
過去の記憶
前回のボスジェネティスの厄介な点は、戦闘面だけではありませんでした。魂に傷をつける影響か、後遺症に悩まされている魔物が残されています。魂の管理者ヴェレフキナも抗体を探して、アルドベリクに検体探しの協力を要請していました。
過去の記憶が蘇る、リザの助け方に悩んでいるタイミングでルシエラに違和感が芽生えます。ジェネティスが過去を掘ったせいなのではないか、ヤラが暗躍しているせいなのではないか、行く末が不安になる一幕でした。
<可能性>の制御
結論として、ヤラは「墓穴を掘って」います。アルドベリクらにとって一番身近な被験者ルシエラは抗体を有しており、過去の記憶を呼び戻せるようになりました。その中には、最悪の可能性(マッド・ルシエラ)だけでなく、ヤラと同年代の頃も含まれています。
ヤラは自らの手で真名を知っている存在を創り出してしまったのです。この後、処されることはなかったものの、煽る立場からパシリへと転落していきました。
自分にとって大いに不利な状況へ至る原因を自分で作ることを形容した表現。似た表現に「自らの首を絞める」などがある。
実用日本語表現辞典より
別れる決意
ここまでベリカント一味やヤラの顛末について、主にまとめていきました。とはいえ、今回の本題はリュディとリザ、2人の親離れにあります。
2人は人間であり、戻るべき異界がありました。「なぜ戻らなければならないのか」もはや魔界で暮らしている期間の方が長くなり、かけがえのない友人もできていました。そんな最中に起こったのが今回の事件でした。
リザを守れなかったことを悔いるリュディと両親に迷惑をかけたと感じているリザ。もし2人が望むのならば、両親は今回のように立場を犠牲にしてでも守り続けてくれるでしょう。だが、2人は両親に親離れをさせるために分かれる決断をしました。
まとめ:別れのとき
アルドベリクが注文した「まかたんの抱き枕」は置いていかれ、手荷物は「短剣」だけ。時を繋ぐお守りを持って進みます。彼らの道のりは、まだまだ始まったばかりなのでした。
補足:短剣
アルドベリク家の紋章が刻まれた一品。魔界に流された際に渡された、故郷までの道のりを示す石が取り付けられている。リザとリュディはこの短剣を媒介に風魔法を用いる。
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