【黒猫のウィズ 感想】神都ピカレスク

神都ピカレスクシリーズのテーマとして、仁義と欲望が考えられる。どういう信念があって、悪に堕ちてまで何を為したいのか。ピカレスクの名のように主人公たちは決して善人ではないが、方向性がはっきりしているためか不快感はわきにくかった。

本作はシリーズの中でも背景やキャラクター設定の説明が多く、読み進めていく障害は少なめである。”異能がある”ことを念頭におけば、どんな能力か推理することは比較的優しい方であった。ギャンブル好きのダメ男が見たい人、ボイス付きの異能バトルが見たい人に響くのではないだろうか。

※スクリーンショットはいずれも株式会社コロプラに帰属するものであり、当記事はこれを侵害する意図で制作されたものではありません。

基本情報

あらすじ

国際都市・神都(シエンタウン)――街の夜は、昼間の華やかさに覆い隠された欲望がむき出しになる。

そして夜の主役は、それぞれの欲望を胸に秘めた盗賊たちだった。

二人組の盗賊ケネスとギャスパーはとある事件に巻き込まれ、人間離れした<怪人>と対決することになる。

何ら対抗策を持たぬ二人だったが、己の身に起こった奇妙な力の萌芽が、彼らの窮地を救い――運命を変えた。


「魔法使いと黒猫のウィズ」君の本より引用

世界観

列強国の半植民地であった、1920年代の中国(E王朝)が舞台。自らの願いを叶えるため、他人から盗むことをいとわない人々を中心に描かれる。

また、裏でサイトキシンXというお香が流通している。都市伝説として、サイトキシンXによる能力者<怪人>が起こす事件が流れており、1節ごとに原因を解決していく。

主要登場人物

ケネス・ハウアー

西洋諸国出身、E王朝育ち。表の顔は新聞社カイエ・デ・ドロゥボーの記者。
生きていくために怪盗をしており、盗むことを誇りとしている。
特技はイカサマをすること。

本名はなく、ケネスという名も他人から盗んだもの。

ギャスパー・アルニック

共和F国出身。表の顔は新聞社カイエ・デ・ドロゥボーの所長。
戦争をなくすために暗躍するポワカール一族であり、盗賊稼業を誇りとしている。
顔と一族経由の財力が強みだと自称している。

過去にいくつかの名前を得ては捨てており、ギャスパーも偽名の1つ。

ヴィッキー・ワン

普段はE王朝の映画会社<華様影業公司>で女優をしている功夫使い。
西洋諸国に奪われた祖国(E王朝)のお宝を取り返すため、義賊を働いている。怪盗としての名は桃花タオファンと読む。

桃の花言葉の1つ「天下無敵」を体現する無能力の実力者。

用語集

カイエ・デ・ドロゥボー社

ギャスパーが運営する新聞社。いわゆるフロント企業。従業員数2名(続編で+1名)と少ないが、新聞はきちんと出版している模様。

サイトキシンX

甘い匂いのするガスで、お香のように吸引する。人に吸わせると大半は死亡するが、適応できた一部は能力を持てるという一品。能力は個々人の願いに従う。

今久留主好介

帝政T国出身の少年探偵で名探偵として知られる。超が付くほどの変態であるが、助平由来の推理能力は本物。カイエ・デ・ドロゥボー社の新聞に旅行記を寄稿していたが、現地の女性情報に偏りすぎたため連載中止となった。

今久留主奇譚

連載中止に困った今久留主が持ってきた次の連載。都市情報とそれを解決する自分をモデルとした小説。都市伝説の情報は自前の考察とカイエ・デ・ドロゥボー社が解決した案件から。

ストーリーPickup

各国の元ネタ

A連合

元ネタは消去法からおそらくイギリス。Aと英をかけたと思われる。

E王朝を半植民地とする列強国で、分割自治を行うと決めた元凶。出身とするキャラクターはいない。イギリスは史実の清を最初に襲撃しており、分割当時を決めた国際連盟の常任理事だったことから。

D王国

元ネタはドイツ連邦共和国(通称Deutschland)

『魔訶魔訶紳士』なる表現主義の傑作が上映されるらしい。「奇妙な夢を見続けた男が怪人となって、美女をさらい、自分と同じ夢を見るように強要する」エピソードとのことで、時代背景の説明要因に過ぎない。

表現主義は20世紀初頭にドイツで生まれた芸術運動のことを指す。印象派と対極で内面(感情)を中心に描かれる。表現主義を元とした作品に「オペラ座の怪人(1925)」や「魔人ドラキュラ(1931)」などが挙げられる。美女をさらう、悪夢を見せるといった要素から『魔訶魔訶紳士』の元ネタはドラキュラだと予想できる。

E王朝

元ネタは中華民国。Eは東(East)と考えられる。

本作の舞台であり、ヴィッキーの出身地。1930年ごろに列強諸国の半植民地と化している点、功夫などの武術、幇や侠の存在、街並みなど考察要素が多数存在する。

神都シエンタウンは数十年前水郷であった、東洋の花の都と扱われているといった情報もあり、モデルは上海なのではないかと思われる。

共和F国

元ネタはフランス共和国。

ギャスパーなどの出身地。戦争をなくすために暗躍する盗賊一族ポワカール、刑事役のジャンヌ・オルレアン少尉など何かと登場頻度の高い。そのためか、よく被害者になる。モットーは「自由、平等、同胞愛」であり、フランスの標語と一致する。
ポワカールの元ネタはフランス映画の『勝手にしやがれ(À bout de souffle)』の主人公ミシェル・ポワカールであり、世間一般を非難した結果ゆえの稼業なのではないかと推測される。

K国

元ネタはおそらく大韓帝国(Korean)。

名前が一瞬出たのみで、詳細は不明。大使館が他国のスパイ情報をもってきた。

L皇国

元ネタはおそらくリトアニア共和国(Lietuvos)。

リーリャの出身地。世界的な大戦のあった10年前、革命で滅ぼされた。

候補はLから始まる西洋諸国であり、ロシア革命の余波が及んだ国である。また、肌が弱く外出できないリーリャを吸血鬼と例えており、吸血鬼となじみの深い国と考えられる。リトアニア語はヴァンパイアの語源の諸説の1つに挙げられ、この条件にも当てはまった。

リトアニア王国は大戦中わずかな期間にのみ実在し、作中の時期と一致している。

帝政T国

元ネタは大日本帝国。Tは東都(東方の都)だと考えられる。
今久留主、ちゆうの出身地。分割自治している国の1つ。E王朝の隣国であり元々つながりは深い。

U連合

元ネタはアメリカ合衆国(United States of America)。

バーボンと映画産業の母国。分割自治している国の1つ。GA2019ケネスのストーリーでは、賭博で得た金を選挙の軍資金にしようと企んでいた。

芽生えた能力

ケネスとギャスパーは正体不明の<怪人>に敗れた。奴には至近距離の拳銃も効かず、力も人並み外れていた。敗れた末に地に落ちた彼らを待ち受けていたのは、煙に包まれたベッドであった。

ケネスの力は「他人から能力を盗むこと」であった。相手と能力を賭けて勝負をし、勝つことで相手の能力をカードに封印できる。また、代償が高いほど、確率が低いほど能力の効果は上がっていく。ゲームはケネスが決めることができ、事前のイカサマがモノをいうあたり彼にふさわしい能力といえる。

ギャスパーの力は「自分の言ったものに見せかける」ものである。対象物を互いに認識し、宣言をすることで相手に見せかけることができる。自由に決められる範囲が広く、とっさの対応が求められるあたり彼にふさわしい能力といえる。

モノは使いよう

この世界の能力は、能力を持っても制約はなく自由に用いることができる。また、広く流通しておらず、騒動を起こしても大半は都市伝説として片づけられます。そのため、自分の思うがままに使うことができる。さらに、道具を活用することで使い勝手を高めることも可能である。

ギャスパーの伝手を用いて、能力が判明し次第ケネスとジャスパーは特注品のアイテムを入手した。

ケネスが得たのは「ハウアー1QZ8」。発射確率を操作できる拳銃で、確率を50%にすることで木を倒すくらいの威力となる。さらに確率を下げれば効果も累乗していくという、悪運の強い彼に向いた武器となっている。

ギャスパーが注文したのは「アルカニックピース」。大きさの異なる三角形を使うことで様々な形を作る、タングラム(七巧)とも呼ばれるパズルである。見せかける能力を用いることによって、数多のものを再現することができる。あくまで見せかけであり、いかに機転が回るかが試される武器となっている。

写真の店主は自分の能力を用いることで、特注のマネキンを仕入れることに成功しています。ここの宝石店のマネキンはそれぞれ髪色が違っており、似合った宝石を身に着けさせることで、顧客へおすすめの商品を示しております。精度も産毛が生えているほど高いと評判です。

今回の怪人

今回の怪人は「固くなる液体を作り出す」能力を持っている。液体は最低でも数日間維持することができ、硬さも至近距離の拳銃で傷が付かないレベルである。作中では主に人に対して使用していたが、物に使うこともできそうである。

シンプルゆえに汎用性は高いのだが、弱点は2つ挙げられる。

1つは水で溶けること。液体に対する強度は低く、雨でもはがれてしまう。そのため、能力を維持するには晴天時もしくは室内なことが求められる。

2つ目は……怪人の汗が成分になっていること。本人は汗っかきだと称しているが、10分の戦闘時間で流せる汗はせいぜい200~300gである。能動的に攻めるには足らず、防御・対格闘技性能にとどまってしまう。

とはいえ、一般人を誘拐するだけであればこれくらいの戦闘能力で十分なのだが。

発汗量の目安:https://pocarisweat.jp/hydration/sweat-amount/

まとめ:欲望から生まれたモノ

神都ピカレスクシリーズのテーマとして、仁義と欲望が考えられる。どういう信念があって、悪に堕ちてまで何を為したいのか。ピカレスクの名のように主人公たちは決して善人ではないが、方向性がはっきりしているためか不快感はわきにくかった。

本作はシリーズの中でも背景やキャラクター設定の説明が多く、読み進めていく障害は少なめである。”異能がある”ことを念頭におけば、どんな能力か推理することは比較的優しい方であった。ギャンブル好きのダメ男が見たい人、ボイス付きの異能バトルが見たい人に響くのではないだろうか。


次作の感想記事です。

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