森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」不思議の中で君を追う

知らないことからくる『不思議』という感情は色々な所にあります。それは一時の感情で、いつの間にか忘れていることも多いのですが。

この記事では森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」の紹介記事になります。先輩が超常現象に好かれた後輩を追う一年を描いた恋愛作品です。偶然のご都合主義で対面する2人と、一歩を踏み出せない彼の思いが印象的な作品でした。

あらすじ

先輩は、新入生の黒髪の後輩に恋していた。告白という大きな一歩を踏み出せない彼は、外堀を念入りに埋めるべく偶然の出会いを装って何度も顔を合わせる。

春の夜、夏の夕方、秋の黄昏……超常現象によってご都合主義の出会い方をするたび、彼女は先輩のことを覚えていく。

読みどころ3選

  1. 主人公の彼女に対する思いと空回り
  2. 非現実な変人たちが荒らす物語
  3. 数々の伏線の回収とご都合主義

主要人物

先輩:本作の視点人物の1人。新入生の黒髪女性に恋をしており、偶然の遭遇を装って度々出会う行為をとる。

後輩:本作の視点人物の1人。興味のままに行動をする大学1年生→2年生。神に愛されており、風邪の神が京都を覆ったときも無事であった。

樋口:自称天狗の大学生。宙に浮くことができる、過去の知識に詳しいと素性の知れない男。

古本市の神様:夏の古本市にて先輩たちが出会った知識豊富な少年。不当な手段で回った本を回収し、別の売り場へと移していた。

ストーリーPickup

以下、できる限り初見でも分かるように配慮はしますが、ネタバレ注意です。

外堀を埋め続ける青年

作品中先輩は外堀を埋め続けています。親友に埋めすぎだと言われ、心の内も臆病で”恋愛”という流行に乗りたいだけだと罵っています。それでも執拗に偶然の出会いを演出していました

傍目から見ればストーカーにしか見えない行動ですが、サークルのメンバーに聞いて情報を得ていることを考えると努力の方向性を間違えていることに。ただ、これが当時(2005~2006)の頃から失敗を恐れ続けた我々への風刺だとしたら、彼を見る目も変わるのではないでしょうか。

非現実に好かれた彼女

後輩は、1章で大量の酒をタダで飲むことができ、2章で古本市の神様に会いかつての本を取り戻しました。3章では流れに乗って演劇のヒロインに抜擢され、4章では京の街を救う英雄になりました。本作の主人公を一般人だとすると、彼女は主人公体質なのでしょう。

作中の一年間、彼女は怒ることなく、興味のままに過ごしていました。その奔放な性質と神を無垢に信仰していたことが、先輩(+数多の名無し)や非現実に好かれたのかもしれません。

偏屈王とダルマ

3章では大学の学園祭を舞台にして、脚本を学園祭中に記し続ける偏屈王と実行委員の追いかけっこが繰り広げられます。劇団が後輩を代役としてヒロインに据えたため、自動的に先輩も巻き込まれることになりました。

なぜ偏屈王が学園祭でおこったことを脚本にし、実行委員の許可を取らず道端で演劇をするのでしょうか。裏の事情、結末は読んでいけば自ずと想像つくものでしたが、至るまでの経路の伏線が散りばめられていました。

神によるご都合主義

全ての章の終わりはご都合主義と呼べるものでした。非日常の域の人物が出てきていること、非日常が視点人物でないことの2点を満たしている時点でご都合主義を避けることが難しいのは事実です。しかし人によっては都合のいい結末に納得がいかないかもしれません。

ただ本作のご都合主義は突発的なものではありません。作中に『○○ができる』と彼らが述べた通りに事件を起こしたことでなってしまった結末であり、あくまでも先輩にとってのご都合主義といえます。このことは作中でも触れられており、彼自身が成果をご都合主義だと感じていました。

読者諸賢、なにゆえあなたがそんな大役を? という湧いてしかるべき疑問を粉砕するには、「たまたま通りかかったものだから」という一言で十分であろう。ハッピーエンドを我が手に――たとえ御都合主義的でも!


212ページより引用。

まとめ:夜は短し歩けよ

1章、4章にて李白(嗜虐的な性格の借金取り)が去りゆく後輩に送った言葉、「夜は短し歩けよ乙女」からタイトルが付けられていました。

本作中を通して最も成長したのは先輩でしょう。全てが終わった後、遂に彼は彼女を誘うことに成功したのですから。ひたすら外堀を埋め続ける作業から本丸に入り、彼女の非日常に再び悩み行動する日々になることでしょう。

先輩の進歩、変人たちの行動、伏線の貼ってあるご都合主義が詰まった小説です。純愛ものを望むと的外れになるかと思いますが、恋愛コメディーが読みたいのならば触れてみることをおすすめします。

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