【黒猫のウィズ 感想】八百夜町 必殺異聞録

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本記事は魔法使いと黒猫のウィズのエピソードの1つである「八百夜町 必殺異聞録」の感想記事である。本作は様々な理由によって道を外した者たちを主に描いている。悪人ゆえの仁義を掘り下げている一方、小難しい設定はなく勧善懲悪を楽しみやすい作品であった。

※スクリーンショットはいずれも株式会社コロプラに帰属するものであり、当記事はこれを侵害する意図で制作されたものではありません。

※イラストおよび写真はイメージです。

基本情報

あらすじ

バビーナファミリーのNo.2キルラはある日ヴィタに「休め」と命令され、異界で長期休暇を取らされてしまう。

強制的に連れていかれた先は和の国。様々なトラブルに巻き込まれながら迎えが来るまでの一ヶ月間、和の国で極貧生活を送るキルラ。

だが小料理屋「うわばみ」の看板娘アマネと出会ったことにより、奇妙な裏のびじねすに巻き込まれていく。


「魔法使いと黒猫のウィズ」君の本より引用

世界観

八百八町あやかし捕物帳

味噌をなめるあやかし”みそなめ”やドMマゾヒスト ”深い闇”といった困った存在、八百万の神様が暮らしている和の国が舞台。問題を起こしたあやかしを退治して金を稼ぐ、気分屋アヤツグを主人公に、明るく貧乏な暮らしを描いている。

対して、今回のメンバーは和の国の闇の部分に焦点を当てている。江戸時代くらいの文化を舞台に、法で裁けない存在を消し去る必殺仕事人たちの姿を描いている。時間軸はアヤツグが怪盗をやっていたころで、キルラはギャンブルのツケを返してもらうことができなかった。

主要登場人物

以下ネタバレ注意です。

キルラ・コルテロ

マフィア「バビーナファミリー」の切り込み頭。演歌をこよなく愛する。得物は刀と銃。ヴィタ(ボス)に付き従いすぎる気概があり、休暇のために一か月間和の国に送られた。

うっかり両替を忘れたヴィタのせいで金を持っておらず、傘張りで生計を立て、具なしのかけそばを食べる生活を送っていた。

アマネ・カラクサ

和の国出身の妖狐で、見た目以上の年齢(自称 じぇいけー)。最強の真狐ヤスナの眷属で本来の戦闘力は相当高い。仕事人びじねすまんとしてチームアマネを率いている。

殺しの得物は「神薬鬼毒薬」と呼ばれるお酒。「善人が飲めば薬に、悪人が飲めば毒になる」と語るが、正しくは「妖狐が飲めば増強剤に、人間が飲めば毒」である。

余談
・ヤスナで狐というと安倍保名のことだろうと推測される。彼は安倍晴明の父親とされ、狐の化身(葛の葉)と結ばれた。


・カラクサ(唐草)はつる草で埋め尽くすことを指しており、草の名前ではない。なお、葛はつる性の植物である。

ミスティハイド

忍者に憧れた忍者マニア。忍者になるために糸での攻撃、身体技術、医療技術などを習得した。異界に来た理由については(少々問題があるため)後述する。得物は糸。偽名のキリガクレは和訳しただけ。

医者業の傍ら忍者に接触を計ろうとしているが、八百八町の忍者に模範的な奴がおらず難航している。

ヒュウガ・ソウジロウ

黄昏メアレスの異界(かつて魔法文明が栄えながらも、今や魔力を失って久しい異界)の龍原を出身とする。本物のサムライなのだが、数年前に異界の歪みに飲み込まれ和の国へ流れ着いた。元の世界に帰るために八百八町浪士組を率いていた。

カイトという兄がおり、こちらは夜の森で弾丸を刀で弾ける実力者。

用語集

八百八町浪士組

町奉行が治安維持のために集めた腕利きの浪人たち。ヒュウガが率いている。町奉行の独裁のための部隊で、実態は猫をいたぶる方法で盛り上がるような殺ししかできない外道たち。サキからの「びじねす」によって一夜で滅ぼされる。

チームアマネ

マサが設立しアマネが率いるびじねすまんの4人組。割り勘のサキ(左:得物は割り切るためのハサミ)、瓢箪のアマネ(中:得物は酒)、蟒蛇うわばみのマサ(右:大量の酒を漏斗で注ぎ窒息させる)、大寅のキョウ(名前のみ登場)で運営されている。殺しの価格は1人あたり金貨1枚であり、依頼主や相手によって変化することはない。

小料理屋「うわばみ」

そばや寿司、酒といった大体の飲食を提供してくれる料理屋。よく臨時休業(裏のびじねす)するのが欠点。

テオドリクタクシー(通称)

異界を渡る船を所有するテオドリクが行っているサービス。異界交流が可能な装置の1つで、キルラたちを運搬している。あくまで趣味なため金銭は要求していない。人だけでなく物も運んでくれる。

ストーリーPickup

じぇいけー

アマネには気になって仕方ない存在があった。「一度でいいから魔学舎のじぇいけーと……」と遺言を残した人間の言葉であった。死ぬ間際まで心残りになるじぇいけーになろうと、小料理店のマサを身元引受人にして上京することに。

補足1:マサはアマネらが育てた子供であり、圧倒的に年下。

じぇいけーはアマネにとって大変満足する環境だった。何もしなくても楽しく、宴会部の部長として飲み会を積極的に開いていた。

幸せな生活を満喫していた彼女であったが、遊郭ゆうかくに売られた部員によって人生は変わっていく。

このエピソード、実は最終SS時代(2014春)の時代のものを掘り下げたものである。このころからイラストに人気があり、幾つかの配布を得て今回主役となった。
当時は秘儀「水増し乾杯」を駆使して酔わないようにしていたが、設定が付与された結果、そんな小細工をしなくても酔わないくらいに強化されている。

チームアマネと闇

ライバルを蹴落とした廻船問屋を裁いたのが、アマネにとって最初のびじねすであった。神薬鬼毒薬の文言「善人が飲めば薬に、悪人が飲めば毒になる」は、(宴会部部長としての私情ではなく)己の罪を悔いてほしいと願うアマネのとっさの言葉だった。この後、八百八町の闇を払うために彼女はマサの裏家業を補佐することを決意した。

八百八町は数多くの闇に覆われている。表ではSMプレイや床との恋と笑えるものもあるが、裏では人身売買や復讐による殺害、不祥事のオンパレードである。

2014年時点のエピソードでは、神薬鬼毒薬の効能は明かされていなかった。その後、必殺大魔道杯(2019年7月)のエピソードで人間にとって致死量一口の毒であることが明かされた。よくよく考えると毒殺に善悪判定を要するのは都合が悪く、実力を隠しておきたいアマネにとっては毒として飲ませる方が有用ではある。飲ませるやつが軒並み善人だと思っている悪人(標的)なので、わりとすんなり飲むらしい。

疑問点:異界交流の条約の是非

※写真の2人はキルラのボス(左)と元元帥の運転手(右)。どちらも局所的な出演で、声はついていない。

本作の疑問点は、「異界交流のハードルが軽くなっていないか」ということに尽きる。もともと、異界を行き来する条件として「その異界にとって危機的状況に陥っていること」が挙げられていた。

テオドリクタクシー(仮)の使用歴を考えても、「黒猫の魔法使いが土塊となって異界すべてが滅びかけたため、救出メンバー集め」(メインストーリー)、「世界の危機を救った記念のパーティー開催および、異界交流の基盤づくりの式典」(メインストーリー)、「名前を呼んではいけない奴を封印するための魔道具貸借」(響鳴XBANKER)に限られていた。

しかし、今回の目的は「長期休暇という名目の拉致依頼」(キルラ)、「実際に忍者を見て修行をするため」(ミスティハイド)と上と比べてもかなり小さいものである。

前者は「異界屈指のマフィアの切り込み隊長の体調を損ねることによる、ファミリーと秩序の崩壊」(実際、ボスのうっかりで全滅しかけたこともある)と擁護することができる。また、異界のものを流出させているわけでもなく、生計は異界内で完結していた。

問題は後者、特に(人を生かすためとはいえ)禁止された異界の技術を密輸し、異界の住民に対し使用する行為を行ってしまっていることである。テオドリクらが最初に設けた規約も違反しており、犯行がばれることなく元の世界に帰っている。

ちょっと怪しい黒猫のウィズ用語集」様の本作の記事でも異界移動について記載されている。しかし、問題だと思っている箇所が異なっているため、あえて書いている。

参考:メインストーリー完結後の異界移動のまとめ

「響鳴XBANKER」:テオドリクタクシー

SatanicChord」:異界の歪みでできてしまった魔法陣(黒猫の魔法使いが使用していたもの)

怪盗アヤツグ僵尸捕物帳」:異界の歪み+都市伝説のロッカー(黒猫の魔法使いが使用していたもの)+ エリエリ・サバル(異界を渡れる能力者)

「八百夜町 必殺異聞録」:テオドリクタクシー+異界の歪み(一方通行:ソウジロウが利用)

星と氷の銀河鉄道
~エステレラ発、ポポラの里経由、クエス=アリアスゆき~」:銀河鉄道(異界を渡れる装置の1つ)

その誓いは七界に輝く」:異界の歪み(元々関係が濃いため容易)

まとめ:道を外す

剣士と剣士、異界のもの同士の決着をもって騒動は終結した。勝負を分けたのは、何を守るかという姿勢の差であった。最終的にキルラ(左)ソウジロウ(右)の両方とも元の異界に帰れており、勧善懲悪モノとしてのハッピーエンドといえた。

本作は様々な理由によって道を外した者たちを主に描いている。悪人ゆえの仁義がはっきりしているのが強みであり、小難しい設定はないので読みやすい作品だとは感じている。

ただ、クロスオーバーの沼にはまらないかというのは心配である。徐々に異界へ行く理由が軽くなっており、108の異界と興味深い(もしくはかわいい)キャラクターの個性が失われないか恐れている。

それを加味したうえでも、裏の世界観や非主要キャラクターの掘り下げはきちんとされており、良いストーリーだったのではないかと思っている。

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