【黒猫のウィズ 感想】神都ピカレスク 銀幕の裏切者

自分の名前とは何だろうか。与えられた名もなく、意思を果たすために名を変え生きてきた。名を捨て、立場を変え、絡み合った末に、彼らは気に入った名前を自分の名前と定義する。

本記事は『魔法使いと黒猫のウィズ』で開催されたイベント、『神都ピカレスク 銀幕の裏切者ダブルクロス』の感想記事である。立場を変えるきっかけを機に、彼らがどのように選択するか。個人的にはシリーズの中で最も考えさせられたイベントであった。

自分がどんな風に進みたいか悩んでいる人、あるいはマスメディアの悪行と打倒が見たい方、それとも単純に悪党による勧善懲悪が見たい方にお勧めしたいストーリーである。

※スクリーンショットはいずれも株式会社コロプラに帰属するものであり、当記事はこれを侵害する意図で制作されたものではありません。

前作、前々作の感想です。

本シリーズのケネスらは、大規模なテロを未然に防ぎ英雄となる。ただ、彼らは決して善人ではない。平然と盗みを行い、ときには周囲を利用し被害を顧み...
神都ピカレスクシリーズのテーマとして、仁義と欲望が考えられる。どういう信念があって、悪に堕ちてまで何を為したいのか。ピカレスクの名のように主...

基本情報

あらすじ

ケネス達と怪盗団を結成した「君」。だが嘘に塗れた報道が怪盗団を追い詰める。

嫌疑を晴らすため誘拐事件を追う怪盗団。しかし敵の仕掛けた卑劣な罠が、彼らの絆を引き裂いていく。

銀幕の裏切者。それはいったい誰なのか? そして放たれる銃弾の行方は――


「魔法使いと黒猫のウィズ」君の本より引用

世界観

列強国の半植民地であった、1920年代の中国(E王朝)が舞台。自らの願いを叶えるため、他人から盗むことをいとわない人々を中心に描かれる。

また、裏でサイトキシンXというお香が流通している。都市伝説として、サイトキシンXによる能力者<怪人>が起こす事件が流れており、1節ごとに原因を解決していく。

各国の元ネタは、1作目の記事を参考にしていただきたい。

主要登場人物

ケネス・ハウアー

表の顔は新聞社カイエ・デ・ドロゥボーの記者。生きていくために怪盗をしていたため、愛情や同情に否定的な姿勢。

特技はイカサマをすること。

最近、「ケネス」という名が気に入ったらしい。

ギャスパー・アルニック

表の顔は新聞社カイエ・デ・ドロゥボーの所長。幼いころに誘拐されポワカール一族で訓練を積んでいた。

「ギャスパー」という偽りの仮面を常に被っており、真の目的は……

ヴィッキー・ワン

普段はE王朝の映画会社<華様影業公司>で女優をしている功夫使い。西洋諸国に奪われた祖国(E王朝)のお宝を取り返すため、義賊をしている。

<怪人>ではないが、肉弾戦では怪盗団最強。魔法使いのサポートによって、彼女はさらに加速する。

今久留主好介

神都シエンタウンの治安をまとめる部署、工部局所属の探偵。
超が付くほどの変態だが、探偵としては優秀。カイエ・デ・ドロゥボー社がマスメディアに追われる中でも中立を貫いた。

リーリャ・ヤロスキ

ヤロスキ家のご令嬢。L皇国出身。日光に弱く日中外に出られないため、吸血鬼とも噂されていた。

月光を浴びることで身体能力が上がる<怪人>で、直接浴びるために露出が高い衣装を着る。

根津ちゆう

帝政T国出身のコソ泥。先祖代々続く盗人「根津家」の末裔。普段はカイエ・デ・ドロゥボー社で暮らしているが、空き巣専門なため日中でもたまに抜け出す。

音量を操作する<怪人>で、怪盗団では逃げ道作成など裏方を担当する。

ジャンヌ・デュ・リス

共和F国(フランス)出身。オルレアン中隊の警察。銭形平次ポジション

能力者ではないが、握力200(kgであればギネス記録もの)、IQ200(世界屈指の数値)と人外級の数値を叩き出す。人を見る目がなく、無条件に信用してしまう。

IQとは

知能指数(Intelligence Quotient)のこと。知能が高いほど、数値が大きくなる。平均(中央値)は100、標準偏差σは15前後と規定される正規分布。正規分布の原理上70~130に約95%が集まる。

知的障害の基準の1つがIQ70以下。
MENSAの基準が人工の上位2%でIQ138(2.58σ)くらい。
IQ200は1/数百億人(6.67σ)というとんでもない数値。

用語集

カイエ・デ・ドロゥボー社

零細の新聞社で、正体は怪盗団のフロント企業。最低限の運営でありながら、一定の評判と信頼は得ている。黒猫の魔法使いも占い記事の寄稿をしたが、散々な評価であった。

サイトキシンX

甘い匂いのするガスで、お香のように吸引する。人に吸わせると大半は死亡するが、適応できた一部は能力を持てるという一品。能力は個々人の願いに従う。

ブラックトカゲ会

サイトキシンXを用いて能力者を量産している謎の組織。一番の目標は「2000年前のE王朝が残した秘宝『古Q神器』」の回収だとされる。子供の誘拐、戦争の誘発などを暗躍する巨悪組織。今回ついに幹部が登場した。

魔法使いと黒猫のウィズ

怪盗団6人目のメンバー。黒猫を連れた全身黒ずくめの手品師マジシャン。カードを使った手品が得意とジャンヌは称したが、真実は異界の魔法使い。いつもの語り部。

ポワカール一族

共和F国に存在する盗賊組織。世界各国から児童を誘拐し、英才教育を施すことで一人前の盗賊を生み出す。その教育は、声変わりを迎えるころに15国語を話せるレベルになることを要求する。

呪われたダイヤモンド

未知の希少鉱石でサイトキシンXの原料の半分。所有者が次々と非業の死を迎える曰くつきの品。L皇国が滅んだ一因である。

ミヒャエル・モア

共和F国のパイロットで元英雄。大陸間無着陸飛行を成し遂げたとされる。児童誘拐事件の加害者だと冤罪をかけられ、母国を追われた。現在は神都で暮らしている。

ヘレナ・アイゼンバーグ

メディアの女帝と呼ばれ、神都の新聞社とラジオ放送局のほとんどを傘下に治める女傑。例外は言わずもがなカイエ・デ・ドロゥボー社。

今度は映画事業に手を出そうとしており、大東洋大戯院だいとうようだいぎいんという劇場型映画館を建設している。

ストーリーPickup

毎度のことですが、能力や展開といったネタバレが多分に含まれています

誰も彼も嘘つき


ピカレスクシリーズのキャラクターは、後ろめたい隠し事をを持っていることが多い。ケネスは過去を語らず、ギャスパーは過去のことを誰にも話していなかった。リーリャもL皇国の皇女であったことを隠して、パーティーに参加していた。

ミヒャエルもまた、隠し事があった。かつて、彼は不倫から娘を誘拐された際の冤罪を擁護できず、F国から追放された。その過去を無くすべく、神都でメディアに強い人物と交渉を行っている状況であった。スクショは、マナーのなっていない(座ったときに足を組む)偽物のL皇国皇女を崇める民衆への非難である。

地上で英雄ともてはやされた自分への自嘲か、空で飛んでいる自分を懐古しているのか、この時点では判明していなかった。

私は飛べる

前半の騒動は、共和F国をはじめとする各国の富裕層への、児童誘拐であった。最低でも13人が被害に遭っており、怪盗団はポワカール一族が関与していないことを示すために、捜査に乗り出した。

<怪人>の能力は「特注のコインを介してワープする」ことである。特注のコインは幸せを呼ぶものとして流行させ、山ほどの枚数を用意した。コインを範囲内にばらまくことよって、児童の誘拐と密室からの逃亡を成し遂げた。

また、「星の王子さま(共和F国)」「こっくりさん(帝政T国)」といった占いをするように仕掛ける。遠隔操作を行うことで、ターゲットとなる児童の選定を行っていた。

<怪人>が忘れていたのは、想定外への対処である。まさか、能力を得た自分が変装に騙されるわけがない。まさか、コインをすべて買うことをできるわけがない。

1枚アジトに隠し持っておくだけで、万が一の逃亡が可能になった。空を飛び、彼方に羽ばたくことができた。ただ、悪に手を染め堕ちた彼には、飛んだと錯覚して墜ちた方が幸せだっただろう。

こっくりさん
「テーブル・ターニング」に起源をもつ占いの一種。日本には1850年代にやってきた。潜在意識による「予期意向」と無意識による筋肉の動き「不覚筋動」の結びつきによって、コインが動くという原理とされる。ヴィジャボードとほぼ同じ原理。


明治時代にこっくりさんの謎を科学で解明!東洋大学創立者・井上円了氏の妖怪研究
(2021年11月19日アクセス)

絶対悪の怪盗団

児童誘拐事件を解決した怪盗団を待っていたのは、風評被害であった。彼らが行っていたのは、宝石店からの曰く付きの品を強盗したことなど。肯定できることではないが、世界に影響を与えるほどでもないコソ泥である。それを、「世界の敵」ととらえることは難しいのではないだろうか。

しかし、こんな難題をやってのける組織がマスメディアである。すべてのメディアが同じ方向から視点を発すれば、意図的に流行を起こすことができる。また、誇張表現や隠ぺいを駆使したプロパガンダもやろうと思えば可能である。

まことに残念ながら、神都のメディアは1人の手のひらの上である。彼女は大衆から信頼されており、1%の意図が挟まってもほとんど誰も気にしていない。どこでも同じ話題しかしていない、仮想敵の話だけ盛り上がるという異様な雰囲気に包まれていた。

19ディズヌフ


19ディズヌフはポワカール一族が誘拐した彼につけた名前である。フランス語の19をあらわすdix-neufであり、最初から道具として扱うつもりであった。

「ギャスパー・アルニック」は、彼にとって7つ目の名前である。共和F国の上流階級で、世界の先端を知るために神都で新聞社を経営する。一人称は私で好きなものは……設定に彼本来のものはどこにもない。

ゆえに、「自分とは何か」を問われると簡単に崩れてしまう。そして、情報から予想した<怪人>は名前を壊して人形とするため、上映会を開催する。

だが、彼には親友トレーズ(treize:13)と交わした約束が残っていた。

±0トータル

ケネスの仁義はプラスマイナスゼロである。積み上げすぎると落ちたときに死ぬ。ときどき捨てておけば、落ちても大して痛くない。だから、彼は守るものがないように生きてきた。

「ケネス・ハウアー」という名前は、ギャスパーとの初仕事の際、与えられた名前である。持ちすぎた。名前を捨てる機会を得て、案外気に入っていることに気づいた。いつものようにコインで決めようとして……彼を止めたのは1枚の新聞であった。

思い込み

本章の<怪人>の能力は「思い込みを極限まで強める」ものである。手段として、彼女はサブリミナル音声に目を付けた。音声の節々に疑心暗鬼を高めるようなものを入れた結果、「悪夢の砂嵐」という都市伝説を生んだ。

目的は上層部に「隣が憎く感じるようにする」暗示をかけ、戦争を引き起こすこと。たいそうな自身があるらしく、上のような素晴らしい悪役を演じている。実際、一方的なカイエ・デ・ドロゥボー社の襲撃、ギャスパーの買収、公演の開催に成功している。

ただ一点問題があるとすれば、規定観念にとらわれていたことである。神都で一番情報に強いと自負していただけに、皮肉めいた敗北であった。

サブリミナル音声人間の深層にメッセージを届ける手法の1つ(と言われている)。
単純接触効果と違って、認識できないほど非常に短い時間で作用する。
単純接触効果、プラセボ効果と区別することが難しく、存在するか怪しいとされる。

逆にいえば、理論が確立していないということで、証拠を残さず彼女が利用するには都合の良いものだった。

まとめ:黒と白の怪盗

自分の名前とは何だろうか。与えられた名もなく、意思を果たすために名を変え生きてきた。名を捨て、立場を変え、絡み合った末に、彼らは気に入った名前を自分の名前と定義する。

本記事は『魔法使いと黒猫のウィズ』で開催されたイベント、『神都ピカレスク 銀幕の裏切者ダブルクロス』の感想記事である。立場を変えるきっかけを機に、彼らがどのように選択するか。個人的にはシリーズの中で最も考えさせられたイベントであった。

自分がどんな風に進みたいか悩んでいる人、あるいはマスメディアの悪行と打倒が見たい方、それとも単純に悪党による勧善懲悪が見たい方にお勧めしたいストーリーである。

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